「長野の狂気」(もちろん褒めています)ことコシナから、キヤノンRFシステムに対応するフォクトレンダーブランドの交換レンズ「NOKTON40mmF1.2 Aspherical RF」が2024年1月19日に発売される。既に発売されているNOKTON50mmF1 Aspherical RFと同様に、キヤノンからライセンスを得たRFマウントの第2弾となる。

コシナ フォクトレンダー NOKTON40mmF1.2 Aspherical RF-mount 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算40mm
●最短撮影距離:0.3m
●最大撮影倍率:1:4.9
●レンズ構成:6群8枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:58mm
●大きさ・重さ:φ70.8×56.4mm・400g
●付属品:フード

RFマウントということで、例によって収差補正は反映されず

絞り開放でもかなりシャープ。だけど独特の雰囲気のある描写にニンマリ。というかファインダーを覗いた瞬間から楽しいです。高輝度側・階調優先を「する」に設定するとISO200以上になっちゃうので、なおさら1/8000秒以上のシャッター速度が選べるのは嬉しい。
※撮影共通データ;キヤノン EOS R6 MarkⅡ 高輝度側・階調優先:する
■絞り優先AE(F1.2 1/16000秒) WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

同スペックのレンズが既にソニーEマウント、フォクトレンダーVMマウント(ライカMマウント互換)、ニコンZマウント、の3マウントが既に発売されている。例のごとく、本レンズもレンズ構成図こそ同じだけれども、EOS Rシステムに「最適化」すべく再設計された光学系を持つ。

操作性についても、フォーカスリングの回転方向はキヤノン純正と揃えられており、ローレットパターンについてもEOS Rシステムが採用する意匠に準じたダイヤパターンが採用されている。

夕暮れ時の柔らかな光の中で撮ると、影の中から浮き出てくるような描写。撮影中と画像チェック時には「かぁー!」とか「くぅー!」みたいな感嘆符が脳内を駆け巡ります。このレンズの気持ち良さは、すべてのカメラファンに共有されるべきだと思っています。ということは? そうですね、RFマウント版の次はLマウント版の登場にも期待が高まりますね。
■絞り優先AE(F1.2 1/80秒) マイナス1.7露出補正 WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:モノクロ

電子接点を持っているので、対応機種では撮影情報のExif記録対応、3軸のボディ内手ブレ補正、拡大・ピーキング・フォーカスガイド(EOS RPのみ非対応)の3種類のフォーカスアシスト機能が利用可能。 その一方で、カメラボディでの電子補正には対応していない。が、LrCなどで現像する際に補正を適用することは可能だ。
また、カメラ側からの絞り設定は出来ず、レンズ側の絞りリング操作のみとなる点にも注意が必要である。

注意点として、EOS R/RP/R6の3機種では撮影条件によって周辺部にマゼンタ被りが生じる場合があるとアナウンスされている。

「狂気なまでクォリティ」は相変わらず…

最もふわふわ写る条件でパチリ。同じレンズとは思えないくらいの表現力の振り幅。「絞りの利く」レンズであることが分かります。光を読んで、絞りと撮影距離を調節して狙い通りの描写が得られた時の気持ちよさは格別。楽しいだけではなくて、写真を学べるレンズでもあるってのが良いよ。
■絞り優先AE(F1.2 1/1250秒) プラス1.3露出補正 WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

既発のNOKTON50mmF1 Aspherical RFと同様に、レンズ外観もRFシステムに最適化されている。具体的にはレンズのローレットパターンがダイヤパターンとなっていて、まるで純正レンズの様な自然なマッチングだ。

このマウント毎に本当の意味で「最適化」する姿勢は、ユーザーとしては嬉しい限りだけれども、一方で収益性や効率という観点では、素人目にも非効率でコストがかかるハズ。それでもやっちゃうその狂気こそがコシナの特色なのだろう。
ということで、いつものコシナらしさが本レンズにも存分に発揮されております。

至近端から指2本分くらい(ウイスキーで言えばダブル。4cmくらい?)離れるとグッとシャープさが出てきます。構図や露出以外にも撮影時には絞る・少し距離を調節する、などの選択肢が生じます。面倒と言えばその通りだけれども、そうした対話と選択を経ると1枚に対する体験がより濃密になるので、写真を見ると「あの時、あの辺りで撮ったな」みたいな記憶がスッと出てきます。つまり1枚で3度楽しいのよね。撮って楽しい、見て楽しい。さらに思い出しても楽しい。
■絞り優先AE(F1.2 1/640秒) WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:スタンダード

開放口径F1.2というスペックの割にはコンパクトに出来ており、全長は56.4mm(フード装着状態で約70mm程度)で、単体重量はちょうど400gと比較的コンパクトに仕上がっている。「手のひらセンサー」ではズシリと心地良い重さを感じたが、想像よりも軽いことに驚かされた。

ちなみにRF24-105mm F4-7.1 IS STM(約395g)やRF15-30mm F4.5-6.3 IS STM(約390g)とほぼ同等の重さだ。また、サイズ感で言えばRF24-50mm F4.5-6.3 IS STM(全長58mm)やRF35mm F1.8 MACRO IS STM(全長約63mm/約305g)辺りが近似している。
NOKTON50mmF1 Aspherical RFと同様に、絞りリングにはクリックのオンオフを切り替える機構が搭載されている。

ちなみにコシナの公式Youtubeはこちら

NOKTON 40mm F1.2 Aspherical RFマウント 製品紹介

www.youtube.com

MFレンズゆえ、それなりのEVF採用機を選びましょう

火災報知機をパチリ。だから何? って写真だけど、何気なく見ているモノ、普段は気に留めなかったものでも、このレンズを持っていると、ついつい撮りたくなっちゃうのよね。大事なことなので句点多めにしています。ご覧の通り、撮り方やシーンによっては周辺光量がしっかり落ちます。なんてことない写真を美味しくしてくれるので、この光量落ちはご褒美。
■絞り優先AE(F1.4 1/80秒) マイナス2.0露出補正 WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

