世界最古の公募展「ル・サロン」、「サロン・ドトーンヌ」の公募・出展に関して
鬼界 順さんへのインタビュー
「サロン・ドトーンヌ」展示作品「七つ時」

ⓒJun KIKAI
──まず、今回の海外展について、簡単にご説明いただけますか?
鬼界 順(以下順)「ル・サロン」は、フランス芸術家協会が主催している世界最古の公募展で、有名なマネの「オランピア」やミレーの「種をまく人」など名作も出展されたそうです。「サロン・ドトーンヌ」は、毎年秋にパリで開催される展覧会で「秋季展」の意です。もともとは、保守的な「ル・サロン」に対抗して開催されたもので、日本人では、レオナール・フジタも出品したそうですよ。
──鬼界さんといえば、イタリアの写真をよく撮られていたし、過去にもイタリアの写真展に招待出展されていたので、「イタリア」のイメージなんですが、今回は「フランス」なんですね。
順 パリは芸術の都ですし(笑) フランスでも認められたいという気持ちでした。
──さっきの例だと絵画ですが、写真も出品できるのですか?
順 なんかできました(笑) でも殆どは絵画で、写真は少ないみたいです。
──フランスの中でも、今回の展覧会を選んだのはなぜですか?
順 フランスの中では二大公募展で、コンセプトが対照的なので、前々から出品したいと思っていたのですが、今回は、ちょっとご縁があって、思い切って出してみました。
──「ご縁」といいますと?
順 話すと長くなるのですが、よろしいでしょうか?(笑)
──どうぞ(笑)。
順 まず、東京の新国立美術館の公募展(欧州美術協会主催)に出品する機会があり、それについては省略しますが、昨年(2024年)の8月のことでした。そこで「ザッキ賞」という賞をいただいたのをきっかけに、パリの市庁舎の国際サロンに特別推薦で出品することになり、その公募展とサロンの主催者の欧州美術協会から、今回の二つの公募展にも出品しませんかというお誘いをいただきました。
──それで、前々から目を付けていた公募展に応募したというわけですね。でも、誰でも応募すれば展示してもらえるのですか?
順 書類審査があります。書類には作品の写真も添付して出すのですが、それを通ったものが入選作品として展示されます。

念願の「サロン・ドトーヌ」、10月にフランスで展示決定となった時の様子。
──書類審査は倍率が高いのでは?
順 倍率とかはわからないのですが、先ほどの「ザッキ賞」や、国際サロンの出品もプラスにはたらいたのかもしれません。
──なんかトントン拍子ですね(笑)
順 いえいえ、山あり谷ありですよ。
──それで肝心の写真なんですが、どのような写真ですか?
順 それぞれ1枚で、サロン・ドトーンヌには「七つ時」、ル・サロンには「祈り」というというタイトルの写真を出しました。サロン・ドトーンヌは11月初旬に終わりましたが、ル・サロンは来年の2月にはじまります。どちらも全紙サイズ(45.7cm×56.0cm)で、モチーフは芸妓さんです。
──「祈り」は今回の記事にはありませんが、ネットなどで観られるところはありますか?
順 ル・サロンはまだ来年なので、ネットには出せないのです。
──「七つ時」はなぜそのようなタイトルになったのですか?
順 パートナーの人のアイディアです。なんでも、江戸時間で七つ時(申の刻)は、三時のお八つの八つ時と、暮れ六つの間の時間帯で、写真の雰囲気がそうだからということだそうで、実際ドンピシャでしたので使わせていだたきました。英語のタイトルだと、"late afternoon"になります。
──「パートナー」の方って気になりますが…?
順 タイトルや文章を考えるのが得意なので、よく手伝ってもらっています。
──実際に展示されたときの雰囲気はどんなだったのですか。
順 現地には行くことができなかったので、わからないのですが、送っていただいた写真で見た感じでは、沢山の人に来ていただいて盛況だったようです。夜は9時まで開いているそうで、演奏会などもあって、一大イベントみたいです。
──知らなかったです。さすが「芸術の都パリ」ですね。現地の人たちからの感想はありましたか?
順 さっきの「ザッキ賞」のザッキさんからは、"SUPERBE"と一言だけいただきました(笑) 調べたら「極上の」とか「お見事」とかの意味らしいのですが、ザッキさんはル・サロンの名誉会長もされている有名な画家さんなので、嬉しかったです。あとコルシカ島の画家さんからも、"COOL"をいただきました。
──ところで、二枚とも芸妓さんがモチーフとのことですが、京都の芸妓さんですか?
順 はい。秀千代さんという先斗町の芸妓さんで、舞妓のときからずっと撮影させていただいています。
──鬼界さんはイタリアの写真をずっと撮ってこられたと思うのですが、最近、芸妓さん・舞妓さんの写真が多いですね? 何かきっかけがあったのですか?
順 イタリアの写真の関係で、イタリア人の人たちと親しくなり、イタリアで写真を発表するお話をいただいたときに、どうせ海外で発表するなら、日本らしいものをということで、駆け出しの若い時に舞妓さんを撮っていたことを思い出し、モチーフにすることにしました。
──なるほど。まだまだ聞きたいことは尽きませんが、そろそろ、まとめましょう。今後の活動予定を教えてください。
順 具体的には決まっていないのですが、また海外で個展をしたいです。日本文化を海外に伝えられたらいいなと思っています。
──今回はいろいろ楽しいお話ありがとうございました。

鬼界順さんによる芸妓・秀千代さんの最新作。
サロン・ドトーヌについてはこちらを参照
「ル・サロン」についての情報はこちら
鬼界 順さんのプロフィール

鬼界 順(JUN KIKAI)
イタリア撮影をライフワークとするが、1994年より京都の舞妓さんも撮影。個展はイタリア関連14回、舞妓関連10回(海外での招待個展1回・招待出品1回を含む)。写真集はイタリア関連では「Scicilia」他2冊、舞妓関連では「舞妓と町家」「舞妓日和」他2冊を出版。他、デジタル写真集、ポストカード集など出版多数。
その他の活動:
◇写真雑誌、情報誌、旅行ガイドブック、海外旅行誌の記事や特集の企画・取材・執筆・写真撮影。
◇撮影会講師、ナビゲーター、インタビューアー、個人撮影会アドバイザー、トークショー講師、広告撮影教室講師。
◇広告・商品カタログの企画制作。
日本写真協会会員、京都市芸術文化協会会員、富士フイルムプロフェッショナルサービス会員。




