タムロンから、同社では初めてのZマウント対応レンズとなる70-300mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ RXD (Model A047)が登場した。本レンズは2020年にソニーEマウント用が発売されているので、このレンズの実力を知る人はそれなりにいると思われるが、Zマウント(フルサイズ)版では一体どのような印象となるだろうか? 期待が募る。

タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ RXD 主な仕様

画像: タムロン 70-300mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ RXD 主な仕様

●焦点距離:70-300mm
●最短撮影距離:0.8m(W)/1.5m(T)
●最大撮影倍率:1:9.4(W)/1:5.1(T)
●レンズ構成:10群15枚
●最小絞り:F22-32
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ77×150.3mm・580g
●付属品:フード

傑作が続く、タムロン得意のズームレンジ!

●70mm

画像: これはみなとみらい地区にある万国橋からランドマークタワーをパチリしたもの。ビネット補正は弱です。個人的な意見ですが、70mmは思ってるよりも長く感じます。 ■ニコン Z 7Ⅱ プログラムAE(F7.1 1/800秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

これはみなとみらい地区にある万国橋からランドマークタワーをパチリしたもの。ビネット補正は弱です。個人的な意見ですが、70mmは思ってるよりも長く感じます。
■ニコン Z 7Ⅱ プログラムAE(F7.1 1/800秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

●300mm

画像: 同じく、300mmは期待したよりも短い。遠景ではズーム位置を問わずシャープネスは非常に高く安定してますな。テレ端開放F6.3のワリにデカイか? と思ったけど、この実力ならニンマリ。 ■ニコン Z 7Ⅱ プログラムAE(F6.3 1/400秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

同じく、300mmは期待したよりも短い。遠景ではズーム位置を問わずシャープネスは非常に高く安定してますな。テレ端開放F6.3のワリにデカイか? と思ったけど、この実力ならニンマリ。
■ニコン Z 7Ⅱ プログラムAE(F6.3 1/400秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

●300mmで月を撮影

画像: 300mmで月を撮ると大体このサイズ。画面いっぱいに撮ろうと思うとかなりの焦点距離が必要であることが分かりやすいかと。だから、300mmって意外と短いのよ。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/160秒) マイナス5.0露出補正 WB:オート ISO500

300mmで月を撮ると大体このサイズ。画面いっぱいに撮ろうと思うとかなりの焦点距離が必要であることが分かりやすいかと。だから、300mmって意外と短いのよ。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/160秒) マイナス5.0露出補正 WB:オート ISO500

期待が募る、と記述したことには理由がある。タムロンの70-300mmと言えば傑作が多いからだ。強力な手ブレ補正だったり、卓越した光学性能だったり、接写性の高さといったプラスαの性格を有しつつも手の届く価格で、写真文化の裾野を広げることに一役買っていたと思っている。

本レンズもそうしたプラスαの要素を持っている。フルサイズ用300mmクラスの望遠ズームとしては世界最小・最軽量をアピール。「気軽に楽しむ、望遠300mm」というコンセプトを掲げている。

ニコンZ用はソニー用と比べて長さが少し伸びて150.3mm、重量は580gとなっているが、まだ十分に「軽い」と表現できうるサイズに収まっている。このサイズ感はほぼ500ml前後のペットボトルと等しいので、気になる人はカメラバッグへの収納性などをチェックしてみるといいだろう。

画像: ●300mmで月を撮影

この魅力的なサイズ感を実現したのは、テレ側の開放F値がF6.3とやや暗いこと(と言ってもF5.6から1/3段暗いだけなのだが)、光学手ブレ補正ユニット(タムロンで言うところのVC)を持たないことで実現できたと思われる。

ちなみにAPS-Cフォーマット機と組み合わせれば105-450mm相当の画角をカバーできるレンズとなるが、APS-CのZはボディ内手ブレ補正を持たないので、令和の時代としては運用にはそれなりに工夫が必要だろう。

ピントリングに不満。フードはニコン純正よりもはるかに上質!

画像: ワイド端(70mmね)でパチリ。Z 7Ⅱがスゴイのかレンズが優秀なのか分かりませんが、やたらシャープに写るよね。歪曲は少しあるけど気になりませんでした。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) プラス0.3露出補正 WB:オート ISO200

ワイド端(70mmね)でパチリ。Z 7Ⅱがスゴイのかレンズが優秀なのか分かりませんが、やたらシャープに写るよね。歪曲は少しあるけど気になりませんでした。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) プラス0.3露出補正 WB:オート ISO200

ズームリングの操作感は行きと帰りでややフィーリングが異なり、スムースとは言い難い。ソニーEマウント版の希望小売価格7万7000円(税込)からすると不満はないが、Zマウント版の9万3500円(税込)で考えるとギリギリ及第点という気がしなくもない。

また、これはファームアップで解決する可能性があるが、ピントリングをゆっくり操作するとMFが反応しないことが気になった。うっかり操作を防ぐという意味では丁度いいのかも知れないが、筆者的には扱い難く感じた。

画像: 任意選択でAF。眼の部分にAF枠重ねたけど枠内での至近位置でAFしやすいね、Zは。なので首あたりの毛にピントが来てる。輪郭部に色づきはナシ。これがこのレンズの気持ち良さの秘訣だろうね。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/125秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

