シグマ 10-18mm F2.8 DC DN | Contemporary RFマウント 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算15-27m相当
●最短撮影距離:11.6(W)/ 19.1(T) cm
●最大撮影倍率:1:4 (W)/ 1:6.9 (T)
●レンズ構成:10群13枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ72.2×62.0mm・270g
●付属品:フード
「キヤノン公認」の安心感は大きい
まずここで一つ大きなポイントは「正式にライセンスを得て」ということ。これは第一弾となる“18-50mmF2.8 DC DN”が発売された際にも各所で説明されていたことだが、シグマが勝手にキヤノン用のRFマウントレンズを設計・発売するのではなく、キヤノンボディ側との通信においても正常に機能する。つまりは安心して使用できるということだ。
さて、この10-18mmという焦点域のズームはキヤノン純正にも存在する。しかも純正の方が安く、半分まではいかないがそれに近い実売価格だ。ただしその価格差はそのままスペックや細部の素材、造り込みに影響している。
本レンズはまず開放F値がF2.8と超広角ズームとしては大口径に属する明るいもので、しかもズーム全域でF値は固定。対して純正はF4.5-6.3キットレンズクラスのもので、ズームレンジによってF値は変わるタイプだ。特に18mmではF6.3は2.3段分もの明るさの差となり、その差は小さくない。厳しい光量条件の際はもちろん、表現にも影響してくる部分だ。細かい話の前にこの点だけをとってみても本レンズの存在価値あるといえる。
では大口径であることでレンズが大型化されているかといえば、全域F2.8の超広角ズームとは思えないほどコンパクト。純正よりはたしかに大きく重くはなっており、ボディに装着するとしっかりと違いは分かるのだが、極端に巨大化しているわけではなく気持ちが萎えるような大きさ、重さではまったくない。
むしろこのサイズと重さでよくこのレベルの画質を保っていると感心すらするだろうし、安心感もある。これは、既に発売されている同レンズの他マウント用でも高く評価されている部分だ。
そんなサイズや重さに影響してくるのが素材や造りの違い。本レンズは真鍮製の金属マウントを採用しており、装着時のフィールや安心感、そして購入しての満足感は高い。プラスチック素材も使われているが安っぽいものではなく、素材の厚みや強さを感じられるもので、鏡筒の剛性感も高い。
ズームリングやピントリングの回転フィールは適度な粘りを持ちリッチなフィールも味わえる。「なんかいい写真が撮れそう」。随所でそう思わせてくれるのだ。この「満足感」が得られるのは最近のシグマ製レンズの大きな特徴ともいえるだろう。
今回は筆者個人所有のキヤノン EOS R10に装着して撮影しているが、装着フィールは重さ的にもサイズ的にもバランスがよい。仮にEOS R50ではボディがよりコンパクトなためバランス的にもう少しレンズが大きくなるが、それでもマッチングは良いだろう。むしろEOS R7との組み合わせではもう少し大きくてもいいかも、と思える。それくらい本レンズはコンパクトだ。
超ワイドでマクロ的にぐんぐん寄っていける!
実際に撮影を始めると、実に軽快で気持ちがいい。コンパクトで軽く、大口径ズームを使っているということを忘れてしまう。
ピントは基本的にAF任せが多いためピントリングの滑らかさを撮影中に実感することは少ないかもしれない。その反面ズームリングは使用頻度も高いので、そのフィールに良さを多分に感じられるだろう。
ここでひとつ気になりそうなことは、純正の10-18mmとはピントリング(コントロールリング切り替え)とズームリングの前後位置が逆であること。ボディをズームキットで購入した場合など、純正レンズと組み合わせて使用する場合にはそこを気にする人もいるかもしれない。とはいえキヤノン純正レンズであっても一部前後が逆のRFレンズはあるのだから、これは慣れの問題だろう。
もう一つ触れておきたいのは「寄れる」こと。本レンズは高画質を保ったままかなりの距離まで寄れるのだ。マクロ的にぐんぐん寄っていける。しかも超ワイドで。歪みがかなり補正されていているので、超ワイド感は希薄かもしれない。しかしスーパーワイドでマクロ的なカットが撮れるのは実に楽しいのだ。
今回の作例では、あえて夕方から夜のスナップ撮影も積極的に行っている。もちろん三脚等は使用せずにすべて手持ちでの撮影。手ブレ補正がないからと夜の手持ち撮影には向かないのではと考える人、特に初心者には多いかもしれない。しかしイマドキは多少感度を上げても画質は高いし、手ブレ補正を使わなくてもF2.8の明るい絞りを使えばフツーにこなしていけるのだ。
気になる画質だが、ズーム全域でとても高画質。ワイド端の開放絞りではわずかに甘くなることもあるのだが、普通に見て気づく人はほとんどいないであろうレベル。また全域でフレアは見られずクリアで締まりのある描写。ゴーストは基本的にはよくおさえられているが、太陽が画面四隅位置に来るとダブったようなゴーストがでる。
ただし、これはボディ由来の可能性もあるのと、晴天時の太陽ほどの強い光源で無ければハッキリは分からないこともある。と、気になりそうな部分を先にリストしたが、ツッコミどころがとても少ない優秀なレンズだ。逆にこれら以外の部分は実に優秀で、十分にお値段以上といえるだろう。
純正=RF-S10-18mm F4.5-6.3 IS STM=と比べて迷う部分は?
