※本記事は、過去にwebカメラマンで発表されたレビュー記事をまとめ、再構成したものです。
なぜタムロンは今、ニコンZマウントに力を入れているのか?
タムロンはこれまで、主にソニーEマウント向けにミラーレス用レンズを投入してきましたが、ここ数年、タムロンがラインナップの拡充を進めているのが「ニコンZマウント」です。
これまでニコンZマウントは、サードパーティ製AFレンズの参入が限られていました。しかしタムロンは、ニコンとの間で正式なライセンス契約を締結し、Zマウント用レンズの開発・製造・販売を行う権利を獲得。これにより、通信トラブルなどの不安がなく、カメラボディ内の各種補正機能やAF性能を引き出せる、純正同等の安心感をユーザーに提供できるようになったのです。
ニコンの純正レンズ、特に「S-Line」と呼ばれる高級レンズ群は、圧倒的な光学性能を誇りますが、その反面で「大きく、重く、そして高価」になりがちです。タムロンはあえて純正と真正面からぶつかるのではなく、「少しズームレンジを広げる」「小型軽量化を図る」「近接撮影能力を持たせる」といったアプローチで、純正レンズのラインナップにはないスペックのレンズを生み出しています。
ニコン本体としても、タムロンのような実力派メーカーが魅力的な選択肢を提供してくれることで、Zマウントシステム全体のシェア拡大につながるという共存共栄の関係が成り立っているのです。
ニコンZマウントは、フルサイズミラーレス機の中で最大クラスのマウント内径(55mm)と、極端に短いフランジバック(16mm)を持っています。これは光学設計者にとって、理想的な光をセンサーに届けることができる構造です。
タムロンが培ってきた高度な光学設計技術を惜しみなく発揮し、これまでにない高画質でユニークなレンズを開発する上で、ニコンZマウントは最も力を注ぐに値する魅力的なプラットフォームなのです。
ニコンZマウント用タムロンレンズの4つの特徴
タムロンが展開するニコンZマウント用レンズには、独自のメリットが詰め込まれています。
特徴1:独自スペックとコストパフォーマンス
たとえば標準ズームの28-75mmや、超望遠ズームの50-400mmなどは、ニコン純正に類似スペックのレンズが存在するものの、タムロンはより軽量であったり、AF駆動に高速なリニアモーター「VXD」を搭載していたりと差別化が図られています。それでいて、価格はリーズナブルです。
特徴2:純正にはないズームレンジ
「35-150mm」や「50-400mm」など、Zマウントの純正ラインナップには存在しない焦点距離のレンズを展開。これにより、複数の単焦点レンズやズームレンズを持ち歩いて頻繁にレンズ交換をする必要がなくなり、1本で多彩な構図や表現をシームレスに行うことが可能になります。
特徴3:表現の幅を広げる近接撮影能力(マクロ機能)
タムロンレンズの代名詞とも言えるのが「寄れる」こと。ワイド端でのハーフマクロ撮影が可能なレンズも多く存在します。花や小動物などの撮影において、被写体を大きく写しつつ背景をぼかすといった、マクロレンズさながらの表現がズームレンズ1本で手軽に楽しめます。
特徴4:カスタマイズ機能「TAMRON Lens Utility」と独自の手ブレ補正「VC」
近年のモデルにはUSB Type-C端子が搭載されており、パソコンやスマートフォンと接続することで専用ソフト「TAMRON Lens Utility」を利用できます。フォーカスリングの回転方向の変更や、フォーカスセットボタンへの機能割り当てなど、自分好みの操作感に徹底的にカスタマイズできます。
さらに、ボディ内手ブレ補正を搭載していないZシリーズのAPS-C機(DXフォーマット)などでも威力を発揮する、タムロン独自の手ブレ補正機構「VC(Vibration Compensation)」を搭載したモデルもラインナップされています。
ニコンZマウントユーザーにおすすめのタムロンレンズ
ここからは、実際にニコンZマウントユーザーにおすすめできる、タムロンのレンズをレビューしていきます。撮りたい被写体に合わせて、レンズ選びの参考にしてみてくださいね。
28-75mm F/2.8 Di Ⅲ VXD G2 (Model A063)
フルサイズ対応でF2.8通しの明るさを持ちながら、全長約120mm、重量わずか550gという軽量コンパクトサイズを実現した第2世代の標準ズームレンズです。ニコン純正にも「NIKKOR Z 28-75mm f/2.8」が存在しますが、タムロンのこのG2モデルは純正よりも軽量でありながら、最新のリニアモーターフォーカス機構「VXD(Voice-coil eXtreme-torque Drive)」を搭載している点が最大の強みです。
●焦点距離:28-75mm
●最短撮影距離:0.18m (W) / 0.38m (T)
●最大撮影倍率:1:2.7 (W) / 1:4.1 (T)
●レンズ構成:15群17枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ75.8×119.8mm・550g
●付属品:フード
このVXDによるAFの初動の速さと駆動スピードは圧倒的で、動きの速い被写体や一瞬のスナップ撮影において非常に高いレスポンスを発揮します。
