「フィルムのM型」並みに軽量化(ただしブラックのみ)
ライカM11のもうひとつの大きなトピックは、ブラックボディに限りトップカバーにアルミ合金を採用することで約110gも軽量化し、フィルム時代のM型と同じくらいの重さになったこと。
たしかに前モデルのM10は薄型化はされたけど、明確に重くてフィルムのM型を長く使ってきた人にとってはちょっと違和感を覚える部分であり、実際にもっと軽くして欲しいという声も多かったそうだ。
もちろん、軽くなったといっても手応え的に軽すぎるわけではなく、ボディサイズに対して適切な重さに戻ったという印象。ただし、この軽量化はブラックボディのみ。シルバーボディのトップカバーは真鍮製であり、重さはM10とほぼ同じだ。逆に軽さよりも重厚感を求める人にはシルバーの方がいいかもしれない。
ボディ関係でもうひとつの大きな変更点は、取り外し式のベースプレートがついに廃止されたことだ。
ライカを使ったことがない人はピンとこないと思うが、ライカのレンジファインダーカメラはバルナック式の昔からベースプレート(底ブタ)を外し、下からフィルムの出し入れを行う方式を採用していた。
この仕組みはデジタルのM型でも継承され、M10まではバッテリーとSDカードを交換するためにはベースプレートを取り外して行う必要があった。しかし、M11ではこの太古から継承された儀式的な作法とついに決別。バッテリーをダイレクトに出し入れできるようになった。
個人的な感想を言うと、心情的にはベースプレート取り外し式も決してキライじゃない(ライカを使ってる!という気になるので)が、利便的にはダイレクトアクセスの方が劇的に楽で早いのは確か。
SDカードスロットはバッテリー室にあるのでSDカード交換時にはバッテリーを外す必要はある。が、バッテリーはライカQ2とかライカSL2などと同じく、レバーの操作で簡単にイジェクトできるので、こちらもM10までより遥かに簡単にアクセスできる。
レンジファインダー時も撮像素子測光
その他の変更点としては光学ファインダー使用時の測光方式変更がある。M10ではシャッター幕に反射した光を専用センサー測光していたが、M11では撮像素子そのもので測光する仕様となり、ボディ内部下側にあった測光専用センサーが廃止された。
これにより、M10まであったシャッター先幕の白い反射塗装がなくなって黒一色のシャッター幕になっている。また、この仕様に伴い、電源オン時は常にシャッター幕が開いて撮像素子が露出するが、電源オフでシャッター幕が降りるのでレンズ交換時は電源を切ったほうが良さそうだ。
さらに言うと、電源オン時に常にシャッターが開いているということは、シャッターを切った時に一旦シャッター幕を閉じてから露光開始というシーケンスになる。つまり、M10までのM型ライカ(ライブビュー時以外は常にシャッターが閉まっている)に比べるとレリーズタイムラグがやや大きくなってしまうという懸念がある。
実際に光学ファインダー使用時のレリーズタイムラグはM10より大きくなっているそうだが、そのラグはライカSL2などと同じくらいなので実用的に大きな問題はない(はず)という。
実際に使ってみた感じも特にラグが大きいという実感はないものの、一眼レフのようにミラーを上げる必要がないレンジファインダー機ならではの、レリーズと同時に間髪入れずにシャッターが切れる感触がちょっと薄れたのは残念ではある。
それなら先幕電子にすればいいのでは?と思ったが、M11では先幕電子シャッターは選べない。先幕電子シャッター特有の問題点(高速シャッター時のボケ欠け等)を嫌って、あえて搭載していないのだと思われる。ただし完全な電子シャッターは可能で、その際は最高1/16000秒の高速シャッターが使えるので、ISO64のベース感度と合わせれば明るい屋外で絞りを可能な限り開けたい時などに便利だ。
「トリプルレゾリューションテクノロジー」を検証してみた
前述したとおり、ライカM11では画素数を6030万画素・3600万画素・1800万画素の3種類にサイズ設定でき、JPEG時だけでなくRAW(DNG)もサイズを選べる。また、RAW+JPEG時はそれぞれのサイズを個別に設定可能だが、RAWより大きなサイズのJPEGは設定できないという仕様になっている。
最近はRAWの画素数を変えられるカメラも増えてきているし、単に画像サイズを変更できるだけならそんなに大きなメリットはない。しかし、M11では3600万画素、1800万画素にしたときはピクセルビニング(画素結合)が行われてダイナミックレンジが良くなるとアナウンスされている。これは素晴らしい。もし、本当にそうなら非常に大きなメリットであり、自分なら間違いなく画素数を下げて使うだろう。
そこで、画素数を変えたときにどれくらいダイナミックレンジが変化するのかを確認すべく、輝度差の大きいシーンを中心に画素数を変えて何度か試してみた。…が、ハイライト側、シャドー側共にどうしてもダイナミックレンジの違いが実感できなかった。ムムム。
ただ、これは画素数を変えても、いわゆる画作りは共通(ガンマカーブとか)なので違いが分からないだけなのでは? 8bitのJPEGはともかく、RAW画像なら実は潜在的にレンジが確保されていて、ピクセルビニングの効果が分かるはず! と考え、RAW画像現像時にハイライトとシャドースライダーを大きく振ってレンジ幅に違いがあるのか探ってみた。
…が、最も差が出るはずの6030万画素と1800万画素で比べて(もちろん同一被写体、同一露出)も、残念ながら有意な違いは見いだせなかった。
この結果から、現状では画素数を下げて使うメリットはあまりなさそうだ。ダイナミックレンジで明確な違いがないのであれば、トリミング耐性などの点で高画素であることの方がメリット大と考えられるからだ。
ただし、現状ではピクセルビニング時の画処理があまり上手く行えていないだけという可能性も大きい。もし将来的にファームアップなどでこれが最適化されれば画素数を下げて使う意義は大いにある。