昨今、各社から投入されるミラーレス上位機が「けっこうなお値段」ということもあり、なぁーんか相対的に「身近」になった感のあるライカ。そう、無理すれば買えないこともなくもない…(買わないけど)。ということで、今さらライカ/今からライカ。最新機種であるライカ M11を河田一規氏がレビューしますー。 

「フィルムのM型」並みに軽量化(ただしブラックのみ)

画像: ベース感度はM10のISO100からISO64になった。大口径レンズを開放で使いたい場合などには最高1/16000秒の電子シャッターと合わせて有利に働く。あるいは大型ストロボを使うときに、出力を一番下げてもまだ光量が大きすぎて困る場合にも多少の寄与がある。いや、それよりも過去にコダクロームを使っていた人ならISO64というスペックそのものにニヤニヤが止まらないはず。ある意味、コダクロームに対するオマージュ的な。ダイヤル上の最高ISO感度は6400だが、設定そのものは最高ISO50000まで可能。ダイヤルの「M」位置には任意の好きな感度を設定することができる。

ベース感度はM10のISO100からISO64になった。大口径レンズを開放で使いたい場合などには最高1/16000秒の電子シャッターと合わせて有利に働く。あるいは大型ストロボを使うときに、出力を一番下げてもまだ光量が大きすぎて困る場合にも多少の寄与がある。いや、それよりも過去にコダクロームを使っていた人ならISO64というスペックそのものにニヤニヤが止まらないはず。ある意味、コダクロームに対するオマージュ的な。ダイヤル上の最高ISO感度は6400だが、設定そのものは最高ISO50000まで可能。ダイヤルの「M」位置には任意の好きな感度を設定することができる。

ライカM11のもうひとつの大きなトピックは、ブラックボディに限りトップカバーにアルミ合金を採用することで約110gも軽量化し、フィルム時代のM型と同じくらいの重さになったこと。

たしかに前モデルのM10は薄型化はされたけど、明確に重くてフィルムのM型を長く使ってきた人にとってはちょっと違和感を覚える部分であり、実際にもっと軽くして欲しいという声も多かったそうだ。

画像: バルナックライカ、そしてフィルムM型から連綿と続いてきたベースプレート取り外しスタイルを終わらせ、バッテリーにダイレクトにアクセスできるようになった。また、ボディ右手側底面にはUSB-C端子が新設された。このUSB-C端子はカバーなどない、漢らしいネイキッド仕様なのがすごい。こうしたもろもろの変更もあって、底面の見た目はM10までに比べるとシンプルさがやや後退している。

バルナックライカ、そしてフィルムM型から連綿と続いてきたベースプレート取り外しスタイルを終わらせ、バッテリーにダイレクトにアクセスできるようになった。また、ボディ右手側底面にはUSB-C端子が新設された。このUSB-C端子はカバーなどない、漢らしいネイキッド仕様なのがすごい。こうしたもろもろの変更もあって、底面の見た目はM10までに比べるとシンプルさがやや後退している。

もちろん、軽くなったといっても手応え的に軽すぎるわけではなく、ボディサイズに対して適切な重さに戻ったという印象。ただし、この軽量化はブラックボディのみ。シルバーボディのトップカバーは真鍮製であり、重さはM10とほぼ同じだ。逆に軽さよりも重厚感を求める人にはシルバーの方がいいかもしれない。

ボディ関係でもうひとつの大きな変更点は、取り外し式のベースプレートがついに廃止されたことだ。
ライカを使ったことがない人はピンとこないと思うが、ライカのレンジファインダーカメラはバルナック式の昔からベースプレート(底ブタ)を外し、下からフィルムの出し入れを行う方式を採用していた。

画像: バッテリーはすぐ横にあるレバーを動かすとピョンと頭だけ飛び出す仕組み。さらに少し押し込むと外せるようになるセーフティロック機構付き。このイジェクトレバーの操作感はまさに「ドイツ製工業製品ならではの剛性感」という素晴らしい手応えが。バッテリーそのものがバッテリー室の蓋を兼ねており、ラバーパッキンによって防滴性能も担保されている。バッテリーはM10用よりも容量がアップした7.4V/1800mAhを採用し撮影可能枚数はCIPA基準で700枚を実現。新設されたUSB-C端子を使った充電と給電にも対応する。

