今回はGakuさんをご紹介します。この記事は月刊カメラマン誌に掲載されたものです。
手紙
「なぜインスタグラムでフォロワー数を多く獲得しているか」「何を目的に写真を撮っているか」そのような結論やテクニック的なことを聞き出すお話はしなかった。ただ2つ気になる話がでてきたので記しておきたい。
'09 年にお子さんが生まれて一眼レフを買ったGaku さんは、せっかくだからと写真学校に通って知識を得ようとした。'13 年最初の個展があった直後、彼は離婚を経験。しばらく写真をやるような余裕はなかったという。今回は久しぶりの個展となるが、その間にもグループ展やSNS での活動を通じ、彼は表現力を磨いていたのだろう。自分の撮り方に節度が持てるほどに、彼の撮影は丁寧で見せ方も心得ているように思う。
展示に写る北欧で彼の撮ったものは、どれも静謐な現地の暮らしの姿だ。インスタグラムのアカウントのように揃えられた明るさ、離れてしっかりととらえていく眼差し。そしてどの写真からもその穏やかな空間を見据えていることが写真の中からわかる。
誰かが誰かに出す手紙ではなく、時間が経っても残したいような大切な場所が壁にかかっている。「一般のギャラリーでもなく、このカフェだからこそ旅行先で好きに撮った写真を飾りたいと思ったんです」SNS の投稿より淡々と、しかし丁寧に綴られた手紙のような写真展示だ。
SNSでの軽やかさ
GakuさんがSNS の投稿で気をつけているのは素直に撮られた写真かどうかだという。見栄えを意識しながら、強い感情を抑え、友人や綺麗、大切なものを並べていくことが彼のSNSでのルールのようだ。展示と共通していたのは「空間」を撮るということ。友人と過ごす空間を楽しむように撮り、投稿する。
「写っているのはモデルさんという形ではなく、ほとんどSNSで繋がった写真好きの友人達です」。大切な友人たちとの撮影というSNS から生まれた、しかしリアルな空間。それを明るく軽やかに、一つのメッセージのように見せている。
「展示ではSNS より思い入れの強い写真が出せます。そして時間を作って足を運んでくれるリアルな繋がりが展示にはある。音楽でいうとライブのような価値を残しておきたい」Gaku さんはネットとリアルの両方で、繋がる楽しみを噛みしめるように展示の初日を迎えていた。