タムロン 28-75mm F/2.8 Di Ⅲ VXD G2(Model A063)Zマウント 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算28-75mm相当
●最短撮影距離:0.18m (W) / 0.38m (T)
●最大撮影倍率:1:2.7 (W) / 1:4.1 (T)
●レンズ構成:15群17枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ75.8×119.8mm・550g
●付属品:フード
ライセンス契約の下で開発・製造・販売されたZマウント第4弾!
本家ニコンにも22年1月に登場した同スペックのレンズがあるが、そちらよりも15g軽量で、最大撮影倍率は僅かに上回っているだけでなく、AFモーターにリニアモーターであるVXDを採用するなど、スペックだけで言えばより良いものを備えている。しかし実売価格はほぼイーブン。実に戦略的である。
絶対的にはソコソコ大きく重いが、このクラスのレンズとしてはまぁまぁ軽い、が正直な感想。ズームリング・フォーカスリング共にスムースな操作感。
試しに先のZ28-75mm f/2.8と操作感を比べてみたところ、操作感そのものについてはニコン純正レンズの方が僅かに洗練されているように感じられたが、レンズ自体の上質感はタムロンに分があるように思う…が、好みで評価は分かれそう、という程度の差でしかない。ただしレンズフードの剛性感と装着感はタムロンが優れていた。
印象的だったのはサイズ感。フードを正位置で装着した状態での最長でも約166mm(テレ端時)なので、「カメラバッグを選ばない」と言って良さそうだ。
これはZ28-75mm f/2.8でフードを正位置で装着した状態での最短長約160mmと遜色ない長さに収まっていると言っても良さそうな数値だ。
フード径は約86mmとF2.8ズームのワリに小径。純正レンズは10mm程度大きな約97mmなので、カメラバッグへの収納性においても本レンズにはアドバンテージがある。
実際にドンケのF-1 Xで本レンズと純正レンズを繰り返し出し入れしてみたが、本レンズの方が明らかに気楽に扱う事ができた。これは数値から想像するのと体感ではかなりの差がある。
また、カメラの操作設定によってはコントロールリングとしても使うことができ、Fnボタンのカスタムも可能だ。
俊敏かつ快適なAFは純正を凌駕する?
今回はニコン Z fとの組み合わせで実写してみた。
VXDの威力か、AFのレスポンスは素晴らしく、AF時間と駆動速度は純正レンズを明確に凌駕していて快適。AF時間で言えば体感で約半分と言っても大袈裟ではなさそうだ。特に転がり始めの動作が軽く、本レンズはスコスコと軽快に動作する。
ただしローコントラストシーンでは純正レンズの方がAFはスムースに合焦する場合が何度かあった。厳密な比較ではないので撮影誤差かも知れないが、シビアな撮影条件下では純正レンズの方が快適に動作する可能性も否定出来ない…と言っても日常的に快適なのは本レンズで間違いないのだが。
写りはお見事。絞り開放から申し分のない解像性能がある。逆光にも強く、優れた光学性能だ。
ワイド側での接写性は素晴らしく、ボケもキレイで撮影が楽しい。こうした瞬間にタムロンレンズらしさを感じる。総じて撮影が実に気持ちの良いレンズになっている。
シビアに評価すると、テレ端での絞り開放時の周辺部は他の領域の写りからすると少し緩いかな? と思わなくもない。
またヴィネットコントロールがOFFでは周辺光量落ちが少し気になるシーンはありそうだ。
これまた厳密な比較ではないが、過去にZ28-75mmF2.8で撮影した画像と見比べてみると、純正レンズの方がテレ側やハイライトエッジなどでの色づきが少なく、クリアに見えるシーンが時折あった。
ライバルは…どちらかというとZ 24-120mmf/4かな?
本レンズで最も印象的だったのは繰り返しになるけれど、AF性能。高速かつハイレスポンスで快適だ。例えば記憶の中にあるZ24-70mmf/2.8Sよりも高速かつハイレスポンスのような気さえしているが、おそらく記憶違いではないだろう。
加えて写りも良く「この価格でこの性能を実現するとは!」という驚きに溢れたレンズに仕上がっている点は素晴らしい。
機動性は重視したいけど明るいズームが欲しい、や、寄れて明るい標準ズームが欲しい、というワガママを高い次元で叶えてくれるレンズだ。
ジャンルは若干異なるが、全長はほぼ同等で写りが良く、何かと融通の利くズームレンジのZ 24-120mmf/4 Sも近い価格帯で存在感を放っていることは無視できない。最大撮影倍率はコチラの方が大きく、+80gの対価と歪曲補正必須という条件付きでかなり便利になる。
AF性能と楽しさで言えばタムロンレンズを推したいが、便利ズームの魅力もまた抗いがたいものがある。