バッテリーはすぐ横にあるレバーを動かすとピョンと頭だけ飛び出す仕組み。さらに少し押し込むと外せるようになるセーフティロック機構付き。このイジェクトレバーの操作感はまさに「ドイツ製工業製品ならではの剛性感」という素晴らしい手応えが。バッテリーそのものがバッテリー室の蓋を兼ねており、ラバーパッキンによって防滴性能も担保されている。バッテリーはM10用よりも容量がアップした7.4V/1800mAhを採用し撮影可能枚数はCIPA基準で700枚を実現。新設されたUSB-C端子を使った充電と給電にも対応する。

画像: SDカードスロットは電池室にあるため、カード交換時はバッテリーを抜く必要があるが、それでもM10までのベースプレート脱着式に比べると100倍はアクセスが楽だ。ちなみにライカM11は64GBの内蔵メモリーを搭載しているため、SDカードを入れなくてもかなりの撮影が可能。また、SDカードスロットはシングルだが、内蔵メモリーを活用することで同時記録やJPEGとRAWの振り分け記録など、まるでデュアルスロット的な記録方式にも対応する。

SDカードスロットは電池室にあるため、カード交換時はバッテリーを抜く必要があるが、それでもM10までのベースプレート脱着式に比べると100倍はアクセスが楽だ。ちなみにライカM11は64GBの内蔵メモリーを搭載しているため、SDカードを入れなくてもかなりの撮影が可能。また、SDカードスロットはシングルだが、内蔵メモリーを活用することで同時記録やJPEGとRAWの振り分け記録など、まるでデュアルスロット的な記録方式にも対応する。

この仕組みはデジタルのM型でも継承され、M10まではバッテリーとSDカードを交換するためにはベースプレートを取り外して行う必要があった。しかし、M11ではこの太古から継承された儀式的な作法とついに決別。バッテリーをダイレクトに出し入れできるようになった。

個人的な感想を言うと、心情的にはベースプレート取り外し式も決してキライじゃない(ライカを使ってる!という気になるので)が、利便的にはダイレクトアクセスの方が劇的に楽で早いのは確か。

SDカードスロットはバッテリー室にあるのでSDカード交換時にはバッテリーを外す必要はある。が、バッテリーはライカQ2とかライカSL2などと同じく、レバーの操作で簡単にイジェクトできるので、こちらもM10までより遥かに簡単にアクセスできる。

レンジファインダー時も撮像素子測光

画像: ライカM11はAppleの「Made for iPhone and iPad」(いわゆるMFi)の認定を受けており、付属のLeica FOTOSケーブル(UAB-C→Lightning端子)を使ってiPhoneやiPadと連携。画像の転送等を行うことができる。このケーブルはご覧の通りメッシュ仕上げで質感もなかなか良い。もちろん、USB-C→USB-Cケーブルを使えばAndroidスマホ/タブレットでも同様のことが可能。しかし、AndroidスマホであるLeitz Phone 1を販売しているライカがMFiの認証を受けるとは…。

ライカM11はAppleの「Made for iPhone and iPad」(いわゆるMFi)の認定を受けており、付属のLeica FOTOSケーブル(UAB-C→Lightning端子)を使ってiPhoneやiPadと連携。画像の転送等を行うことができる。このケーブルはご覧の通りメッシュ仕上げで質感もなかなか良い。もちろん、USB-C→USB-Cケーブルを使えばAndroidスマホ/タブレットでも同様のことが可能。しかし、AndroidスマホであるLeitz Phone 1を販売しているライカがMFiの認証を受けるとは…。

その他の変更点としては光学ファインダー使用時の測光方式変更がある。M10ではシャッター幕に反射した光を専用センサー測光していたが、M11では撮像素子そのもので測光する仕様となり、ボディ内部下側にあった測光専用センサーが廃止された。

これにより、M10まであったシャッター先幕の白い反射塗装がなくなって黒一色のシャッター幕になっている。また、この仕様に伴い、電源オン時は常にシャッター幕が開いて撮像素子が露出するが、電源オフでシャッター幕が降りるのでレンズ交換時は電源を切ったほうが良さそうだ。

画像: 背面のサムレスト位置にある電子ダイヤルは従来機種でも存在していたが、M11では新たにプッシュが可能になり、様々な機能を割り当てられるファンクションボタンとしても機能する。割り当てる機能は長押しプッシュで候補表示され、すばやく機能を変更することが可能。他の多くのカメラのように、メニューから割り当て機能を選ぶ方式よりも柔軟な運用が可能だ。