さらに、ワイド端28mmでの最短撮影距離はわずか0.18m、最大撮影倍率1:2.7という優れた近接撮影能力を備えており、被写体にグッと寄った遠近感のあるワイドマクロ撮影も容易にこなします。すべてのZユーザーに推奨できる「最初の1本」にふさわしいレンズです。
■ニコン Z f 絞り優先AE(F5.6 1/320秒) プラス0.7露出補正 ISO100 WB:オート Photo:豊田慶記
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70-180mm F/2.8 Di Ⅲ VC VXD G2 (Model A065)
望遠ズームといえば「大きくて重い」という常識を覆した、F2.8通しの大口径望遠ズームレンズです。長さ約159mm、重さ865gというコンパクトな筐体の中に、タムロン独自の手ブレ補正機構「VC」を搭載しています。
純正の「NIKKOR Z 70-180mm f/2.8」にはレンズ内手ブレ補正が搭載されていないため、ボディ内手ブレ補正を持たないZ50などのAPS-Cフォーマット機(Z DX機)を使用しているユーザーにとっては、手ブレを抑えてくれる本レンズが魅力的な選択肢となります。
●焦点距離:70-180mm
●最短撮影距離:0.3m(W)/0.85m (T)
●最大撮影倍率:1:2.6(W)/1:4.7(T)
●レンズ構成:15群20枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ83×158.7mm・865g
●付属品:フード
描写性能も高く、光学設計を一新したことで絞り開放から画面の隅々まで均質でキレのある解像感を誇ります。AFにはリニアモーター「VXD」を搭載し、スポーツ撮影や動物撮影でもストレスのないピント追従性を発揮。さらに、ワイド端70mmでは最短撮影距離0.3mまで寄ることができ、望遠レンズでありながら足元の花やテーブルの上の料理などを大写しにするクローズアップ撮影も得意としています。
■ニコン Z6Ⅲ 絞り優先AE(絞りF2.8 1/160秒) プラス1.0露出補正 ISO800 WB:オート Photo:豊田慶記
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35-150mm F/2-2.8 Di Ⅲ VXD (Model A058)
Zマウントの純正レンズラインナップには存在しない、広角端35mmで「開放F2スタート」という規格外の明るさを実現したポートレート特化型の大口径ズームレンズです。
このレンズの真骨頂は、撮影者が立ち位置を変えることなく、35mmでの風景を交えた全身の引きの構図から、50mmでの標準的な構図、85mmでの上半身ポートレート、そして150mmでの極上のボケ味を活かした顔のアップまで、あらゆるバリエーションをシームレスに撮影できる点にあります。
●焦点距離:35-150mm
●最短撮影距離:0.33m(W)/0.85m(T)
●最大撮影倍率:1:5.7(W)/1:5.9(T)
●レンズ構成:15群21枚
●最小絞り:F16-22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:82mm
●大きさ・重さ:φ89.2×160.1mm・1190g
●付属品:フード
単焦点レンズを複数本持ち歩き、その都度レンズ交換をするという手間から解放され、被写体とのコミュニケーションや表情の変化を逃すことなく撮影に集中できます。VXDモーターの搭載により、F2という極めて被写界深度の浅い状況でも、瞳AFにしっかりと追従する高速・高精度なピント合わせが可能です。
重量は約1190gとやや大柄ですが、Z8やZ9といったしっかりとしたグリップを持つカメラボディとのバランスは絶妙で、ウェディングやイベント撮影において力を発揮します。
■ニコン Z 8 107mm時 絞り優先AE(F2.8 1/125秒) マイナス1露出補正 ピクチャーコントロール:スタンダード ISO6400 WB:オート Photo:阿部秀之
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50-400mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ VC VXD (Model A067)
ワイド端を標準域の50mmからスタートさせ、超望遠の400mmまでを1本でカバーするズーム比8倍の超画期的なレンズです。
一般的な100-400mmクラスのズームレンズとほぼ同等のサイズと重量(全長186mm、重量約1180g)に収めながら、ワイド側を50mmに拡張したことで、風景やスナップといった日常的な画角の撮影もレンズ交換なしで行える圧倒的な汎用性を誇ります。
驚くべきはその近接撮影能力で、ワイド端50mmから70mm付近では最短撮影距離0.25m、最大撮影倍率1:2のハーフマクロ撮影が可能です。足元の小さな昆虫や花に極限まで寄りつつ、サーキットでレーシングカーを400mmの超望遠で流し撮りするといった、全く異なるジャンルの撮影をこの1本で完結できます。
本レンズは20万円を切る実売価格(2026年4月現在)でありながら、VXDによる初動の速いAFと純正Sラインに肉薄する高い解像度を実現する恐るべきコストパフォーマンスを備えています。
■ニコン Z6Ⅲ AF-C 400mm 絞りF9 1/640秒 ISO800 WB:オート Photo:井上雅行
