マイクロフォーサーズを発表してから10年。立ち上げの時、印象に残る製品、そして10年経った今、開発者は何を感じているのか? 河田一規氏が迫る! 
※この記事は月刊カメラマン2018年10月号に掲載した当時のものです。
画像: 河田一規

マイクロフォーサーズ 一眼10年の歴史  解説:河田一規

フォーサーズ時代からフォーマットの策定などでミラーレス時代に向かってリードしてきたオリンパス。今見ても斬新なPEN E-P1から始まり、優れた描写力を持つED 17mm F1.2 PROまで、最先端を突っ走る。

26年もの呪縛を打ち破ったE-P1

 オリンパスがミラーレス機に参入して約10年。これまで沢山のカメラやレンズが登場してきた。とくに印象的だった製品をピックアップしつつ10年の歩みを振り返ってみよう。

 まず何といってもインパクトが大きかったのは同社マイクロフォーサーズ第一号機となったPEN E-P1(2009年7月発売)。オリンパス往年の名機であるペンFのモチーフを各所にちりばめつつステンレスやアルミといった金属素材を多用したボディ外装は今の目で見ても斬新だし、内蔵フラッシュやEVFをあえて廃したミニマル路線も新鮮だった。当時のトレンドであるホワイトボディも用意され、普段はあまりカメラに関心のないオシャレ系女子にも大受けした。

 そして極めつけは2010年のカメラグランプリを獲ったこと。ちなみにオリンパスのカメラがグランプリに輝いたのはこのE-P1が初めて。1984年の第1回カメラグランプリでOM-4がニコンFAに超僅差で敗れて以来、グランプリに縁が無かったオリンパスの呪縛を26年ぶりに打ち破ったカメラとしてもE-P1は記憶に留めるべきカメラなのだ。

 E-P1以降、オリンパスは順調にPENシリーズを育て続け、E-Pシリーズよりも低価格でカジュアルなE-PLシリーズや、思い切り小型軽量に振ったE-PMシリーズなどを発売。PENシリーズのラインナップを強化する。

 そんな中、オリンパスは2012年3月にOM-D E-M5を発売。これまでのPENシリーズに加え、新たにOM-Dシリーズがスタートする。PENシリーズがどちらかというとライフスタイルに寄り添うカメラだとすると、OM-Dシリーズはより撮影優先、撮影志向であり、センサーなど基本的にはPENシリーズと同じデバイスを使いながらも、かなり性格の異なるカメラに仕上がっていた。

 話はやや脱線するが、フィルム時代のOM-1が人生初の35mm判一眼レフだった筆者的には、このOM-D E-M5は何となくコンセプトが安直すぎる気がして最初は好きになれなかったのだが、使っていくうちにどんどんとその優秀さに気がつき、最終的には2台体勢で運用するまで惚れ込んでしまった。他社を含め、2011年頃まで発売されたミラーレス機はどれもライトユーザー向けというか、携帯性の良さを活かしたサブカメラ的な役割が主だったと思うのだが、このE-M5あたりからはメインカメラ用途で使いたい/使えるカメラが増えていくことになる。

 そして2013年10月に発売されたOM-D E-M1の登場で、そうした「プロでもミラーレス」的な傾向は大きく加速する。E-M1はフラッグシップ機らしい優れた操作性を備え、AF機能も強化。多くのプロから歓迎されたのだ。ただ、この時点ではプロ用途の大口径ズームレンズはパナソニックの方が先行しており、取材現場などでは“ボディはOM-DだけどレンズはパナのF2.8ズーム”というカメラマンを結構見かけた。実はこうした異メーカー相互乗り入れみたいなことができるのもマイクロフォーサーズ規格の大きなメリットで、どちらのメーカーにとっても決して悪い話ではない。

多くの魅力を備えたマイクロフォーサーズシステム

OM-Dシリーズ登場以降、やや影が薄くなった感もあったPENシリーズだが、2016年2月に久々に強力な機種、PEN-Fが登場する。PENシリーズとして初めてEVFを内蔵し、ものすごく凝った外装と操作部材、そして懐かしいけど新しいデザインを纏ったPEN-Fは同社初のオーバー20M機としても話題となった。その作り込みの良さは、いつも携帯していたいと思わせるに十分で、撮影オリエンテッドなOM-Dとはまた別のマイクロフォーサーズならではの良さがあることを強力にアピールした。

 PEN-F発売から10ヵ月後の2016年12月には、ついにOM-D E-M1 Mark Ⅱが登場。それまではオマケ機能に過ぎなかった電子シャッターを十分に実用可能レベルまで高め、AF追従有りで18コマ/秒の連写が可能というスペックは完全に新時代を感じさせ、ますますプロ需要に食い込むことに成功する。ただし、E-M1 Mark Ⅱがプロ用カメラとしての性能と実力を兼ね備えていたことは疑いの余地もないことだけど、その魅力を強力にアシストしたのは、オリンパスならではのPROレンズシリーズの存在である。

 オリンパスのプロ用レンズがパナソニックに後れを取っていたのは前述したとおりだが、2013年10月にはED 12-40mm F2.8 PRO、2014年にはED 40-150mm F2.8 PROを発売、パナソニックとはややベクトルの異なるコンセプトが受け入れられて、両レンズともオリンパスを使うプロには必須となる。

 そして極めつけは2016年11月に登場したED 12-100mm F4.0 IS PROである。レンズ側とボディ側の手ブレ補正をシンクロさせることで、広角側であれば数秒単位での手持ち撮影が行える利便性の良さだけではなく、プロの使用に耐えられる鏡胴設計や、高倍率ズームとは思えないほどの画質の良さで、大きな話題となった。こうした優れたPROレンズの存在が強力な援軍となり、E-M1 Mark Ⅱは2017年のカメラグランプリを受賞。しかも「あなたが選ぶベストカメラ賞」にもE-M1 Mark Ⅱが選ばれた上、ED 12-100mm F4.0 IS PROがレンズ賞となり、オリンパスがカメラグランプリの3賞をすべて独占するという快挙を達成したのだ。

 さらに今年のカメラグランプリ2018ではED 17mm F1.2 PROがレンズ賞に選ばれ、オリンパスが3年連続のレンズ賞を奪取したことは記憶に新しい。10年という節目を超えて、今後もオリンパスの活躍が楽しみだ。

※この記事は月刊カメラマン2018年10月号に掲載した当時のものです。

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