本誌・月刊カメラマン連載「ジャンル別講座 ネイチャー・フラワー」で講師を務め、作品制作はもちろんのこと、各雑誌への寄稿や写真教室の講師など精力的に活躍中の写真家・並木隆さんの連載「写真家になるまで」が「KITTgogo」とのクロス連載により「Webカメラマン」でも好評展開中!今回が最終回です!

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ミノルタ、キヤノンの写真教室講師になったけど…。

ミノルタへのお誘いを受け飛び込んだ最初のお仕事はデパート催事場の一角で開催するミニセミナーでした。実はこれが写真教室の講師デビューでもありましたし、人前で喋ることも初めてで緊張しまくり。何を話したのか全く覚えていません。唯一記憶にあるのは、そのときの担当者が業界では有名なトンボのTさんだったことと、座ってくれたお客さんの反応が薄くて落ち込んだことくらい。

写真を趣味としないお客さんに、絞りやシャッターの話をしても響くわけがありません。でも、この経験があったからこそ、知らない人の立場に立って話をしないと、知らない人がなにを知りたいのかをわかってから話をしないと伝わらないんだなと、その後の講師業の基礎となった経験でした。

それ以降もそのようなセミナーだけでなく、販売店向けの新製品説明など様々な経験を積ませてもらい、ミノルタの写真教室の講師もさせてもらえるようになりました。ちょうどそのとき、キヤノンからも写真教室の講師のお誘いがあり、何も考えずにミノルタとキヤノンの両方で仕事をすることに。ところが、ここで大きな過ちを犯してしまいます。

当時は一眼レフ入門機でシェア争いを繰り広げるライバルメーカー同士。そんな両者の仕事をするなんて、二股かけているのと同じくらいタブーなことでした。もちろん、大きな仕事は来ませんし、地方に行けばそれぞれの営業所で嫌みを言われることもありました。でも、ミノルタにもキヤノンにも育ててくれた恩義がありました。両社での経験があってこそだったので、どちらかという選択はできませんでした。