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70-300mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ RXD (Model A047)
タムロンがニコンZマウント用として初めて投入した記念すべきレンズであり、フルサイズ対応の300mmクラス望遠ズームとしては世界最小・最軽量を誇ります。
長さ約150.3mm、重量わずか580gという、500mlのペットボトルとほぼ同じ感覚で持ち運べるサイズ感は、望遠レンズ特有の「重くてかさばるから持ち出したくない」という悩みを払拭してくれます。
●焦点距離:70-300mm
●最短撮影距離:0.8m(W)/1.5m(T)
●最大撮影倍率:1:9.4(W)/1:5.1(T)
●レンズ構成:10群15枚
●最小絞り:F22-32
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ77×150.3mm・580g
●付属品:フード
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) プラス0.3露出補正 ISO200 WB:オート Photo:豊田慶記
手ブレ補正機構(VC)を省くことで極限の小型化を実現していますが、ニコンZシリーズ(フルサイズ機)の強力なボディ内手ブレ補正と組み合わせることで、ブレの少ない安定した望遠撮影が可能です。
運動会や鉄道撮影、動物園での撮影など、「たまには望遠の圧縮効果を楽しみたい」というユーザーが、カメラバッグの隙間に忍ばせておくのに最適な1本です。絞り開放からズーム全域で安定したシャープな描写力を発揮し、ステッピングモーター「RXD」による静粛なAFは動画撮影にも適しています。
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90mm F/2.8 Di Ⅲ MACRO VXD (Model F072)
1979年の初代誕生以来、「タムキュー」の愛称で世界中の写真家から愛され続けてきた伝統の90mmマクロレンズの最新ミラーレス最適化モデルです。最大撮影倍率1:1の等倍マクロ撮影が可能であり、タムキューの代名詞とも言える「美しくなめらかで自然なボケ味」と、最新の光学設計による「画面周辺部までの極めて高い解像力」を高次元で両立させています。
●焦点距離:90mm
●最短撮影距離:0.23m
●最大撮影倍率:1:1
●レンズ構成:12群15枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:12枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ79.2×128.5mm・640g(Zマウント)
●付属品:フード
AF駆動には最新のリニアモーターVXDを搭載し、マクロレンズの弱点でもあったピント合わせの遅さを克服。マクロ撮影時のシビアなピント調整はもちろんのこと、中望遠の焦点距離とF2.8の明るさを活かしたポートレート撮影や風景撮影においても、俊敏かつ静粛なオートフォーカスで快適な撮影体験を提供してくれます。
■ソニー α7C R 絞り優先AE WB:太陽光 撮影:金城正道
芸術的な作品作りを追求するクリエイターにとって、手放せなくなる単焦点マクロレンズです。
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純正レンズ(NIKKOR Z)とタムロンレンズ、どう使い分けるべきか?
ニコン純正の「NIKKOR Z」レンズ、特にS-Lineは、極限の光学性能と過酷な環境に耐える堅牢性を追求しており、プロフェッショナルの厳しい要求に応える最高峰のレンズです。一切の妥協を許さない作品作りや、極寒・防塵防滴が求められるシビアコンディションでの撮影においては、やはり純正レンズの信頼性が勝ります。
一方でタムロンのレンズは、「表現の柔軟性」と「機動力」、そして「圧倒的なコストパフォーマンス」に重きを置いて設計されています。
- 「レンズ交換の頻度を減らして、シャッターチャンスを逃したくない」(例:35-150mm、50-400mm)
- 「予算を抑えつつ、純正と同等かそれ以上のAFレスポンスと画質を手に入れたい」(例:28-75mm G2)
- 「とにかく荷物を軽くして、軽快に撮影を楽しみたい」(例:70-300mm)
- 「マクロレンズのように被写体に極限まで寄るダイナミックな表現をしたい」
このようなニーズを持つユーザーにとって、タムロンレンズは単なる純正の代用品ではなく、唯一無二のメイン機材となるのです。
まとめ
タムロンのレンズは、「独自のズームレンジ」「圧倒的に寄れる近接撮影能力」「軽量コンパクトな機動力」という強力な武器を持っています。フルサイズミラーレスの圧倒的な画質をより身近に、そしてより自由に楽しませてくれるタムロンのレンズは、ニコンZマウントの表現の可能性をどこまでも広げてくれる頼れるパートナーです。
ぜひ、ご自身の撮影スタイルや「撮りたい世界」に合わせて、本記事で紹介したレンズの中から最高の一本を見つけ出し、Zマウントでの新しい写真表現を楽しんでみてください。