髙橋健太郎写真展「A Red Hat / 赤い帽子」が、本日より銀座ニコンサロンにて開催中です。本展は髙橋さんが2017年から継続的に北海道に通い、撮影を続けたプロジェクトの写真展です。その原点には、北海道音更町在住の松本五郎さん(現在98歳)、そして北海道旭川市在住の菱谷良一さん(現在97歳)との出会いがありました。

A Red Hat / 赤い帽子

2017年6月から北海道音更町在住の松本五郎さん(現在98歳)、そして北海道旭川市在住の菱谷良一さん(現在97歳)のところへと通い、彼らの日々の生活にレンズを向けている。その日常はとても穏やかで、本を読んだり映画を観たり、絵を描いては友人たちと談笑したりひ孫さんたちと遊んだり。彼らの生活に身を委ねて一緒に時間を過ごすと、普段東京の直線的な速度に沿って生きているこちらの心は、2度と東京に戻りたくないと考えてしまう。結局戻るのだが。

そんな彼らは2人とも学生時代に同じ学校で美術部に所属しながら教師を目指していた。それがある日突然、刑務所に入れられる。

1941年9月20日早朝、旭川師範学校美術部の学生であった松本五郎(当時20歳)と菱谷良一(当時19歳)は学生寮で起床寸前のところを特別高等警察に治安維持法違反容疑で逮捕される。当時の美術部では熊田満佐吾先生(東京美術学校卒、現東京藝大)の指導のもと、より良い生き方を模索するため教科書通りに絵を描くのでなく、生活や社会の実態をよく観察しそれを絵にする美術教育が行われていた。

しかしそれらの絵は突然、反国家的であり共産主義的だとして犯罪の証拠とされる。2人は何か思想を持って描いていたわけではない。結局1942年12月28日まで旭川刑務所に入れられる。そしてこれが「生活図画事件」と呼ばれている。

出所後の1943年2月11日、菱谷良一さんは妹さんの赤い帽子を被り、自画像を描いた。
(開催内容より)

画像: 写真家の髙橋健太郎さん。 私は1941年に起きた「生活図画事件」をはじめて知りました。 本展を通じ、過去に起きていることは過去で終わりではなく、今現在でも同様のことが起こり得て、また起こり、未来にも繋がるということ、そして1人1人の身に突然何が起こるかは等しくわからないからこそ、今という日々をどのように過ごすのか、その自分の選択や心の姿勢が本当に問われていることを、今まで知らずにいたことを「知る」ことの大切さをあらためて感じました。

写真家の髙橋健太郎さん。
私は1941年に起きた「生活図画事件」をはじめて知りました。
本展を通じ、過去に起きていることは過去で終わりではなく、今現在でも同様のことが起こり得て、また起こり、未来にも繋がるということ、そして1人1人の身に突然何が起こるかは等しくわからないからこそ、今という日々をどのように過ごすのか、その自分の選択や心の姿勢が本当に問われていることを、今まで知らずにいたことを「知る」ことの大切さをあらためて感じました。

画像: 展示風景。 2017年より髙橋さんが北海道旭川在住の松本五郎さんと菱谷良一さんのところへ通い、お二人の 日々の生活にレンズを向け撮影を続けた写真と共に、過去の資料的なものも写真的に展示されています。

展示風景。
2017年より髙橋さんが北海道旭川在住の松本五郎さんと菱谷良一さんのところへ通い、お二人の
日々の生活にレンズを向け撮影を続けた写真と共に、過去の資料的なものも写真的に展示されています。

画像: 展示作品。 菱谷良一さん、97歳、2018年11月14日、北海道教育大学旭川分校(旧旭川師範学校)

展示作品。
菱谷良一さん、97歳、2018年11月14日、北海道教育大学旭川分校(旧旭川師範学校)

髙橋健太郎写真展「A Red Hat / 赤い帽子」展覧会情報

【東京】
会期:2019年9月18日(水)~2019年10月1日(火)
会場:銀座ニコンサロン
住所:東京都中央区銀座7-10-1 STRATA GINZA 1階  
電話:03-5537-1469
開館時間:10:30~18:30(最終日15:00まで)
休館日:日曜日

【大阪】
会期:2019年10月10日(木)~2019年10月23日(水)
会場:大阪ニコンサロン 
住所:大阪市北区梅田2-2-2 ヒルトンプラザウエスト·オフィスタワー13階
電話:06-6348-9698
開館時間:10:30~18:30(最終日15:00まで)
休館日:日曜日

トークイベント

【東京】
2019年9月21日(土) 16時~ 
太田愛(脚本家・小説家)さんと髙橋健太郎(写真家/出展作家)さんによるトークイベントが開催されます。

【太田愛さんプロフィール】
1997年に脚本家デビュー。代表作にTV『相棒』『TRICK2』、映画『相棒 劇場版Ⅳ』など。2012年に長編小説『犯罪者』(KADOKAWA)を発表、小説家としても活動を始める。13年『幻夏』(同)で第67回日本推理作家協会賞候補(長編及び連作短編部門)に。17年『天上の葦』(同)。新作小説を今秋より連載予定。

2019年9月28日(土) 17時~
野澤景太(小学校教員)さんと雄登(小学校教員)さんと髙橋健太郎(写真家/出展作家)さんによるトークイベントが開催されます。

*参加費無料、予約不要。当日、銀座ニコンサロンにお越しください。

髙橋健太郎(タカハシ ケンタロウ)さんプロフィール

1989年 横浜市生まれ。
2012年 青山学院大学社会情報学部卒業と同時に、スイスの写真家で中国の地方から都市に来る労働者や環境問題をテーマに撮影してきたAndreas Seibertに写真を教わる。
2013年以降、日本の若い男性の服装と思想をテーマに自身のプロジェクトを撮影し始める。
2014年12月、その年の春から始めた多摩川を題材にした作品『河床(かしょう)』(英題:The Riverbed)で写真評論家Jörg Colberg主催Conscientious Portfolio Competition 2014に選出される。同プロジェクトで2015年、第9回RPS Grant受賞。
2015年に戦後70年を迎えた広島をカラーフィルムで撮影した『HIROSHIMA 2015』が8月6日付 フランスの日刊紙Le Monde紙に特集され、その10月にRPSギャラリーにて個展を開催。
2014年からは個別プロジェクトとして日本という国と戦争をテーマに取材を続けている。
2019年3月、世界報道写真財団によるJoop Swart Masterclassにノミネートされる。
2019年9月に赤々舎より写真集『赤い帽子』(英題:Red Hat)を出版予定。
The New York Times、Le Monde、de Volkskrant、WIRED JP、Refinery 29、Bloomberg、Spiegel、soar等に寄稿。

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