タムロン初のキヤノンRFマウント用レンズ11-20mm F/2.8 Di Ⅲ-A RXD (Model B060)が発売となった。EOS Rボディと組み合わせると焦点距離は17.6-32mm相当で、F2.8通しの大口径広角ズームとなる。CP+2025でもお披露目されたのですでに見たり触った人も多いだろう。なによりキヤノンのライセンスの元で設計されており、安心して使えるのがうれしい。

■撮影共通データ:キヤノン EOS R10  WB:オート

タムロン 11-20mm F/2.8 Di Ⅲ-A RXD (Model B060) RFマウント 主な仕様

画像: タムロン 11-20mm F/2.8 Di Ⅲ-A RXD (Model B060) RFマウント 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算17.6-32mm相当
●最短撮影距離:0.15m (WIDE)/0.24m (TELE)
●最大撮影倍率:1:4 (WIDE) / 1:7.6 (TELE)
●レンズ構成:10群12枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ73×84.2mm・340g
●付属品:フード

純正に用意はないので、ライバルはシグマ!?

画像: マウント部から少し膨らんでそこから先端部までストレートな寸胴型。形状的にやや大きく感じられるかもしれない。とはいえF2.8の大口径広角ズームとしてはかなり小さいのは確かだ。


マウント部から少し膨らんでそこから先端部までストレートな寸胴型。形状的にやや大きく感じられるかもしれない。とはいえF2.8の大口径広角ズームとしてはかなり小さいのは確かだ。

本レンズはもともと2021年6月にEマウント用が発売されており、そのマウントをRFマウントにして最適化したものなので基本的に光学系は変わっていない。

キヤノンの純正レンズラインナップにはRF-Sの大口径広角ズームはないため、このクラスを求めるなら本レンズかシグマ10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary=実勢価格107,800円
ということになるだろう。ちなみにシグマの10-18mmは23年10月が最初の発売日だ。

画像: F5.6まで絞っていることもあり周辺までシャープネスは高い。が、その高いシャープネスはカリカリしすぎず優しい再現。彫刻なども硬くなりすぎず石膏を研いだような優しいエッジを再現できている。ハイライトの再現も粘っていて良い。 ■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) ISO3200


F5.6まで絞っていることもあり周辺までシャープネスは高い。が、その高いシャープネスはカリカリしすぎず優しい再現。彫刻なども硬くなりすぎず石膏を研いだような優しいエッジを再現できている。ハイライトの再現も粘っていて良い。
■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) ISO3200 

まずデザインは同社のG2シリーズの頃から採用している、マウント部にシルバーの帯が入るデザインでスタイリッシュだ。レンズはマウント部からすぐに少し径を大きく膨らませそこからレンズ先端まで同径となる寸胴型だ。もちろんフードは一回り大きくなる。

ライバルとなるシグマも最大径ではほとんど変わらないが、あちらはマウント部と先端部は太いが中はくびれて細くなっている。そのため寸胴型の本レンズの方がやや大きく感じられる。スペックとしての最大径は誤差レベルでしか違わないのだが、デザインで結構印象は変わってくるので、購入前には量販店で並べてフィールを確認したいところだ。

筆者の所有するEOS R10に装着してみると、手にした感じのフィールは良い。微妙にレンズ側にウェイトバランスは寄るものの、たとえばグリップがより大きく重量もあるEOS R7と組み合わせればかなりバランスの良いセットとなるはずだ。

キヤノンのライセンスを受けているので、当たり前だがトラブルなどはなくフツーに使っていける。しかしキヤノン独自のデジタルレンズオプティマイザはレンズ補正データがないため使用できない。一般的な周辺光量や歪曲の補正に限られる。このあたりはサードパーティー製レンズの共通点だ。

シグマとは対照的な「やさしい」描写

画像: いかにも広角、なカット(笑)。デジタルレンズオプティマイザは使用できないが歪曲補正などの基本補正は使えるので、建物の線をしっかりまっすぐに再現している。 ■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) ISO100


いかにも広角、なカット(笑)。デジタルレンズオプティマイザは使用できないが歪曲補正などの基本補正は使えるので、建物の線をしっかりまっすぐに再現している。
■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) ISO100 

描写はシャープネスは十分でカリカリしない優しいエッジだ。このあたりはシグマの描写とは対照的かもしれない。本レンズが甘いというのではなく、エッジの立て方が異なるのだ。ピクチャースタイルが「スタンダード」でもエッジがきつすぎない。

画像: それぞれテレ端、ワイド端での最短撮影距離カット。かなり寄れるのがわかるだろう。ワイド端の倍率は高く、ピントが合っている部分は適度なシャープネスを保っている。ただし、ボケは全体にブレたようなやや暴れたボケ方だ。


それぞれテレ端、ワイド端での最短撮影距離カット。かなり寄れるのがわかるだろう。ワイド端の倍率は高く、ピントが合っている部分は適度なシャープネスを保っている。ただし、ボケは全体にブレたようなやや暴れたボケ方だ。

最短撮影距離はワイド端でフードが邪魔になるほど寄れ、最短位置ではボケは暴れるがピント位置はシャープネスを保つ。大口径なので玉ボケも得られる。色の再現は同社らしいやや赤系が強く出て、色が全体に強まったような再現。このあたりはやや好みが分かれそうなところだ。

逆光時は太陽が中央から少し外れたところでフレアが発生しやすいが、中央や周辺ではあまり発生しなかった。

画像: 太陽のような強い光源が入るとゴーストが出ることがあるのだが、出やすいのは中央や端ではなく、画像のように中央と端の中間あたりに光源がある場合だった。それでもゴーストは盛大に出ることはなく、出てもこれくらいだ。


