注目ポイント
●新開発2037万画素ローパスレスCMOSセンサー
●最新画像処理エンジン「TruePicⅧ」搭載
●AF/AE追従で最高約18コマ/秒の高速連写
●高感度画質の向上
●高速化されたAFとEVFファインダー
●121点全点クロスの測距点
●5000万画素相当の超高解像となるハイレゾショット
●世界最強を謳う手ブレ補正機能
●強化されたタフネス機能
OM-D E-M1 MarkⅡ主な仕様
■有効画素数:2037 万画素 ■画像処理エンジン:TruePic Ⅷ ■ISO 感度(領域拡大):200-25600(ISO LOW:64 相当) ■AF 方式&測距点:コントラストAF +像面位相差AF 121 点(全点オールクロス) ■最高連写速度:AF/AE 追従最高18 コマ/ 秒(電子シャッター) ■測光エリア分割:324 分割 ■手ぶれ補正機構:ボディ内5軸4 モード(最大5.5 段分) ■記録メディア:デュアルSDXC(スロット1はUHS-Ⅰ、UHS- Ⅱ対応)■大きさ(W×H×D):約134.1×90.9×68.9㎜ ■本体重量(本体のみ):約498g
「プロレンズが充実してきたことと、レンズの高い性能を出しきれるボディが評価されました」(青木)
OM-D E-M1 Mark II
「これ本当にAFで撮ったの? MFでしょう」と言われる
【赤城】カメラ開発エンジニアの皆さんは“何としてもカメラグランプリを獲らねばならぬ”とお考えなのかもしませんが、今回の三冠達成という偉業は大きい。しかも投票者49名中47名と、ほとんどがOM-Dに入れていた。12-100mmには49名中38名。コレは凄い。
【高須】満遍なく多くの方に評価をいただいたことは、すごく嬉しいです。初代のOM-D E-M1のときに2票差で大賞を逃してしまって悔しい思いをしたのですが『プロに使っていただける商品』というところにまだ届いてなかったんだと受け止め、そこの悔しさをOM-D E-M1 MarkⅡに全部入れ込もうと作ってきました。
【赤城】OM-D E-M1が出たとき、僕はついに決定打が出たと思いました。本当にこれ以上は要らないと。でも地道に改良された部分がまたすごく評価されて、ハイアマチュアや
プロの愛用者が劇的に増えました。
【青木】システムとしてプロレンズも充実してきたこと、あとはレンズの高い性能を出しきれるボディがやっとできてきた、というところを評価していただいたかと。
【赤城】皆さん、ちゃんとそういう画質を見ている感じはあったんですか。
【青木】はい。ベースの画質に関しては、お客さまは高いレベルの基準を持っていると思います。たとえばOM-D E-M1 MarkⅡで実用感度を上げてきたりしています。
【赤城】昔からけっこう良かった気もしますが。
【青木】もちろんE-M1の時も我々としてはお客様に満足してもらえる描写はできていたと考えておりますが、E-M1 MarkⅡでは高感度の部分でもよりよい画質が達成できていると考えています。
【赤城】E-M1で出力したプリントを見せて、これで撮ったと言うと驚かれたりして…ちゃんと見てなかっただけだろう、と。
【高須】OM-D E-M1 MarkⅡも「本当にAFで撮ったの? MFでしょう」と作例を見て言われたこともあります。
【赤城】食わず嫌いみたいなところもあった気がします。ユーザーが一番評価しているのは、やはりAFとかコマ速ですか。
【高須】いろんなお声はいただいていますが、今までのミラーレスのネガティブな部分を払拭できているところが大きいと感じています。今回、連写といったスピード感を前面に出して訴求していますが、実は基本性能の向上にかなり注力し底上げをしています。お客さまにはそういった部分を評価いただいております。単純なAFやコマ速だけではなくて、使っている操作フローの中ですべて考えられて作っているという印象のコメントをいただけるとすごく嬉しいですし、そういう反響も大きいです。
「OM-D E-M1 MarkⅡは今までのミラーレスのネガティブな部分を払拭できているところが大きい」(高須)
【赤城】時代の発展に加えて皆さんの努力もあるんですが、やっぱりデバイスがすごく良くなってきて、より使えるようになったというのがたくさんある。
【高須】OM-D E-M1を出した当時から、ずっと先を見越してデバイスを仕込んでやってきています。新しいセンサーを含めて、やっとここで今までのネガティブなものを全部払拭できたと考えています。
【赤城】将来的には、たとえばハイレゾももっと動くものを撮れるようになるかもしれないし、いろんな進化がくる可能性もきっとあると見ていますが。
【青木】そうですね。たとえば我々がやっているのでは、電子シャッターの技術にも力を入れています。メカシャッターに対して勝っているところもあれば、まだ足りない部分もあると思っていまして、より進化させる余地が残っていると考えています。
【赤城】プロキャプチャーのアイデアはどの辺からくるものなんですか。
【青木】今回使ったセンサーが幕速としてかなり速くなって電子シャッターでかなりいい写真が撮れるようになったこと、あと画像処理エンジンと組み合わせたときに、今回のような使い方ができるということが分かって搭載しています。
