※この記事は月刊カメラマン2018年10月号掲載時のものです。
「一眼レフ売り場を明るく変えたい」
(商品企画部 第二商品企画課 主幹 香山正憲氏)
香山 G1はある意味、カメラのアイコンそのものの形ですからね。カラー展開もちゃんと最初から決めていました。当時「なんかちょっと怪しい雰囲気の一眼レフ売り場を明るく変えたい」と思っていました。コンパクトカメラ売り場のほうはきらびやかでしたよね。だから、もうカラー展開は全部やろうと3色展開を3機種ともやったんです。そして売り場がオープンになっていった…そこは我々が頑張った結果だと思うんですけどね。
山田 今に続く系列としてはG、GH、GX、GF…GMはどこにいったんでしょう。
勝浦 GMはマイクロフォーサーズの4つの特長の中の小型化を一番反映した形です。そういう面では、非常に貴重なものではありますが、ただビジネス的には…ちなみにLUMIX GF9じゃダメですか?
山田 ダメです(笑)。LUMIX GM5の後継機はないんですか?
勝浦 ないとは言いませんが、出ますとも言えません。社内でもやりたい人はいっぱいいますし、カメラ誌編集長の方とか超コアな方々が買ってくれるし、写真展もこれで十分できる画質なのですが、ビジネス的にはけっこう難しい。プロフェッショナルユーザーのサブカメラ的にも非常に重宝されているのは重々分かっていますが…悩ましいところですね。
山田 ちなみにLUMIXは、海外での評価が高いですよね。
伏塚 圧倒的に高いですね。とくにヨーロッパでは、カメラの性能を雑誌社が純粋にフラットに数値化してすべてをチェックする。その雑誌評価をお客さんが見て読んで、それで購入に至るという購入フローの地域が多いですね。
香山 海外のお客さんに「LUMIXの印象は?」と聞いたときに「イノベータ―(革新者)です」と言われたのが印象深いですね。
▲ムチャブリであげてもらった“エポックメイキングだったカメラ5機種”。左からLUMIX G9 PRO、LUMIX GH4、LUMIX G1、LUMIX GM1、LUMIX GX7。
山田 すみませんがエポックメイキングだったカメラをむりやり5機種あげてください。LUMIX G1は外せないとして、次は?
勝浦 そうですね。LUMIX G1は世界初のミラーレス一眼であり、マイクロフォーサーズ1号機ですので外すことはできません。
香山 私はLUMIX GH3/4。担当していた事もあり、いわゆるプロが求める要素の方向に舵を一気に切った、今のハイブリッドの分岐点というか、コンセプト的にはここがベースです。
伏塚 私はファインダーとBISが入ったLUMIX GX7。小型化で大変苦労したし思い入れもあります。それと、初の静止画フラッグシップモデルに仕上げたLUMIX G9Proも挙げられますね。そして究極の小型軽量という意味でいうとLUMIX GM1です。
山田 ではレンズの話を少し。「マイクロフォーサーズってレンズがいいんだよ」という話は、意外と出てこないんですよね。
伏塚 マイクロフォーサーズにしたときに一番メリットが大きいのはボディ側よりもレンズ側、レンズ設計の自由度が上がることです。レンズが小さくて、軽くて、扱いやすいサイズで性能がきちんと発揮できます。一眼レフのときと大分違うバリエーション展開ができる。我々は最先端設計であるデジタル設計でレンズを始めたわけですが、それとライカさんとの協業でスタートしていることもあって設計だけではなく、製造に至るまでちゃんとフォーメーションが確立していて、そういう意味では安定して様々な事にチャレンジできています。確かに非球面レンズとかの金型を作るのは匠の世界ですから、あれはすごいのですが、設計と現場がかつての常識にとらわれずに新しいシステムを導入して生産しているのはすごくいいと思います。
山田 LUMIXは普通のレンズもいいのが特徴なのでキットを買った人も幸せなんです。
香山 やっぱりライカさんと協業しながらレンズを作ったおかげで、もう標準レンズクラスの水準もぜんぜん違う。最初はキットレンズのグレードを落とすことができなくて、値段が合わなくて苦労しましたね。
「技術の引出しは持っています」
(商品企画部 第一商品企画課 課長 伏塚浩明氏)
山田 最近、2020年のオリンピックに対応できるかという話をよく耳にします。DFDという唯一のAF方式を採用しているLUMIXとしてはどうなのでしょう。
香山 もちろん磨き続けて改善していきますし、ここは革新できるという要素はある程度はっきり我々の中にも持っています。
伏塚 LUMIX G9では後ろ向いても捕捉し続けるといった人物認識力を上げています。DFDは、一部監視カメラの技術を応用するなど、様々な組み合わせができるAF方式で、コントラストAF、位相差AFという壁を越えている。いろんなアルゴリズムを持って、いろんな要素を盛り込んで、もっともっと性能が上がっていく可能性はあります。
山田 超高速、高画素、超高感度、ダイナミックレンジ…まだまだ進化する方法はたくさんあると思うんです。可能性がありすぎますが、今後どこに行くのか。
伏塚 答えは、やはりニーズに適合させていく商品群を作っていくというしかないと思っています。また、それに回答できる技術の引出しは持っています。需要を喚起する場面、つまり「我々の技術でこんなイノベーションができるので注目してもらいたい」というときは思いっきりやります。最初、ミラーレスもそうでした。ミラーレスのことは誰も知らないしやって欲しいという声はないし、カメラメーカーはやるとは思えなかった。でも我々はやったわけです。これは新しい価値提供として需要を喚起するために意志を持ってやりました。しかし、強い市場ニーズを受けてやることも結構あるので、ここは難しいですね。今言われた高速や、高感度、高画質、高耐久性の話など、ネタはあるんですよ。でも、すべてをてんこ盛りにすると化け物みたいなカメラができてしまうので見極めが必要でして、そこが難しいところですね。
山田久美夫
花や星、風景や仏像までも撮影する。詳細でありながら速報性に優れたデジタルカメラ総合情報サイト“DigitalCamera. jp”主宰。
※この記事は月刊カメラマン2018年10月号掲載時のものです。