■文・写真/杉山 慧
弊社刊ムック「鉄道写真の奥義」好評発売中!
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山陰本線(折居〜三保三隅)
石見地方の透き通った海は息をのむ美しさがある。長い歴史を持つ山陰本線では、地形に逆らわず海岸に沿って線路が敷かれているため、レイル・ファンが切り拓いた「名勝」が点在している。作例の場所は最も名高い撮影地「道の駅ゆうひパーク三隅」から見える海岸に降りて撮影したものである。
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■ 70mm 絞りF8 1/1600 秒 ISO1600 ※ 2019 年6 月5 日14時53分撮影
作例は太陽が海岸に回り込み、順光になる夏の午後にキハ187 系の特急「スーパーまつかぜ」を撮影した。クルーズトレイン「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」(運転日注意)の山陰下りコースは早朝の通過となるため、橙色に染まった海を手前に配して撮影ができる。
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国道9 号を走り、「道の駅ゆうひパーク三隅」を目指す。道の駅から下る道へ入る。民家脇の線路をくぐる水路を抜ければ撮影地だ。満潮の際は水路の水位があがり踝まで浸かる。道の駅から下る道は水路の前を過ぎた左カーブの内側が広くなっているので、そこに駐車しよう。
山陰本線(鎌手〜石見津田)
中国地方の集落を象徴する赤い石州瓦が美しい、大浜漁港を回り込む山陰本線。普通列車はキハ121・126 系かキハ120形で運転されている。
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■ 92mm 絞りF8 1/800 秒 ISO800 ※ 2019 年6 月5 日16 時48 分撮影
作例は快速「アクアライナー」のキハ121・126 系である。10 分ほど遅れて運転されていたが、この場所は列車の接近が目視でしかわからないため、神経を使う。撮影地は大浜漁港の上を通る国道9 号の脇にある階段の途中にある。国道沿いにある釣り具店の向かいあたりが広くなっているので、車はそこへ止めよう。
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そこから200m ほど鎌手方面に歩くと、山側の集落の入口から上り坂が始まる。この坂は途中から階段になる。この階段の途中が撮影地である。石見交通のバスが頻繁に運転されており、「大谷口」バス停から歩いても良いだろう。
土讃線(阿波川口〜小歩危)
瀬戸内海と太平洋を結ぶ土讃線。険しい四国山地を象徴する景観が大歩危峡・小歩危峡ではないだろうか。ここの主役は特急気動車2000系「南風」・「しまんと」である。2000系は四国の高速道路網が完成する前に、鉄道網の命運を懸けてJR四国が導入した世界初の振り子式気動車である。
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■90㎜ 絞りF8 1/800秒 ISO400 2019年5月2日14時12分撮影
撮影地の小歩危峡は高い山に囲まれているため、太陽の高い季節が狙い目だろう。峡谷に響く走行音で列車の接近は容易にわかるが、白川谷川にかかる鉄橋に飛び出してからは、あっという間なので集中して撮影しよう。
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撮影場所は重実集落へ向かう路上である。土讃線の鉄橋を白川谷川とともにくぐる県道271 号に入ると、建設会社の前を過ぎ、700m ほどで重実集落へ登る道が鋭角で分岐する。集落が始まる手前、土讃線が見える場所が撮影地だ。車はもう少し県道寄りに下がった道の広い場所に止めよう。
土讃線(土佐穴内〜大杉)
吉野川が作り出した渓谷を走る土讃線を俯瞰する。特急「南風」の下り方先頭車であるパノラマグリーン車を先頭に走る姿を記録できる場所である。
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■ 228mm 絞りF8 1/1000 秒 ISO400 ※ 2019 年5月2日16 時撮影
作例は夕方の南風である。レンズを左に降ると吉野川を取り入れることができるが、国道が目立ってしまうため、今回は右に振って、新緑を大きく入れて写した。線路脇の樹木が伸びて一時期は線路がほとんど見えなくなっていたが、近年伐採されて再び撮りやすくなった。
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撮影地までのアクセスはいたって簡単である。土佐穴内駅前の道を線路に沿って大杉方面へ1.8km 進んだ先のT 字路が撮影地だ。道幅は狭いので、運転にはくれぐれも注意して欲しい。脚立があると立ち位置のすぐそばにある樹木をかわしやすくなり、構図の自由度が増す。
撮影・解説:杉山慧
1992年11月、静岡県出身。幼少期より鉄道に興味を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ネコ・パブリッシングに入社し月刊誌[レイル・マガジン]の編集に携わる。2017年3月、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。2018年12月レイルマンフォトオフィスを退社し、フリーの鉄道写真家として独立。独立後は月刊誌[鉄道ジャーナル]での写真撮影や原稿執筆のほか、レンズメーカー「タムロン」主催するに「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」で審査員を務めた。
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