背面のサムレスト位置にある電子ダイヤルは従来機種でも存在していたが、M11では新たにプッシュが可能になり、様々な機能を割り当てられるファンクションボタンとしても機能する。割り当てる機能は長押しプッシュで候補表示され、すばやく機能を変更することが可能。他の多くのカメラのように、メニューから割り当て機能を選ぶ方式よりも柔軟な運用が可能だ。

画像: ボディ上面にはファンクションボタンを装備。実はTyp240でも同位置にボタンがあったのだが、M10で廃されてしまった経緯がある。デフォルトではライブビュー撮影時に押すと画像が拡大表示されるフォーカスボタンとして機能するが、違う機能を割り当てることも可能。この位置と形状はライカM2等にあったフィルムカウンター指標を彷彿とさせ、ライカの遊び心が感じられる。

ボディ上面にはファンクションボタンを装備。実はTyp240でも同位置にボタンがあったのだが、M10で廃されてしまった経緯がある。デフォルトではライブビュー撮影時に押すと画像が拡大表示されるフォーカスボタンとして機能するが、違う機能を割り当てることも可能。この位置と形状はライカM2等にあったフィルムカウンター指標を彷彿とさせ、ライカの遊び心が感じられる。

さらに言うと、電源オン時に常にシャッターが開いているということは、シャッターを切った時に一旦シャッター幕を閉じてから露光開始というシーケンスになる。つまり、M10までのM型ライカ(ライブビュー時以外は常にシャッターが閉まっている)に比べるとレリーズタイムラグがやや大きくなってしまうという懸念がある。

実際に光学ファインダー使用時のレリーズタイムラグはM10より大きくなっているそうだが、そのラグはライカSL2などと同じくらいなので実用的に大きな問題はない(はず)という。

画像: LEICA M11という機種名が入るのはこのアクセサリーシューのみ。シュー奥には外付けEVFのビゾフレックス用接点が見える。

LEICA M11という機種名が入るのはこのアクセサリーシューのみ。シュー奥には外付けEVFのビゾフレックス用接点が見える。

実際に使ってみた感じも特にラグが大きいという実感はないものの、一眼レフのようにミラーを上げる必要がないレンジファインダー機ならではの、レリーズと同時に間髪入れずにシャッターが切れる感触がちょっと薄れたのは残念ではある。

それなら先幕電子にすればいいのでは?と思ったが、M11では先幕電子シャッターは選べない。先幕電子シャッター特有の問題点(高速シャッター時のボケ欠け等)を嫌って、あえて搭載していないのだと思われる。ただし完全な電子シャッターは可能で、その際は最高1/16000秒の高速シャッターが使えるので、ISO64のベース感度と合わせれば明るい屋外で絞りを可能な限り開けたい時などに便利だ。

画像: 上面の景色はM10とほとんど変わらない。ブラック仕上げは一見するとブラッククロームのような艶感の少ない色調だが、これはブラッククロームではなく、ペイント仕上げ。本文中にも記したとおり、ブラックボディのみはトップカバーがアルミで軽量化されている。シルバーボディは昔ながらの真鍮トップカバーなので好みで選べる。

上面の景色はM10とほとんど変わらない。ブラック仕上げは一見するとブラッククロームのような艶感の少ない色調だが、これはブラッククロームではなく、ペイント仕上げ。本文中にも記したとおり、ブラックボディのみはトップカバーがアルミで軽量化されている。シルバーボディは昔ながらの真鍮トップカバーなので好みで選べる。

画像: 液晶モニターは230万ドットでsRGBカバー率100%の広色域タイプで、タッチ操作にも対応する。無駄が全くない、操作部材の少なさが清々しい。「本当に必要なモノはなにか?」ということを真摯に追求するライカの姿勢は本当にリスペクトできる。

液晶モニターは230万ドットでsRGBカバー率100%の広色域タイプで、タッチ操作にも対応する。無駄が全くない、操作部材の少なさが清々しい。「本当に必要なモノはなにか?」ということを真摯に追求するライカの姿勢は本当にリスペクトできる。