【赤城】E-M1のときに言っていたファインディテールという言い方を今回ぜんぜんしなくなっちゃったじゃないですか。他社が点像補正とか言っていることと同じようなことを多分やられていると思うんですが、もったいない気がして(笑)。急にやめちゃったのかなと思いましたもん。
【青木】すみません、やめてはないんですよ。お伝えしたい機能が多すぎて盛り込めていない状況です。たとえば、強力なダストリダクションは社内では当たり前で伝えていないのですが、ほかのシステムで苦労されている方には驚きなんですよね。
【赤城】使う側もそう。当たり前で大丈夫だと思っていると言わなくなっちゃう。こういう性能は、なんというか機能以上に大きいところですよね。
【高須】オリンパスの開発者はみんな真面目で、レンズの良さにしろ、ゴミがつかないことにしろ、手を緩めないというのが受け継がれています。そこがオリンパスらしさだと思います。お客様の声は真摯に受け止めて、それに対してどうしようかと常に考えています。
【赤城】手ぶれ補正も初号機からもっと高めなきゃいけないという目標だったんですか。
【青木】5軸手ぶれはOM-D E-M5から入れてきて、オリンパスとしての絵を作る重要な要素として、手ぶれ補正は絶対必要な機能になります。その性能を上げれば上げるほどユーザーにとってはいい写真が撮れる可能性が高まります。
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
注目ポイント
●高画質・高倍率と小型化を高い次元で両立したプロフェッショナル高倍率ズーム
●全域F4.0.開放F値が変わらない高倍率ズームを実現
●高速・高精度「FAST AF」を実現するMSC機構
●5軸シンクロ手ふれ補正に対応し、世界最強6.5段分の補正効果
●レンズ先端から1.5cmの近接撮影を実現
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO主な仕様
■レンズ構成:11群17枚(DSA×1、非球面×3、ED×5、スーパーHR×2、HR×1) ■防塵防滴機構 ■画角:84(ワイド)-12(テレ)度 ■最短撮影距離:W=0.15m T=0.45m ■最大倍率:W=0.3倍 T=0.21倍 ■絞り羽根枚数:7枚 ■サイズ・重さ=φ77.5×116.5㎜・561g ■ケース・レンズフード・FRキャップ同梱●価格:15万1200円(税込・オリンパスオンラインショップ価格)
「このサイズでこの高倍率…すべて盛り込みつつ画質は落としていません」(村山)
M.ZUIKO DIGITAL ED 12-100mm F4.0 IS PRO
このサイズに収めて他社で言う小三元2本分の焦点距離
【赤城】今回、レンズと共同にシンクロしてさらに手ぶれ補正効果を上げていますが、10年か20年前か忘れましたけど“手ぶれ補正はレンズ内かボディ内か”という論争があって、両方協力してやれば10段くらい補正できるじゃないかって言ったんですよ、素人はすぐ(笑) 本当にそういうことできると思って言ってないですよ。もしボディ単体なりレンズ単体だったら、そこまでいかないわけですよね。
【青木】今回の手ぶれ補正機構はレンズ側とカメラ側を同時に作っているメリットが最大限出せているんじゃないかなと思います。
【小野】我々がシステムで商品を提供している中で、手ぶれがない画質というのは非常に強いメッセージを出せていると思います。
【赤城】僕も驚きましたけれども、とくにアマチュアの方はみんなすごい驚きますよね。僕はカメラの進化が写真に及ぼす影響というのは、そんなにないんじゃないかと思っていたんですが、機能の進化によってこれまで撮れないものが撮れるようになったという意味では非常に大きい。もちろんオートフォーカスが速くて全部ピントが合っているとかいうのも重要ですが、もっと根本的な部分でデバイスの進化というか…皆さんの技術の発展でこれまでできなかったことが写るようになったというのが本当に大きい。そういった意味で、今回受賞したレンズとボディは本当に一緒に獲ったというか協力しているというか。
【小野】今おっしゃっていただいた『撮れなかったものを撮れるようにする』というのは我々が物を作っていく中ですごく重要なキーワードだと思っています。デバイスの進化、また設計力、物の製造力とか諸々ありますが、ひとつでもそのキーワードを解決していくということは我々全員が非常に強く思っていることです。
【赤城】こんなに高倍率にしないで、もう少し倍率を低くすればもっと性能上がるんじゃないかとか言う人いませんか。
【小野】もちろん検討している中でそういうプランもなかったわけではないですが、いわゆる小三元=絞りF4通しのレンズで我々は何を提供できるかと突き詰めていった結果、そのクラスで高画質を全部カバーしたものを目指しました。実は少し焦点距離を止めたとしても画質的にはそれほど変わらなかったということが見えてきていますし12-100mmという焦点距離は35mm判換算で24-200mm、F4通しでこのサイズ…お客さまにもクリアに分かるスペックです。
【赤城】レンズ設計者として手ぶれ補正機能のユニットを入れないほうが性能を上げられるんじゃないですか?
