パナソニック LUMIX S1RⅡとS1R、S5Ⅱの主な仕様

LUMIXでは初となる8K動画撮影機能を搭載

今回はカメラと同時に専用のバッテリーグリップDMW-BG2(防塵・防滴・耐低温仕様)も発売される。カメラ本体とバッテリグリップの合計3つのバッテリで運用でき、USB-SSD記録時など電力を使うシーンでは、カメラとグリップから同時給電させることも可能だ。
が、バッテリー蓋のパッキン具合を見てみるとニコンやキヤノン、OMなどのような軽い水没に耐えるくらいの気密性までは考慮されていない印象。どちらかと言えば動画用の電源システムなのだろう。ということで濡れた場所に直置きなどの部分的な水没となるような現場でやりがちな運用では注意したい。

軍艦部のスリット。S5Ⅱと同様のクーリングシステムを持つ。コチラは排気用のスリット。ちなみにここに雨などの水が入っても平気です。アナログダイヤルには切り替え可能なロックスイッチを装備している。
またLUMIXシリーズで初となる8K動画に対応したこともトピックのひとつ。8K30P対応ということで、予想がある程度できてしまうが、新開発の4430万画素裏面照射CMOSセンサー採用によって高速性と高画素を両立したとのこと。
各社8Kに対応するために有効約45MP程度のセンサー(DCI8Kは長辺8192ピクセルなので、3:2のセンサーでは短辺5462ピクセルとなるため)を採用しつつ高速も両立という難しい課題を満足させるために積層センサー採用がトレンドとなりつつあるけれど、本機は性能とコストバランスの最適化を狙ったのか、積層タイプではない。S5Ⅱなどと同様に像面位相差AF(以下PDAF)に対応となった。
メカシャッターによるAF追従高速連写では最高約10コマ/秒、電子シャッターによる超高速連写では約40コマ/秒と、なかなかの高速性を達成している。読み出し速度は公表されていないけれど、8K60pには対応しないことと超高速連写のコマ速から、ざっくり1/45秒前後の読み出し速度と予想される。

EVF下に配置されたスピーカー。ここから電子音(レリーズ音など)が発せられる。ニコンZ9と同じ位置だ。響き方はボディサイズの都合かZ9の方が若干好きだが、本機も自然な位置で電子シャッター時のレリーズ音が聞こえるので良い感じ。アイピースがネジ止めになったことは少し残念。というのも、アングルファインダーなどのアクセサリー装着が難しくなるからだ。
ボディ内手ブレ補正の効果はレンズにもよるが、最高で中央8.0段・周辺7.0段。この強力なボディ内手ブレ補正機構を活かし、手持ちハイレゾも可能となった。
先に答え合わせとなるが、OMシリーズほど安楽かつ幅広いシーンで手持ちハイレゾを楽しめるほどの機能ではなかった。処理時間も思ったよりかかった(計測メモ紛失…スイマセン)し、OM-1などのように接写シーンでも使える、的な期待は禁物だ。
S5系と並ぶ小型&軽量ボディを達成

従来機より大幅にコンパクト化を達成、外観はS5Ⅱの面影を感じさせる。S1R(脅威の約1016g!)と比べて約221g軽くなった。手に持った感じはスペック上の約800g弱というイメージより軽く感じられた。
背面モニターは3軸チルトからS1HやGH7などと同じチルトフリーアングルに。指掛かりに配慮された細部形状となっているけれど、質感はそれなり、というのが正直な感想だ。
第一印象はコンパクト。グリップ形状も、手の大きな(手袋サイズはLL~3L)筆者でも握り心地が良く、すごくシックリ来る感がある。小指を余らせるような持ち方をしても、小指までしっかり握り込んでもどちらでも感触は良かった。

ボディ背面グリップ側の角が丸められているが、この辺りの処理はニコンなどのほうが上手な印象。とは言え、S5シリーズなどと比べて明確にアタリが柔らかく、手のひらに刺さらないところは良い。角を丸めると内部はクリアランス的に狭くなるので、ここは内部での陣取り合戦。デザインと設計でのせめぎ合いを感じるところだ。
アナログダイヤル類は少しグラグラするが、スイッチ機構を組み込んでいることなどを勘案すると頑張っている感じだ。ちなみにα9 Ⅲなどもグラグラでっせ。
気になったのはボディ前面にあるFnボタンの配置。筆者の手のサイズだとグリップ時に中指がどうしても接触してしまう。また、机に置いたカメラを上からグリップの雪庇(=張り出し)部分に指を引っ掛けて持ち上げる際にもボタンが指に当たり、「おっと」となってしまう。
初代の「無敵なまでの上質」には及ばす…時代か?

