■撮影共通データ:ソニー α7C R 絞り優先AE WB:オート
ソニー FE 85mmF1.4 GM Ⅱ 主な仕様
●焦点距離:85mm
●最短撮影距離:0.85m(AF)/ 0.80m(MF)
●最大撮影倍率:0.11倍(AF)/ 0.12倍(MF)
●レンズ構成:11群14枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:72mm
●大きさ・重さ:φ84.7×107.3mm・約642g
●付属品:フード・ケース
例によって、シッカリ軽く、かつ細くなっています。
前述したアピールを「最適化」と一言で軽く語られてしまうことが多いが、泥臭く地道にひとつづつ課題をクリアしていった結果の産物だろう。開発陣のこうしたチャレンジには頭の下がる思いだ。
手にしてみるとシッカリ軽く、細くなったことで持ちやすくなった。またカメラバッグへの収納性、特に取り出し易さがかなり改善されている。従来型をドンケのバッグに入れるとインナーに引っ掛かって悲しい思いをするが、新型なら全く問題ない。
フォーカスホールドボタンも2つに増え、姿勢差による操作性の変化を意識しなくても良くなった。
期待のAFの進化は体感で3倍くらい速く静粛になっていた。気になったので手計測ではあるが、無限遠から1mの位置までの合焦時間を測定したところ新型が平均約0.3秒程度、従来型が約0.8秒程度と最低でも2倍以上の改善となっていたので実写が楽しみである。
新旧比較。VS FE 85mm F1.4 GM
いつもの場所で新旧比較を行ってみた。開放絞りで新型が明らかにキレ良く写るようになったほか、前ボケは明らかにキレイになっている。従来型は開放絞りで僅かに滲みがあった。個人的には好意的に感じていた特性なので失われていくことに寂しさを感じるけれど、これも時代だろう。1段絞れば新旧での解像感の差は無く、判別は出来なくなった。さらに2段絞ると、並べても誤差以上の差を見つけられなかった。
前ボケに関しては、従来型は繰り返しパターンなどを遠慮なく被写体より前に置いてしまうと少し目立つ感じに写ることがあった。構図を整理すれば別に問題は無かったのだが、新型ではより自由に撮れるようになっている。
至近端でもチェックしてみたところ、全体的に新型の描写はスッキリしている。特に周辺部での差はソコソコあるぞ、という印象だ。被写体を真ん中に高頻度で配置する場合は、やはりF2.0より絞ると差はほぼないけれど、周辺部ではさらに1段弱程度の違いが、あると言えばあるように見えた。
比較撮影している際はAFの差がとても顕著に感じられた。従来型は近距離や周辺部でAFさせる場合とF4よりも絞り込んだ際にAFが迷うことがあったが、新型ではそのような振る舞いは無かった。そもそものAF速度が倍以上違うということもあるけれど、新型はとてもスムースに合焦するので、実際の速度差以上に体感性能が違った。
大袈裟に言えば、新型を経験した後では従来型の動作感は「おっそ。ウルセ」だ(従来型だけを使うのならそこまで遅くも煩くもないですけどね)。
「迷いのないAF」はまさにソニーならでは!
比較テストで周辺まで高い光学性能を持っていることが確認できたので、イジワルな撮り方をふんだんに織り交ぜてみたが、屁の突っ張りにもならなかった。
個人的な好みで言えば「ここまで写らなくても…」と思ってしまうレベルの光学性能だったけれど、撮った写真を眺めているだけでも気持ちの良い描写だ。
AFはコレでもか! ってくらいに迷いにくくなっていて、レスポンスも申し分無い。迷い難いことについては、AFアクチュエータの差だけでは説明がつかないので、通信のクオリティ(補正データやAFデータなど)にもテコ入れがなされているのだろう。
レスポンスはXDリニアモーターがとても効いている。一方通行だけ速いレンズというのもあるけれど、フィールドではフォーカスが行ったり来たりするので、巡航速度や最高速度だけでなく加減速のレスポンスも重要だ。このレンズのAFはキモチイイ。やはりAFはVCM含むリニアモーターの時代だ。
今回はポートレートでは試しておらず、スナップシーンでの体感からの予想となるが、動きのあるポートレートシーンでは買い替えを検討するに足る快適性の差というか、撮れる撮れないといった性能差がありそうに感じられた。
「光学性能」よりも「使い勝手」に振って大正解!?
画質もシッカリ良くなっているけれど、それ以上に使い勝手の改善が著しく、感心した。
個人的な経験で言えば、光学性能の差が最終的な出力時のクオリティを左右することはそれほどない。それよりも、軽さやAF性能といった使い勝手に関わる部分の改善が与える影響の方が大きいと思っている。
時間やカロリーを注げるシーンでは有意差とはならないけれども、出番が多くなればなるほどボディブローの様に結果に響いてくるのが「使い勝手」だ。さらに疲労などで撮影者のコンディションが悪くなれば顕著。AFがポンコツだと心が砕けるし、レンズが200g重いだけでも、長時間撮影していると心を折る場合がある。
動画用途では、従来型はAFの駆動音が結構するので同録は無理だと思うが、新型なら対応出来そうだ。
ソニーストアでの価格差は新型が(税込)約30万円に対して従来型は約27万円弱。実勢価格ではもう少し差が開きそうだけれども、例えば5年使うと考えるなら差額を払うだけの価値はあるように思う。
進化の方向性が光学番長の一本槍であれば「買い替える価値ナシ」と両断した可能性大だが、誰でもレンズの限界性能を楽しめるようなモデルチェンジなのでグウの音も出なかった。