【村山】高倍率、高画質、小型をすべて達成するという常識を覆す仕様を考えた時に、手ぶれ補正無しでさらに小型にすることも考えました。ただ、さらに…というところで提供できるものがあればと考えて、すべて盛り込んだうえで最終的に画質を落とさず小型化を達成させました。
【赤城】良すぎるんじゃないかというぐらい画質の安定性がある。これにはマイクロフォーサーズのセンサーは関わっているんですか。
【村山】デジタル専用であることが大きいのと、MTFもそうですけれども設計時点で高い周波数まで考慮して設計しています。
【小野】周波数も単純に2倍でみていますし、逆にやはりマイクロフォーサーズのほうが精度的には厳しいです。光軸のアッセンブリに関しても、簡単に言えば精度としては2倍になってきます。けれども、我々は今までプロレンズをやってきていますし、会社の中でどう物を作り込んでいくかというノウハウを蓄積しています。このサイズ感で高画質というのはそこまで含めて提供できるものです。12-100mmはこのサイズに収めて他社で言う小三元2本分の焦点距離です。『オリンパスだからできた』というぐらいなところまで確実に追い込んだ商品ですので、本当に胸を張ってこれを使っていただきたい。画質も含めて最高のバランスになっています。
【赤城】先日、小川専務がフェイスブックですごくいいことを書いていた。『開発のみなさんから上がってきた提案を見て、最初は本当にそんなことができるのか、と思った。それが本当にできるってことになったときに、ウチの技術陣のすごさを知った。僕よりもいっぱいアイデアが出てきてすごいですよー。楽しみにしてください』と。
【高須】ハードル上げられました(笑)
【赤城】皆さんは、手ぶれ補正の問題にしてもフォーカシングの問題にしても、今まで絶対に一眼レフのようにいかないんじゃないか、みたいな問題を全部うまくやってきた…不可能を可能にしてきたわけじゃない。ミッションインポッシブル! できないと言ってしまうと技術の進歩はお終いだから。
「12-100mmはプロフェッショナル高倍率ズーム。我々のシステムへの入口にしていただきたい」(小野)
オリンパスの哲学
質の高いファームアップは『お客様にいいものを長く使っていただく』ため
【赤城】OM-D E-M1 MarkⅡ は5月にもファームアップされています。OM-D E-M1のときとか、なんかもう別のカメラみたいになっちゃうぐらいのファームアップをしていたじゃないですか。これはオリンパスとしての考え方ですか。
【高須】基本は、買っていただいたひとつのボディを長く使っていただきたいと。そうすることによって最新のカメラと変わらず長く愛着を持っていただけるというのもあるし、早く買っても損しないように、というのもあります。“値段が崩れてきてから買ったから得した”じゃなくて、早くから使ってバージョンアップしながら長く使えるというのは、これはやっぱりオリンパスの姿勢でもあります。『いいものを長く使っていただく』と。それは開発陣も考えて頑張ったことです。
【赤城】では月刊カメラマンの読者に一言ずつお願いします。
【高須】とくにOM-D E-M1 MarkⅡは、なかなか言葉で伝わらないスペックを上げています。表示を見るだけで“あっ、もうOM-D E-M1 に戻れない”と思いますよ。細かいところまで煮詰めているのが触ると全部分かりますから、店頭で一回体感していただきたい。
【青木】捕捉性とか連写もよくできているんですけれども、起動の速さとかレスポンス、再生の速さといった見えないところにかなりこだわって作っています。誰かから借りて運動会で撮るとか、機会があったら触ってみて、いいカメラになっているというのを知っていただければと思います。
【村山】常識を覆す機能、性能を多くのシーンで使える高倍率ズームレンズに盛り込みました。日常からここぞという時までぜひご使用ください。
【小野】12-100mmという聞き慣れないスペックですけれど、やはり我々のシステムに入ってきていただくには非常に分かりやすい1本だと思っています。我々はこれをプロフェッ
ショナル高倍率ズームと呼んでいますが、さまざまなお客さまに我々のシステムの価値を存分に感じていただけるものだと思っていますので、ぜひ安心して入ってきていただきたいです。
インタビュアー:赤城耕一
東京工芸大学短期大学部写真技術科卒。出版社を経てフリーに。コマーシャルやPR誌などの仕事のかたわら各カメラ雑誌に記事を執筆。弊誌連載「ボケても、キレても。」も好評だ。
*本記事は月刊カメラマン2017年7月号に掲載された「徹底検証! カメラグランプリ2017『大賞』『あなたが選ぶベストカメラ賞』『レンズ賞』3冠の理由」に加筆修正して転載したものであり、開発者の所属などは当時のままです。