「そうきたか!」「嬉しいじゃないか!」「おでこに安堵…」「相変わらずコンパクト!」…不安から歓喜へ…。ついに本格始動した"OM SYSYTEM”のフラッグシップを、赤城耕一氏がテスト!
実に「甘酸っぱい」ネーミングだ
「OM-1」と聞いただけで血湧き肉躍るじゃないけど、どうしても必要以上に過剰反応してしまう筆者であります。1972年に登場した、オリンパスOM-1は小型軽量、かつ膨大な交換レンズやアクセサリーが用意された、本格派のシステムフィルム一眼レフ=いわば栄光の名機と言っても過言ではない存在でした。
筆者は、このOM-1を改良し、1979年に発売されたOM-1Nを発売と同時に購入、43年を経た今日に至るまで長く愛用しています。この間、数回のオーバーホールはしていますが一度も大きな故障はしておらず、個人的には強く信頼しているカメラです。
フィルム一眼レフのオリンパスOM-1はそもそも、それまでの一眼レフの欠点である大きい、重い、シャッターの作動音、ショックの大きさと言った部分を克服した画期的な小型一眼レフカメラでした。
今回登場したOM SYSTEM OM-1は、高性能を追求せんがために肥大化したミラーレス機の中で、常識を覆す小型軽量高性能ミラーレス機として登場したことで、同名を冠する称号を与えられたのでしょう。筆者の年代だとこのネーミングには混乱してしまいそうですが、正統派の写真表現者は素直に受け入れることができるでしょう。銘板には「OLYMPUS」の称号も残されています。
サイズ感はそのままに、中身はマッタクの別物!
デザインは従来のOM-D E-M1 MarkⅢやE-M1 Mark Xのそれを踏襲しているところもありますが、より精悍な印象で凝縮感も増しました。一見すると変化なさそうですが右手でグリップした時の感覚はまるで別ものカメラです。これには手が驚きます。
もちろんフォーマットサイズはマイクロフォーサーズ。新しい有効約2037万画素の裏面照射積層型のLive MOSセンサーが搭載されています。受光面積が増えたことで、ダイナミックレンジの拡大と高感度性能の向上を実現したことが特徴とアナウンスされています。
画素数はおとなしいようにも思いますが、画質の向上は軽い試し撮りをしただけでも認識できるほどなのです。
常用最高感度はISO 6400からISO 25600に、最大設定感度はISO 25600からISO 102400にそれぞれ拡大されています。手ブレ補正は、レンズと協調した場合の5軸シンクロ補正での最大補正能力が8段分とされており、星景さえも手持ちで撮れるのではないかと思わせるほどです。
「手持ちハイレゾショット」「ライブND」といった撮影モードを、メニュー画面の「コンピュテーショナル撮影」に集約。ライブNDの効果もND32相当からND64相当に拡大したことで日中晴天下でも長時間露光を可能としました。
高速連写性能は十分にして持て余すほど…
AFシステムは、1053点オールクロス像面位相差クアッドピクセルAF。
クアッドピクセルAFとは、イメージセンサーのフォトダイオードを4分割する構成で、縦横の両方で位相差情報を取得できるのが特徴とされています。
AFの動作と高速のコマ速度による撮影の印象、精度はじつに素晴らしく、これだけでも従来のOM-D系カメラに不満を抱いている人は買い換える意味があるとはっきり言い切れます。
OM-1ではブラックアウトフリーで同50コマ/秒に対応しています。AF/AE固定では120コマ/秒の連写が可能ですが、この場合はどうやって、適宜なコマを選んだら良いのか筆者には現時点ではわかりません。
メカシャッター撮影時連写速度は最大10コマ/秒、筆者にはこの程度の撮影スピードがちょうど合っていますし、メカシャッターを残してもらったことでリアルな動作音と感触で撮影を楽しむことができます。とくにポートレート撮影では有効だと思います。
シャッターの設定やコマ速度は条件や好みで使い分けろ、ということなのでしょう。ただ、静音撮影(電子シャッター)時のローリング歪みはかなり解消されています。
過去に遡って撮影可能な「プロキャプチャー」も連写速度が60コマ/秒から120コマ/秒になりました。
このあたりの先進機能は動画技術からの応用もあるのでしょうが、昆虫や鳥の飛翔の撮影ではより精度の高い撮影が可能だそうです、筆者は虫とかは弱含みですので、ありがたみはよくわからないのですが…。
従来からの課題であったEVF、LCDともに強化!
EVFは576万ドットOLEDで、その細やかさはOVFに負けていません。遅延も感ないし、違和感を感じさせないクリアさがあります。ファインダー倍率は0.83倍と大きいことも好印象です。背面モニターは162万ドットですから、撮影画像の確認や、合焦点の見極めがしやすくなっています。
バッテリーは新しくなり撮影可能枚数は通常設定で520枚とありますが、今回試用しただけでも公表値よりも保ちは良い印象でした。USB Type-C端子を使い、モバイルバッテリーからの充電も可能です。
重量は599g(充電池、メモリーカード含む)と、従来よりわずかに重いという程度でしょうか。しかし交換レンズの大きさや重量を考えれば、とにかく携行がラクで、負担が軽減できることは間違いないでしょう。
そして今回、大幅な画質向上が行われたことを考えると、35mmフルサイズやAPS-Cフォーマットのミラーレス機との画質比較も騒がれることでしょう。
が、それよりも、どこへでも持っていくことができる小型軽量ならではのOM-1の有利な点を生かし、他のカメラではできない高画質の写真が制作できるのではないかと夢が持てるのです。
「肥大化」が進む他社ミラーレスとは一線を画す存在
繰り返しますが、外観からは特別で新鮮な印象を受けないこのOMSYSTEM OM-1ですが、ファーストインプレッションでは従来とはまったくの別もののカメラであると強調しておくことにします。
ただし、これは贅沢な悩みかもしれませんが、あまりにもAFの被写体認識が優れていること、高速コマ連写を可能としたことで、筆者自身が頑張って撮影しているんだ、という手応えが希薄になることです(笑)。
あらためて先進機能には驚かされますが、撮影者の経験不足や難しい条件で困難とされた撮影条件でも確実にモノにできるのではないかと期待に胸がふくらみます。これ、新型のカメラとしてとても大切なことです。
でも筆者が一番嬉しかったのは、OM-D E-M1 MarkⅢから引き継がれたサイズ感、重量感が踏襲されたことです。携行性、収納性と画質のバランスをみて、これらをトータルで考えると、OM-1はマイクロフォーサーズ規格による特性をフルに出し切っているいう印象を持ちました。
これまた繰り返しになりますが、35mmフルサイズの多くのミラーレス機が性能追求のあまりに、ボディもレンズも肥大化しすぎている現状を考えるに、このOM-1はとても魅力的にみえるのです。