まず手ブレ補正機構がないこと。キヤノンのAPS-CモデルはEOS R7を除きIBIS(ボディ内手ブレ補正)を搭載していない。そのためそれ以外の機種との組み合わせでは手ブレ補正がまったくない状態になるのだ(動画用の電子手ブレ補正は除く)。これをどう見るかだ。
手ブレ補正はあるに越したことはない。でも無ければ撮れないというものでもない。本レンズの場合はF値が明るいため純正よりは広角側で1.3段、テレ側で2.3段ほど速いシャッター速度を使うことが可能だ。絞りの表現を考えた際にすべてを相殺できるわけではないが、実用上困ることは少ないはずだ。またブレも表現として意図的にコントロールしながら使っていくのもオツというものだ。
また本レンズがコンパクトな外観を持つため、キヤノン EOS R10、R50などとの組み合わせをイメージしてしまうが、大口径広角ズームという立場を考えればEOS R7クラスの高性能APS-C機種と組み合わせるのが理想的であるともいえる。
次にコントロールリングの有無だ。純正はピントリングとの切り替え式ではあるもののコントロールリングを利用することが可能だ。本レンズにはそれがないため、例えば露出補正などをコントロールリングに割り当てている人には操作性が変わることになる。こればかりはシグマのレンズが各社用共通の設計としているためしかたのないところだ。
もちろんコントロールリングは機能を割り当てて使うものなので、割り当てていた機能はボディの他のダイヤルなどで操作は可能だ。あくまでも共通した操作という意味では違いが発生するということだ。
DLOによるレンズ補正の適用は4種類
そしてレンズ補正。キヤノンRFマウントに正式対応しているため各種レンズ補正が純正レンズと同じように作用する。ただし、使えるのは周辺光量補正、歪曲収差補正、色収差補正、回折補正の4種で、キヤノン独自のデジタルレンズオプティマイザ(DLO)が使えるわけではない。
DLOはキヤノンが独自に用意しているレンズプロファイルが必要なため、社外レンズ用のプロファイルはない。RAWで撮影してDigital Photo Professionalで現像する場合でも、非対応と表示され使うことはできない。キヤノンからのライセンスがどこまでをカバーしているのか分からないが、仮にDLOの利用を許可していたとしても、シグマが専用のプロファイルを作成しなければ適用はできないだろう。とはいえ上記4種の補正が効くだけでも十分だろう。
ちなみに歪曲収差補正に関してはデフォルトでオンになっていて、メニューではグレーアウトされてオン・オフを切り替えることはできない。イマドキのコンパクトなレンズに多く見られる設計パターン、つまりは歪曲収差補正を使うことを前提としたレンズ設計だ。この辺を気にする人もいると思うが、そのおかげでこれだけコンパクトながら大口径で高画質なレンズを生み出せていることを考えると…。
筆者が個人的にも愛用するシグマレンズが、RFマウントに乗り出してきたのは大歓迎。本レンズは焦点域こそ純正とかぶってはいるが、その性格、立ち位置は大きく異なるもので、純正にない部分を埋めてきている点は大きく評価したい。また画質も高く、とかくワイド側が弱いとされるAPS-Cを本格的に使っていくためにはぜひとも欲しいレンズだ。