撮影共通データ
■キヤノン EOS R10 絞り優先AE WB:オート
■諏訪光二氏プロフィール
1968年、東京生まれ。日本大学芸術学部写真学科在学中にアンセル・アダムスのオリジナルプリントに感銘を受け、ゾーンシステムを用いたオリジナルプリント制作に目覚めた。3年半で大学を中途退学し、フリーランスの写真家に。日本では早期にデジタルフォトを取り入れた数少ない写真家の一人。現在は広告撮影、写真専門誌等での原稿執筆、写真講座講師などを手がけながら、主に自然を作品モチーフとした作品を制作。
タムロン 18-300mm F/3.5-6.3 DiⅢ-A VC VXD(RF) 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算28.8~480mm相当
●最短撮影距離:0.15m (WIDE)/0.99m (TELE)
●最大撮影倍率:1:2 (WIDE) / 1:4 (TELE)
●レンズ構成:15群19枚
●最小絞り:F22-40
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ75.5×123.6mm・625g(RFマウント)
●付属品:フード
28-500㎜、そしてハーフマクロ…ほぼこれで完結してない?

筆者がワイド系でよく試撮する場所。レンズ補正もしっかり効いてシャープで歪みのない画となる。階調の再現も良い。四隅に近い部分にはわずかにフリンジが残っている。本当に完全に除去したければRAWで撮って自分で調整しよう。
■絞りF8 1/125秒 ISO100(18mm時)

同じシーンを同じ場所からテレ端300mmで撮影したもの。1本のレンズでこれだけ寄り引きを撮れるのは素晴らしい! ポール(ワイヤー)のようなものを通すソケット部の小さなネジまでしっかり解像しているのはオミゴト。ただし左にあるたくさん穴の空いた金属プレートの部分にはフリンジが発生している。
■絞りF6.3 1/500秒 プラス1.3露出補正 ISO250(300mm時)
本レンズのポイントはまずなんといってもズームレンジの広さだ。18-300mmは1.6倍換算のキヤノンRFマウントで28.8-480mm相当というとんでもないレンジ。しかもワイド端では0.5倍までのマクロ撮影が可能で、それこそ「これ一本で何でも」の世界だ。
さて使ってみると、やはり持ち歩きではやや邪魔に感じる(笑)。超望遠も抱えているわけだから当たり前だ。本レンズのような高倍率ズームは、ユーザーがどういうスタンスでこのレンズと向き合うかで評価が大きく変わってくるだろう。
あくまでも標準ズーム的に捉えてしまうと本レンズは大きく邪魔に感じてしまうだろう。ただそんな日常スナップのさなかに、美しい夕日など超望遠でなければ撮れないシーンに出会ったなら、本レンズのありがたみが強く感じられるはずだ。
さらに旅行などでは何に出会うかわからず、ましてや遊園地での家族の表情、動物園など多様なシーンに1本で対応できると考えれば本レンズの存在価値は大きく、サイズはむしろ「小さく」も感じられるだろう。

こちらは動物園のカット。不敵な笑みを浮かべるカンガルーをアップで。480mm相当だとこういう顔のアップなども狙いやすい。距離感さまざまな動物園ではかなり役に立つだろう。ピント位置の画質もシャープだ。
■絞りF6.3 1/500秒 プラス0.3露出補正 ISO1000(300mm時)
手ブレ補正、タムロンVCのみでも十分効きます!
ズーム操作によってレンズは大きく伸びるが、下を向けても自重によって伸びることはなかった。ズームロックスイッチを搭載してはいるが、今回はその必要性は感じなかった。
ズーム操作では18mmから70mmまではスムースで、70mmくらいからやや重さを感じながらのズーミングとなる。望遠域は意識を持ってズーミングすることが多いと思うので、無駄にスコスコと軽くテレ端まで伸びてしまうよりは断然使いやすいと筆者は感じた。
今回使用したボディは、手ブレ補正機構(IBIS)を搭載しないEOS R10での撮影であったが、搭載するVC(タムロン独自の手ブレ補正機構)で手ブレは十分に抑えられていた。通常のシーンであれば超望遠480mm相当まで気にせず撮れるはずだ。
むしろこれで、ましてや昼間のシーンでもブレるようならユーザーの構え方やシャッターボタンの押し方を見直した方がいいだろう。