任意選択でAF。眼の部分にAF枠重ねたけど枠内での至近位置でAFしやすいね、Zは。なので首あたりの毛にピントが来てる。輪郭部に色づきはナシ。これがこのレンズの気持ち良さの秘訣だろうね。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/125秒) プラス1.0露出補正 WB:オート ISO200

外観はシンプルだが、フードの剛性感や着脱のしやすさなどはニコン純正Zレンズ以上に優れているポイント。完全に嫌味だが、ZレンズのフードをあのクオリティでOKだと承認した人の顔が見てみたいし、敢えてあのようにしたならその意図を教えて欲しい。

AF速度は実用十分。特に速いとも遅いとも感じない辺りの速度とレスポンスで、どちらかと言えば快適かな? というレベル。
組み合わせたボディはZ 7Ⅱだったが、猫に対しては問題なく…というかカメラなりの動物AFはしっかりと動作していた。手ブレ補正についても全く問題なく、純正レンズ感覚で撮影を楽しむことができた。

描写性能はお値段以上。歴代に比べ寄れなくなったのが残念…。

画像: これだけシャープに写ると俄然楽しくなってくるのが水面に反射するビルの模様。見事な再現にニンマリ。このジャンルは個人的にシグマのFoveon機の独壇場だと思っていたけれど、Z 7Ⅱの方が楽だし高感度も使えて非常にGood。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F7.1 1/80秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ISO220

これだけシャープに写ると俄然楽しくなってくるのが水面に反射するビルの模様。見事な再現にニンマリ。このジャンルは個人的にシグマのFoveon機の独壇場だと思っていたけれど、Z 7Ⅱの方が楽だし高感度も使えて非常にGood。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F7.1 1/80秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ISO220

描写性能はかなり高い。Eマウント版をテストした時にも描写性能の高さについては感じていたが、絵作りの違いなのかソニーで使うよりも写りがよりシャープで、ひと皮剥けたようなキレの良さが印象的だった。Z 7Ⅱの45MPセンサーに対しても全く負けておらず、絞り開放からガシガシ使えるのも注目点のひとつだろう。

明暗比の大きなシーンでハイライトのエッジ部分にも色づきなどなく、逆光にもかなり強い。気になったのは接写性が低いこと。これまでのタムロンレンズといえば、タガが外れたように寄れるレンズがほとんどだったが、本レンズは例外的に寄れず、ワイド側で最短0.8m(最大倍率約0.11倍)、テレ端で1.5m(最大倍率約0.2倍)と不満が残った。

代えがたい機動力。「純正至上主義」の方も使ってみて!

画像: 絞り開放でも焦点距離や撮影距離を問わずシャープに写るのがこのレンズの魅力のひとつ。純正にないスペックだから、ライバル不在だけど実力もあるので良い選択肢になっていると思いますぜ。文句は寄れねぇことだけだな。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F4.8 1/400秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ISO200

絞り開放でも焦点距離や撮影距離を問わずシャープに写るのがこのレンズの魅力のひとつ。純正にないスペックだから、ライバル不在だけど実力もあるので良い選択肢になっていると思いますぜ。文句は寄れねぇことだけだな。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F4.8 1/400秒) マイナス0.3露出補正 WB:オート ISO200

総じて、ウットリと見惚れてしまうような描写性能ではないけれど、絞り開放からでも十分にシャープでキレが良く、お値段以上の写りであることは間違いない。Zレンズの純正にはない70-300mmという扱いやすいズームレンジをカバーするレンズであること、比較的手頃であることなど、訴求力のあるレンズという印象を持った。

画像: ボディ内手ブレ補正があれば、テレ端で1/80秒くらいなら安心して使えますが、試しにボディ内VRをOFFしてみたら、やっぱり焦点距離の倍のシャッター速度じゃないと正直キツイよね。APS-CのZに組み合わせるなら純正のZ DX50-250mmが良いと思います。 ■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/80秒) プラス0.3露出補正 WB:オート ISO280

ボディ内手ブレ補正があれば、テレ端で1/80秒くらいなら安心して使えますが、試しにボディ内VRをOFFしてみたら、やっぱり焦点距離の倍のシャッター速度じゃないと正直キツイよね。APS-CのZに組み合わせるなら純正のZ DX50-250mmが良いと思います。
■ニコン Z 7Ⅱ 絞り優先AE(F6.3 1/80秒) プラス0.3露出補正 WB:オート ISO280

こういったレンズがあることでZユーザーも撮影領域も広がると思うし、純正レンズの性能が高いことは重々承知だけど、高すぎて手が出ないという人もいると思うので、こういったレンズの登場はニコンにとっても良いことだろう。

というか、これ以上のレンズを純正でリリースするのはかなりハードルの高い仕事になると思われるし、かりに登場したとしてもコスパで本レンズを超えるのは難しそうだ。

こうした小型望遠ズームの存在は、スペック的には注目度するところが少ないけれど、実際に使ってみるとその魅力に気付かされるシーンは多い。特にF2.8ズームなどの高性能レンズを使っている人は、重量とサイズが機動力に与える影響を身体で覚えることができると思うので、食わず嫌いせずに試してみて欲しい。

画像: 代えがたい機動力。「純正至上主義」の方も使ってみて!

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