■文・写真/杉山 慧
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吾妻線 羽根尾~袋倉
吾妻線は草津や万座といった温泉地へのアクセス路線であるが、山深い終点に向かうほど列車の本数が少なくなる。特急「草津」の入線は長野原草津口までで、そこから大前までは211系の普通列車のみで運転されている。
作例は白根山の見えた日、211系のステンレスボディが光る半逆光の光線で撮影したもの。線路と並行するように国道が走っているため、手前の木々で隠している。秋の紅葉も美しいが、画面左側の森が影に沈むため昼頃の列車を狙った方が良いだろう。
羽根尾駅前から軽井沢方面へ抜ける国道146号に入り、ヘアピンカーブを抜けた左側に駐車スペースがあるので車はそこに止める。ヘアピンカーブの外側に向かって分岐する道があり30m程進むと左側の森に上がっていく幅2mほどの獣道がある。獣道を3分程度進むと左側の斜面に上がる別の獣道が出現する。この獣道に入ってすぐ道なりに左に曲がり、1分程歩くと墓地がある。墓地の下の藪をかき分けると、国道146号の上方にある法面の上に立つことができ、吾妻線を見下ろせる。
東北本線 豊原~白坂
東京から関東平野を北上してきた東北本線は那須高原を越えて、いよいよ東北地方に入る。那須連山をバックに撮影できるのが、栃木県と福島県の県境付近だ。
作例はEH500形の貨物列車で運転頻度も高いが、一方で旅客列車の本数は少なく、定期列車では普通列車のみが運転される。
豊原駅方面から進んで来て、集落が始まったあたりで右折する道に入ると道の北側に鳥居がある。階段をあがって鳥居をくぐると御堂があり、その裏手から獣道が延びている。それほど急な道ではないが、植物の生長が凄まじく、藪や蜘蛛の巣をかきわけながら進んでいく。途中、電線を越えたらほどなくして線路方向に斜面が開けた場所が撮影地で、鳥居からは10分程を要する。ここからは作例のほか、県境にかかる黒川橋梁を渡る列車を撮影することも可能。
中央本線 四方津~梁川
中央本線は高尾から甲府盆地まで急勾配と急カーブが続く険しい山岳路線である。複線でありながら上下線の離れた所謂「セパレート区間」も多いのもこの区間の特徴である。特急列車は近年E353系に統一され、おおよそ30分間隔で走っている。普通列車は長野色の211系か都心直通のE233系で運転される。
作例はE353系の上り特急「かいじ」だ。画面の下には下り線の鉄橋があり、一緒に写すこともできるが全体のバランスを考えて、構図から外している。
四方津駅のすぐ西側で線路をくぐり、線路を挟んで駅舎の真南の位置にT字路がある。このT字路を南に向かい、坂を下って桂川の橋を渡ると上り坂に転じる。橋から750m進むと防火水槽がある。防火水槽の手前で左上に向かって分岐する細い道があるのでそちらへ入り、最初のT字路を左折し150m程進むと撮影地だ。なお、撮影地付近に駐車はできないので、防火水槽のある分岐から100mほど下がったところにある火の見櫓のある広場に駐車しよう。
撮影・解説:杉山慧
1992年11月、静岡県出身。幼少期より鉄道に興味を持ち、日本大学芸術学部写真学科卒業後、ネコ・パブリッシングに入社し月刊誌[レイル・マガジン]の編集に携わる。2017年3月、鉄道写真事務所レイルマンフォトオフィスに入社。2018年12月レイルマンフォトオフィスを退社し、フリーの鉄道写真家として独立。独立後は月刊誌[鉄道ジャーナル]での写真撮影や原稿執筆のほか、レンズメーカー「タムロン」主催するに「タムロン鉄道風景Instagramコンテスト 2019」で審査員を務めた。