「トリプルレゾリューションテクノロジー」を検証してみた

前述したとおり、ライカM11では画素数を6030万画素・3600万画素・1800万画素の3種類にサイズ設定でき、JPEG時だけでなくRAW(DNG)もサイズを選べる。また、RAW+JPEG時はそれぞれのサイズを個別に設定可能だが、RAWより大きなサイズのJPEGは設定できないという仕様になっている。

最近はRAWの画素数を変えられるカメラも増えてきているし、単に画像サイズを変更できるだけならそんなに大きなメリットはない。しかし、M11では3600万画素、1800万画素にしたときはピクセルビニング(画素結合)が行われてダイナミックレンジが良くなるとアナウンスされている。これは素晴らしい。もし、本当にそうなら非常に大きなメリットであり、自分なら間違いなく画素数を下げて使うだろう。

そこで、画素数を変えたときにどれくらいダイナミックレンジが変化するのかを確認すべく、輝度差の大きいシーンを中心に画素数を変えて何度か試してみた。…が、ハイライト側、シャドー側共にどうしてもダイナミックレンジの違いが実感できなかった。ムムム。

ただ、これは画素数を変えても、いわゆる画作りは共通(ガンマカーブとか)なので違いが分からないだけなのでは? 8bitのJPEGはともかく、RAW画像なら実は潜在的にレンジが確保されていて、ピクセルビニングの効果が分かるはず! と考え、RAW画像現像時にハイライトとシャドースライダーを大きく振ってレンジ幅に違いがあるのか探ってみた。

画像: こちらが補正前の元画像。ハイライトの階調を損なわないよう、意図的にアンダー気味に撮影している。右はPhotoshopのCamera Rawを使ってRAW現像を行う際の設定。潜在的なダイナミックレンジの違いを引き出すため、ハイライトはマイナス100、シャドーはプラス100に設定して画像サイズによるダイナミックレンジに違いがあるのかを見てみた。

こちらが補正前の元画像。ハイライトの階調を損なわないよう、意図的にアンダー気味に撮影している。右はPhotoshopのCamera Rawを使ってRAW現像を行う際の設定。潜在的なダイナミックレンジの違いを引き出すため、ハイライトはマイナス100、シャドーはプラス100に設定して画像サイズによるダイナミックレンジに違いがあるのかを見てみた。

画像: 左が6030万画素で、右は1800万画素。ハイライト部、シャドー部共に明確な差は見られない。もちろん両画像ともマニュアル露出で絞りとシャッター速度、ISOは固定して撮影している。

左が6030万画素で、右は1800万画素。ハイライト部、シャドー部共に明確な差は見られない。もちろん両画像ともマニュアル露出で絞りとシャッター速度、ISOは固定して撮影している。

画像: こちらは夜景で試してみたパターンの元画像。

こちらは夜景で試してみたパターンの元画像。

画像: こちらも画像左が6030万画素、右が1800万画素。赤い灯の部分の階調をハイライト調整でどれだけ戻せるか試してみたが、6030万画素、1800万画素のどちらもマイナス56でトーンジャンプが顕著に見えだし画像サイズによる優劣は感じられない。仮に1800万画素のほうがより豊かな階調を内包しているのであれば、トーンジャンプするハイライト値は異なるはずなのだが…。また、シャドー部についてはどちらもプラス100まで振り切ってみたが、こちらも差は感じられない。

こちらも画像左が6030万画素、右が1800万画素。赤い灯の部分の階調をハイライト調整でどれだけ戻せるか試してみたが、6030万画素、1800万画素のどちらもマイナス56でトーンジャンプが顕著に見えだし画像サイズによる優劣は感じられない。仮に1800万画素のほうがより豊かな階調を内包しているのであれば、トーンジャンプするハイライト値は異なるはずなのだが…。また、シャドー部についてはどちらもプラス100まで振り切ってみたが、こちらも差は感じられない。

…が、最も差が出るはずの6030万画素と1800万画素で比べて(もちろん同一被写体、同一露出)も、残念ながら有意な違いは見いだせなかった。
この結果から、現状では画素数を下げて使うメリットはあまりなさそうだ。ダイナミックレンジで明確な違いがないのであれば、トリミング耐性などの点で高画素であることの方がメリット大と考えられるからだ。

ただし、現状ではピクセルビニング時の画処理があまり上手く行えていないだけという可能性も大きい。もし将来的にファームアップなどでこれが最適化されれば画素数を下げて使う意義は大いにある。

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