ボディの剛性「感」はフラッグシップ機としては少し物足りなく感じた。S5シリーズと比べてマウント剛性は高く感じられるけれど、従来のS1シリーズよりは「疎」というか、振動の減衰がスカスカな感触が手に伝わるところが少し気になった。
EVFは高精細で表示クオリティも高いが、眼と表示デバイスの距離が少し近く感じられ、長時間眺めていると眼が疲れやすい。眼に刺さるような光の質、と言えばイメージしやすいだろうか?
また視度調整を近視側にすると周辺が糸巻き形状に歪むことも気になった。サイズとの兼ね合いなのかも知れないが、EVFはS1のほうが筆者は好みだ。
レリーズ感についても同様で、S1の柔らく上質な感触からS5系のガチャガチャした感触になった。いわゆる「メカの良さ」が失われてしまったが、これも時代なのかも知れない。
AF性能は“劇的に”向上!…あくまで同社比ね
まずはAF性能からチェック、ということで鉄道模型と動物園で撮影してみた。
驚いたことに、S5ⅡやG9ProⅡで全く歯が立たなかったEV5未満のシーンであっても本機はヘッチャラ。低照度・低コントラストシーンでの被写体認識性能が非常に大きく改善されたほか、木漏れ日シーンのような連続的に輝度変化があるシーンでもAF-Cの追従性はとても安定していた。
●AF-C 低照度シーン

S5ⅡなどでAF-Cや被写体認識が満足に動作しなかったEV5以下のシーンでもヘッチャラ!!ここがダメなら嫌われる覚悟でしこたま扱き下ろしてやろうと思ってましたが、杞憂でした。ハイブリッドズーム併用中はDFD(コントラストAF)で動作しやすいような気もしましたが、DFDでもピント精度はバッチリ。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 MACRO O.I.S. 絞り優先AE(F6.3 1/320秒) WB:オート ISO20000 ハイブリッドズーム利用 Mサイズ 換算340mm時

暗所&低こういう暗所&低コントラスト条件だとS5ⅡだとAFで撮れなかったのだけど、S1RⅡなら撮れます。ま、α6700とかなら苦も無く撮れるのだけど、シーンによっては話にならない性能だったところから豪快に進歩していて感動しました。このシーンだけで言えば体感でX-T5よりも良い感じ。ここまでの実力であれば他社機(キヤノンやソニー)と比べてもガッカリしないレベルです。勇み足で「α7IVと比べても同等以上のAF」って評価しても良さそう。あ、なんかこのページだと縮小率の問題か画質が悪く見えますが、元画像はもうちょっと良い感じですよ。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 MACRO O.I.S. 絞り優先AE(F5.6 1/250秒) WB:オート ISO25600 ハイブリッドズーム利用 Mサイズ 換算420mm時コントラストシーンでも点滅にならず他社機(キヤノンやソニー)と比べてもガッカリしないレベルで動作します。α7 IVと比べても同等以上と言って良いAF性能です。
●AF-C 輝度差の大きいシーン

被写体認識中に輝度差変化のあるシーンでも追従性と正確性はS5Ⅱ/G9Ⅱ比で大きく改善されています。人物AF以外のアルゴリズムはG9Ⅱからブラッシュアップ程度という話でしたが、全然違うね。大事なことなのでもう一度言いますが、全然違う。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 MACRO O.I.S. 絞り優先AE(F5.6 1/250秒) WB:オート ISO25600 ハイブリッドズーム利用 Mサイズ 換算420mm時
また、画角内がゴチャついたシーンではLUMIX機はAF開始までに3~5秒程度考え込むという悪いクセがあったが、それもまた大幅に改善。この実力であれば安心して使うことができそうだ。
このポジティブな印象は動物(園)シーンでも同様で、急に飛び出てきた際の認識やAF精度も良く、木漏れ日などの外乱に対しても安定したAFで応えてくれた。
またFnボタンの割当機能に、至近優先AFなどがあり、上手く機能するシーンでは撮影が非常に快適になったことは素晴らしい。
●AF-C 障害物が被写体に被るシーン

障害物が被写体に障害物が被写体にカブるシーンでも、被写体認識の追従性とピント精度は安定していました。イジワルなことを言えば、他社機ですでに出来ていることが本機でも出来るようになったという段階だけどね。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 MACRO O.I.S. 絞り優先AE(F5.6 1/800秒) WB:オート ISO320被るシーンで、被写体認識の追従性が向上している感じでした。

こういうシーンは「まぁまぁ」って感じ。多少の努力は必要ですが、初回AFを遠方からスタートさせればかなりの頻度で瞳検出&追従しました。が、そのまま撮影していると檻を拾いやすいことも事実で、一度拾っちゃうと瞳にAF検出しててもピントは檻です。
■LUMIX S 70-300mmF4.5-5.6 MACRO O.I.S. 絞り優先AE(F5.6 1/500秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO1000 ハイブリッドズーム利用 Mサイズ 換算420mm時
直接比較したわけではないが、感触としてはキヤノン EOS R6と同等以上と言って良さそうだ。これなら一般的なシーンでAFに不満を感じることはあまりないだろう。S5Ⅱから一足飛び以上の進化を見せたことは本機一番の驚きだった。
一応言っておきます。本機がトップエンドモデルだからといって、ソニーとかキヤノンの上位モデルとスポーティなシーンでAF性能比べるモノ好きは居ないですよね? そういう比較は野暮ですよ。あくまで一般的な撮影シーンにおいて同じ土俵に上げても大きな不満がないくらいにまでブラッシュアップ出来ていることを称賛しています。
動きの激しいスポーツなどの撮影は、撮って撮れないことはないけれど、他社機の実力を考慮すると「厳しそう」という評価が下ります。
とはいえ無理させなきゃとても良い子で、以前のLUMIX機と比べて無理の範囲がだいぶ小さくなっている感じ。
念の為確認してみたところ、イメージセンサーの特性に合わせた専用のチューニングと、新しく背景抜けしにくくなるようなアルゴリズムを採用しているので、シーンによっては性能向上しているとのこと。2023年2月のS5Ⅱ発売から2年で大きく進歩できていて、そんでもって良い感じのAFに成長しているから、今後が楽しみ。