質感と操作感は申し分なく、ピントリングの重さは適切で、絞りリングの感触も心地良し。この瞬間がコシナですね。もはや毎度おなじみなので、このクダリは省いても良いのでは? とすら思っています。

今回組み合わせたボディは1/8000秒以上のシャッター速度が選択できるという理由でEOS R6 MarkⅡを選びました。EOS R6 MarkⅡのEVFは結構良いと思っていますが、このクラスのEVFで体験すると立体感とかも必要以上に分かるので、お部屋の中で弄り回しているだけでも軽く3時間くらいは没頭できます。

画面下部にプランターの縁が写り込んでいますが、さすがはF1.2の至近側。ボケて何が何だか分かりません。いろいろ引き出しがあるレンズだから、撮ってて「アレやってみよう。次はコレ」みたいにイメージが膨らんでくるのが良い。口径食はありますね。ワリと意地悪な条件でとりましたが色収差はほとんど無いです。そうそう、キヤノンで大口径レンズ使う時は電子先幕シャッターは使わないようにね。
■絞り優先AE(F1.2 1/2500秒) プラス3.0露出補正 WB:オート ISO200 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

そして嫌なことがあったとしても「家にNOKTON40mmF1.2がある」や「今日はNOKTON40mmF1.2を持ってきている」と思えば、心を健全に保つことが出来そうです。

フォーカスアシスト機能は例によってフォーカスガイドを選択しています。気になる人はWebカメラマンで以前紹介しているNOKTON50mmF1 Aspherical RFの記事を参照して下さい。

ちなみに本レンズについてもZマウント版のインプレが公開されています。いま気付きましたが、本レンズはEマウント版やZマウント版よりも重いんだね。

周辺光量はシーンによってガッツリ落ちる場合アリ

F2.0まで段階的に絞りを変えて撮ったのだけど、開放のボケのカタチが一番気分に合っていたので開放のカットを採用しました。めったにこういうカット撮らないけど、ついついなんか撮ってしまいました。ピント位置で光源ボケの大きさを調整するのが楽しかったね。初心に戻れるレンズだね。マジで何撮っても楽しい。
■絞り優先AE(F1.2 1/60秒) マイナス0.7露出補正 WB:オート ISO500 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

Zマウント版と比べると、Z版の方がキレが強い感じです。これはシステムの画作りの違いだと推測していますが、より自然な描写に感じられるRF版の方が写真を眺めていて心地良いように思いました。

描写の傾向そのものは同じ印象で、開放絞りからでも割とシャープでスッキリ系。だけど、撮影距離と絞りの関係によっては収差コントロール出来る余白が残されているので、光を読みつつ絞りとフットワークで描写を操る楽しさがあります。

周辺光量はシーンによってはガッツリ落ちる場合アリ。同一条件でZ版と比較したワケではないので、あくまでも印象論になりますが、Z版よりも光量落ちは目立つ感じ。
もしかしたら、最新の純正レンズしか経験したことない人だと、ちょっとビックリするかも知れません。

公式から注意喚起のあるマゼンタ被りについては、色弱のワタシには正直良く分かりませんが、言われてみればEOS R6 MarkⅡでもシーンによっては僅かに被って見えるような…。

あと電子先幕シャッターで開放絞りからF2.0あたりの絞り設定で撮影すると画像にムラが生じる場合があります。この部分に関してはNOKTON50mmF1のインプレでも触れていますが、キヤノン機で大口径の他社製レンズ使うと露光ムラみたいなのが目立ち易い気がします。

これをもって40㎜画角・究極の一本に認定し〼。

絞りを開けても良かったけれど、開放近辺の作例ばかりもどうかと思ってF1.8まで絞ってパチリ。画像キャプションに「楽しい」というワードが溢れていますね。実際楽しいんだから仕方ないです。描写性と操作感含めて手に伝わる感触が同じ方向を向いているから、撮影に没頭出来るのだろうね。このカットだけ高輝度側・階調優先はオフにしています。
■絞り優先AE(F1.8 1/80秒) マイナス2.0露出補正 WB:オート ISO500 ※ピクチャースタイル:ニュートラル

まとめとしては、べらぼーに楽しいレンズです。40mm画角の大口径レンズとしては究極の1本って言っても過言ではないのでは? と。
40mmの雄と言えば、シグマの40mmF1.4 DG HSM Artが挙がります。こちらの描写は、それはそれは素晴らしいけれども、いわずもがなデカくて重い(EFマウント版で脅威の1.2kg+マウントアダプタ)ので、日常使いには不向き。

過去にLマウント版をLUMIX S1で楽しみましたが、写りには感動したけれども積極的に持ち歩きたいとはお世辞にも思えなかった。ということで、諸々含めて常用できるレンズとしては本レンズが究極の1本という感想です。すっげー楽しいし、30万円みたいなトチ狂った価格ではなく、少しの背伸びで手に入ります。

特に、EVFを覗いた世界があまりにも自然な画角なのに、写真の立体感って言えばいいのかな? 大口径レンズを通して見た時のピントの薄さがしっかりと分かる。肉眼とファインダーの境界線上をウロウロする不思議な撮影感触があるところが一番印象的でした。

50mmだと少し写真的な印象が強いのだけれども、40㎜だと丁度良いバランス。35mmはちょっと広いし、EVF上ではそこまで立体的には見えないので、40mmが色々丁度良い感じがします。