フルサイズ・エントリーモデルの2世代目として登場したニコンZ5II。上位機に迫るAFやEXPEED 7の搭載など、ライバル機顔負けの性能を持つ。このZ5IIを使いやすい仕様にカスタマイズして使うには? その道のエキスパートたる写真家の方々にジャンル別のオススメセッティングを語ってもらった。今回は、スナップ編。

■熊切大輔氏プロフィール
1969 年東京新宿生まれ。東京工芸大を卒業後、日刊ゲンダイ写真部を経てフリーランスの写真家として独立。ドキュメンタリー・ポートレート・食・舞台など「人」が生み出す瞬間・空間・物を対象に撮影する。スナップで東京の街と人を切り撮った写真集「刹那 東京で」を2018 年に発売と共に写真展を開催。2021 年1 月に開催される写真展「東京美人景」2017 年の「東京動物園-アンリアルな動物たちの生態」の三部作で東京の今を撮り続けている。公益社団法人日本写真家協会理事。

プロカメラマン熊切大輔氏のニコンZ5IIのセッティングは?

コンパクトで軽量! フィールド撮影に適したカメラ

5Ⅱは最高にスナップ写真向きなカメラだと思う。フルサイズでありながら小型軽量、しかしその表現力に妥協はなく、更にスピード感のある撮影が楽しめるのだ。機能も最新技術が搭載され、その表現力を存分に楽しみたいところだ。特徴としてはフラッグシップ機のニコン Z9などと同じ画像処理エンジ「EXPEED 7」を採用、これに高感度に強い裏面照射型CMOSセンサーが加わって、最高常用感度はISO64000と撮影条件も大幅に広がり夜スナップなども大いに楽しめる。5軸のボディ内手ブレ補正も高い効果を発揮してくれて、三脚をほとんど使わない街撮りスナップで手持ちスローシャッターにも思い切って挑戦できるようになった。マイナス10EVの低輝度まで検出できるAFもそんな撮影を後押ししてくれるだろう。最新のAFは先代Z5より大幅に進化し、Z9譲りのスピード感で撮影を助けてくれる。これら大幅に進化した機能を活用しつつ、様々なスナップにあった設定で撮影を楽しみたいところだ。

画像: Z5IIになってピクチャーコントロールボタンがモードダイヤル脇に新設され、各ピクチャーコントロールを簡単に呼び出すことができるようになった。

Z5IIになってピクチャーコントロールボタンがモードダイヤル脇に新設され、各ピクチャーコントロールを簡単に呼び出すことができるようになった。

画像: カスタムピクチャーコントロールは既存のピクチャーコントロールをベースにシャープネスや明瞭度、コントラストなどを任意で調整。より自分のイメージにあった表現を作ることができる。

カスタムピクチャーコントロールは既存のピクチャーコントロールをベースにシャープネスや明瞭度、コントラストなどを任意で調整。より自分のイメージにあった表現を作ることができる。

まず撮影モードに関してだが、アマチュアの方々からは「プロはマニュアルモードですよね?」とよく聞かれる。もちろん業務での撮影などではマニュアルで使うことも多いがスナップ撮影の場合は話が別だ。なるべくシンプルな操作で、カメラのオートを活かしながらシャッターチャンスに集中したい。そこで私がよく使うのが、A(絞り優先オート)だ。レンズの表現、ボケ味やパンフォーカスなどを表現の変化に使うことが多く、動き物の表現をするときだけS(シャッター優先オート)に変えることが多い。測光方式も本来、都度変えるのが理想的だが、マルチパターン測光をメインに使い、条件に応じて事前に露出補正をしておくことが多い。それもこれも最小限の操作で撮影に挑めるようにしたいからだ。これがシャッターチャンスを逃さない第一歩と言っても良いかもしれない。

AFに関しても似たようなことが言える。今回新たにAF-Aが搭載されたが、スナップの場合、被写体とカメラの間に別のもの、人が入り込むことが多い。その際、コンティニュアス系のAFだと手前の被写体に持ってかれてしまうことが起こるので、確実に合わせたいところに合わせるためにAFエリアはシングルポイント、AFモードはAF-Sにすることが多い。しかしペットなど予測しづらい動きの被写体には今回採用されたAF-Aが大いに役に立つ。主体がはっきりしている撮影にはオート系のAFが大いに役に立つのだ。例えば昨今増えてきたスナップポートレートなど人物が主体の撮影は被写体検出の人物モードが大いに役に立ってくれる。顔・瞳・頭部・胴体と被写体の画像中の大きさに合わせて精度良くフォーカスを捉えてくれるので、表情や動きに集中して撮影できるのだ。

画像: 「イメージングレシピ」で写真家の個性的な表現を体験するのも楽しい。加えて31種類のピクチャーコントロールは、カメラ独自の表現として楽しむことが出来る。本作は「デニム」からアレンジを加えてみたものだ。 ■NIKKOR Z 35mm f/1.2 S 絞り優先AE(F1.2 1/8000秒) マイナス1.3露出補正 ISO200 WB:オート

「イメージングレシピ」で写真家の個性的な表現を体験するのも楽しい。加えて31種類のピクチャーコントロールは、カメラ独自の表現として楽しむことが出来る。本作は「デニム」からアレンジを加えてみたものだ。
■NIKKOR Z 35mm f/1.2 S 絞り優先AE(F1.2 1/8000秒) マイナス1.3露出補正 ISO200 WB:オート

機能から話は少し外れるが、スナップの構図について考えてみたい。私はマスコミ出身であるため、例えば新聞紙面では単写真での表現が多かった。そこでは一枚で様々な情報を詰め込む必要があり、今でもそのくせが抜けず一枚の中に情報量を多く詰め込む。加えて写真家として表現の世界に踏み入れてからは、写真展や写真集など「組写真」の表現が増えてきたのだ。そうなると画にバリエーションがほしい。様々な工夫をして豊富な表現で写真を組み上げなければならないのだ。ひとつ例に上げると、これもアマチュアの方からよく聞かれることで「表現が単調になってしまう」ということだ。そこでアドバイスするのが、目線の高さを変えることだ。安定した撮影姿勢を意識するとどうしても高さが一定になってしまう。例えば本機で言えば、バリアングルモニターを駆使して地面すれすれの高さに降ろしてみるのもよいだろう。いつもとは違う、見慣れない世界がそこに写って来るはずだ。

記事の続きは、本誌にて!(下段に本誌へのリンクがあります)

ニコンZ5IIのオススメ設定【スナップ編】

  • 撮影モード:絞り優先オート
  • 画質モード:RAW+FINE★
  • フォーカスモード:AF-S
  • AFエリアモード:シングルポイントAF
  • 被写体検出:不使用
  • レリーズモード:シングル
  • ISO感度:マニュアル
  • ISO感度オート範囲:ISO100-6400
  • シャッター方式:メカシャッター
  • ピクチャーコントロール:オート
  • WB:オート

Text&Photo:熊切大輔

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