作例撮影のために撮り歩いていたが、この日の夕日はとてもきれいだった。480mm相当ならば太陽もそれなりのサイズで撮影できるし、手前に風景を入れれば圧縮効果も期待できる。標準ズームだけでは撮れないカットだ。こういうときは高倍率ズームのありがたさをしっかり感じられる。
■絞りF6.3 1/640秒 マイナス0.3露出補正 ISO200(300mm時)
AFの速度的にはいたってフツー…というと悪い捉え方をされるかもしれないが、テレ端でもフツーの速度でピントが合い、一部のキットズームよりは高速。もちろん大口径のズームや明るい単焦点レンズ並みの速度は期待してはいけないが「高倍率ズームだから…」という遅さは感じられなかった。十分合格点と言えるだろう。
高倍率ズームながら、画質面でも十二分に健闘

夕刻、しかもビルの合間のショーウィンドウ。感度はISO640まで上がっているが、65mm(104mm相当)で手持ちで問題なく撮影。IBISのないカメラでも十分な手ブレ補正効果を実感。
■絞りF6.3 1/160秒 マイナス0.3露出補正 ISO640(65mm時)
画質面では、ズーム全域で必要十分なシャープネスを持っている。テレ端ではやや光がフワッと散る部分もあるが、エッジ自体はシャープに仕立てている。もちろん本レンズはレンズ補正を前提としたもので、利用できるレンズ補正はオンにして使うのが基本だが、キヤノンのデジタルレンズオプティマイザのようなメーカー固有の補正機能には対応しない。
レンズ補正の効果

どちらもテレ端でのカットだが、右は同じカットをRAW+JPEGで同時記録したRAWデータからのカットで、すべてのレンズ補正をオフにしている。
まずあからさまに明るさが異なるのがわかる。周辺光量が落ちているので、それを直すためのプロファイルが過剰なまでに反映されているのだろう。さらに生成されたJPEG(左)は見てのとおり明るいがフラットに。
またRAWではフリンジがしっかり発生し、中央から少し外れただけでも発生しているのもわかる。レンズ補正でほぼ消ええいるが、周辺などのコントラストの高いところには少し残る。デフォルトで歪曲の度合いが少なめなのも分かる。
RAWで補正を強引にオフにして画質傾向を見るとワイド側では複雑な樽形に歪み、そこからすぐに糸巻き型へシフトしていく。テレ端は思いのほか歪みは少なく、むしろ標準域の方が歪みが大きく補正も強くかかっている。
テレ端は歪みよりもフリンジが多く発生しており、これも補正で除去されているがシーンによってはわずかに残って見える。テレ側は周辺光量もだいぶ落ちるが、これはしっかり補正される。いずれにしても補正のしやすさや画質を考慮して設計し、ズーム全域でお行儀のいいデータを生み出せていると感じた。

羽田空港の展望デッキから300mmで撮影。ここまでアップに。窓枠の小さなネジもやや光が散ってはいるが解像度は高く、ネジの頭の種類もしっかり判別できるほどだ。高倍率ズームの超望遠域でこれだけ写れば十分だろう。
■絞りF6.3 1/1600秒 ISO100(300mm時)
スナップよりも、旅行やイベントで持ち味を発揮!

スナップ用途ではちょっとレンズの大きさ(長さ)が気になるかもしれないが、画質的に問題があるわけではなくAFも十分な速度であり、取り回しだけ気にしなければ十分スナップにも使えるレンズだ。
■絞りF6.3 1/320秒 ISO100(50mm時)
さて本レンズ、ワイド系レンズでスナップを撮り歩くといった用途では大きさばかりが気になってしまうだろう。しかし、旅行などライフイベントでこれまで2本のキットズームをなんとなく持ち歩いていた人にとってはかなり便利であることは間違いない。
画質的にも高倍率ズームとは思えないものだ。また、レンジの広いレンズなので、自分に合った焦点距離を見つけるにもいいだろう。
本レンズで好きな焦点距離を見つけたら、その焦点距離の明るい単焦点レンズも購入してみることをオススメする。また違った写真が撮れるだろうから。

解像感は高いのでテレ端300mmでも十分質感のあるカットを狙える。階調はもちろんカメラ本体(画作り設定など)に依存する部分が大きいが、同条件でみても本レンズの再現は丁寧に再現できている方だ。
■絞りF7.1 1/500秒 マイナス1.7露出補正 ISO640(300mm時)
 
				
				
 
						
						






 
							 
							 
							