太陽のような強い光源が入るとゴーストが出ることがあるのだが、出やすいのは中央や端ではなく、画像のように中央と端の中間あたりに光源がある場合だった。それでもゴーストは盛大に出ることはなく、出てもこれくらいだ。

画像: 意地悪テストで逆光で電線を周辺の巡らせ、細かいものをたくさん入れ込んで絞り開放で撮影。この位置の太陽ではゴーストもなく、また電線のどこにもフリンジなどは発生していない。角までキッチリとシャープネスを保っていることも確認できる。優秀、優秀。


意地悪テストで逆光で電線を周辺の巡らせ、細かいものをたくさん入れ込んで絞り開放で撮影。この位置の太陽ではゴーストもなく、また電線のどこにもフリンジなどは発生していない。角までキッチリとシャープネスを保っていることも確認できる。優秀、優秀。

本レンズには手ブレ補正機構は搭載していないため、手ブレ補正を求めるならボディ側にIBISを搭載している機種を選ぶか、感度を上げてブレ対策をする必要がある。

本レンズで惜しいと思えたのがピントリングをコントロールリングとして使えない点だ。AF任せで撮る際にはコントロールリングが便利だが、本レンズはフォーカシングと排他利用としても割り当てることができない。もしかすると2021年6月のEマウント用レンズ発売時点ではRFマウント化は視野に入っていなかったのかもしれない。シグマのレンズが対応しているだけにこれは惜しい点だ。

ただし、今後のファームアップで対応するかもしれないし、今後発売になるタムロンのRFマウント用レンズでは使用できるようになるかもしれない(ぜひとも対応してほしい)。

楽しい! いつの間にかF5.6でのスナップに没頭していました!

画像: 本レンズはハイライトの再現がギリギリで粘ってくれる。人が通り過ぎるタイミングでシャッターを切り、シルエットとしてみせつつハイライトを飛ばしすぎない…そういう構成が狙いやすかった。 ■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) マイナス1.0露出補正 ISO1600


本レンズはハイライトの再現がギリギリで粘ってくれる。人が通り過ぎるタイミングでシャッターを切り、シルエットとしてみせつつハイライトを飛ばしすぎない…そういう構成が狙いやすかった。
■絞り優先AE(F5.6 1/80秒) マイナス1.0露出補正 ISO1600 

画像: 砂の風紋を撮っているが、周辺四隅まで砂粒が流れることなくシャープに描写。もう少し大きなセンサー用のレンズかな、と思わせてくれる。F5.6まで絞るとかなり安定して全体に高いシャープネスをみせる。 ■絞り優先AE(F5.6 1/60秒) プラス0.3露出補正 ISO100


砂の風紋を撮っているが、周辺四隅まで砂粒が流れることなくシャープに描写。もう少し大きなセンサー用のレンズかな、と思わせてくれる。F5.6まで絞るとかなり安定して全体に高いシャープネスをみせる。
■絞り優先AE(F5.6 1/60秒) プラス0.3露出補正 ISO100 

ちなみに本RFマウント用は他マウント用と異なりAF/MF切り替えスイッチが搭載されている。このあたりはしっかりキヤノンの仕様に合わせてきている。また、USB Type-Cソケットを装備しているため、同社のTAP-in Consoleやカメラボディを介さずに直接ファームウェアのアップデートが可能だ(専用ソフトウェアTAMRON Lens Utility併用)。

画像: レンズとパソコンを直接USBケーブルで接続し、専用ソフトウェアの“AMRON Lens Utility”を使用することでファームアップが可能。カメラボディなど他の機器を用意する必要はない。


レンズとパソコンを直接USBケーブルで接続し、専用ソフトウェアの“AMRON Lens Utility”を使用することでファームアップが可能。カメラボディなど他の機器を用意する必要はない。

画像: せっかくの大口径なのにF5.6でばかり撮ってしまう…それくらいF5.6時の画質が良い。ある程度深い深度を得てなおかつシャープネスも安定するからだ。ついつい仕事を忘れて私的な撮り方になってしまうほど撮っていて気持ちイイ! ■絞り優先AE(F5.6 1/60秒) マイナス1.0露出補正 ISO125


せっかくの大口径なのにF5.6でばかり撮ってしまう…それくらいF5.6時の画質が良い。ある程度深い深度を得てなおかつシャープネスも安定するからだ。ついつい仕事を忘れて私的な撮り方になってしまうほど撮っていて気持ちイイ!
■絞り優先AE(F5.6 1/60秒) マイナス1.0露出補正 ISO125 

AFは軽快で、超高速とはいわないが十分に速いし、合焦ポイントでスッと止まるのは気持ちがいい。もちろんボディのAF機能とのマッチングもあるが、レンズ側のフォーカスユニットが微妙な止まり方をせずに、狙ったポイントでピタッと止まるのは気持ちがいい。

ということで長いことスナップで持ち歩いたりしていたが、スナップ、風景などいろいろな用途で便利な大口径広角ズームだけに、キヤノンのAPS-Cカメラを使っているなら検討すべきレンズの一つだろう。

2025年5月現在同社のRFマウント用レンズはまだ本レンズのみだが、今後は他社用マウントのレンズがRFマウント化して登場したり、今後の新レンズではRFマウント用も初期からラインナップされると思われ、同社の今後のレンズにも期待だ。

画像: グッと寄って画員被写体を強調しつつ背景を広く入れる、広角ならではの撮り方。絞りを選んで背景の見え具合をコントロールするのがポイント…なんだけど、これもF5.6時がベストだった。


グッと寄って画員被写体を強調しつつ背景を広く入れる、広角ならではの撮り方。絞りを選んで背景の見え具合をコントロールするのがポイント…なんだけど、これもF5.6時がベストだった。

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