ソニー FE28-70mmF2 GM 主な仕様

●焦点距離:28-70mm
●最短撮影距離:0.38m
●最大撮影倍率:0.23
●レンズ構成:14群20枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:11枚
●フィルターサイズ:86mm
●大きさ・重さ:φ92.9×139.8mm・約918g
●付属品:フード・ケース
C社のアレと比べれば天国! でも剛性感や操作感は…まぁ、それなり。
手にした感触はズシリと物理的に重いが、スペックからすると「あ、この程度で収まるんだ」という、どこか軽さのようなものも感じるから不思議である。ただし、この不思議な魔法はRF28-70mmF2Lを経験したことがあるかどうかで、その効力が左右されそうだ。
指の逃げも意識されてるように感じるデザインですね。α1 Ⅱやα9 Ⅲでボディが大型化されてることも効いていて、窮屈感はなかったデス。
ズームリングの操作感はかなりイマイチ。そこまでスムースでもなければ剛性感にも乏しく、何と言うか心が滾らない。軽さの為に失ったものは大きいと感じさせられる一方で、それだけ突き詰めないとこの軽さを実現できないのかも? と思えば、不承不承ではあるが納得できなくもない。
マウント径をコレでもか!! ってくらいに使い切ったレンズ断面。そのご利益は言うまでもありません。
AFは本当にF2ズームなのか疑問が生じるほどのレスポンス。ソレもそのはずXDリニアモーターを4基ブチ込む力技で解決しているのだ。これによってα9 Ⅲの120fpsの高速連写にも対応するトラッキング性能を持つというが、触れてみれば納得感がある。「くだんのRFとは違うのだよ」という声が聞こえてきそうだ。
鏡筒にはAF/MF切り替えスイッチ、アイリスロック、絞りのクリックON/OFFスイッチ、ファンクションボタン、ズームリングの操作トルク切り替えスイッチを備える。
描写は高品位そのもの! FE50mmF1.2とは真逆の位置にある?

65mm時。発表時の第一印象としてはもっとガリガリ君だと思ってました。が、実際には大変幸せな気持ちにさせてくれる写りでした。お世辞抜きでお見事。
■絞りF2.0 1/80秒 プラス2.0露出補正
写真だけみている分には描写は単焦点レンズそのもの。特にボケが自然で良い感じ。強いて言えば、ボケの輪郭が強く出る距離や条件があり、光源ボケを周辺に持ってくると台形になる、みたいな重箱の隅をつつくような部分はあるけれど、総じて高品位な写りに驚かされた。誤解を恐れずに言えば、FE50mmF1.2 GMのような味わいかな?と思っていたが、本レンズはその対局にある。
解像感について、中央部は申し分なく高いけれど周辺に行くにつれてなだらかに低下する。と言っても程度は悪くない。ただF4まで絞っても大きくは改善されないようだった。そもそも論になるけれど、こういったレンズで常用的に平面を撮ることはないと思うので気になるシーンは少なそうだ。ズーム位置や撮影距離によっての描写傾向は安定していて、「ソニーの本気はスゲーな」という気持ちになります。

28mm時。団地のショップ街っつーのかな? 大好物なのです。電子補正されてんだろうけれど、歪曲は全く気になりませんでした。それにしてもエラい写るね…。
■絞りF5.6 1/100秒 マイナス1.0露出補正
撮っていて気になったことは、撮影後のプレビュー画像を見ていると、イジワルな撮り方をした際に周辺部で色収差がソコソコ出ていたこと。なので、実写中は「ま、さすがに収差出るよね」みたいな気持ちだった。が、PCでチェックしてみるとそういった部分は皆無。画像に付与されるラージサムネイルが生成されるタイミングの都合なのか、そういった仕様なのかは不明だけれど「え、なんで?」とは思う。
その価値は大いに認めるけど、やっぱり「お仕事レンズ」なんですよね。

70mm時。とび太くんをパチリ。ピントピークから像が崩れていく感じが凄くキレイで、単焦点レンズの感じをちゃんと狙ってるんだな、と感じられる写りにビックリ。聞けば、全数ボケ調整(収差調整)をやってから出荷されるって話。これならお値段にも納得。
■絞りF2.0 1/1000秒
ということで、技術の進歩を感じさせるトンデモナイレンズが登場したぞ、と称賛したい一方で、どちらかと言わなくても「お仕事レンズです!」の色が濃く、必要な人に向けたスペシャルレンズというのが本来の立ち位置だろう。そういった製品を無邪気に評価して良いものか、その判断は難しい。

28mm時。F5.6まで絞っても周辺までカリッカリなレンズってワケじゃないね。良いとか悪いといった話ではなく、そういう方向性ってことなのだろうね。全体的には上質な描写性だと思います…とかナントカ言ってますが、この口径とサイズでここまで出来るんだ、って驚きが強いよ。マジスゴイ。
■絞りF5.6 1/640秒 マイナス0.7露出補正
ちなみに、トヨタはカメラグランプリで、このレンズには投票しませんでした。理由はお仕事レンズだから。技術的なスゴさを紹介したいとも考えたけれど、そういう枠はRF70-200mmF2.8L IS USM Zの方が相応しいと考えました。
お値段的にノーマル枠ではない製品は、投票するにしても1本までと決めているので今回は選外。カー・オブ・ザ・イヤーにV12のフェラーリとかが選ばれても「で?」って思うでしょ?そういう感覚です。

40mm時。40mm前後は周辺までビシリと写るから、平面的なものを撮ると独特の気持ち良さがあるね。立体感がエゲツナイね。
■絞りF5.6 1/320秒 マイナス0.7露出補正
あとね、Φ86のフィルター径の標準ズームを称賛する感覚にはなれません。だけど、F2クラスの単焦点レンズを複数本持つことを思えば、かなりの機動力が得られることは事実。そういった部分を評価するなら間違いなく良い選択となるんじゃないかな。
と、ここまで記述してから海外レビューを漁ってみたのだけれど、そこでは年輪ボケについての言及がある反面、周辺までシャープという評価もありました。が、今回筆者が試した個体では年輪ボケは見当たらなかったし、周辺解像についてもソレナリという感じです。
さらにズームリングがスムースという評価についても疑問で、やはり筆者がテストした個体と別の場所で使った個体は、どちらも率直に言えば操作感は安っぽかったです。そんなこんなで、レビュー内容と筆者が使った個体との相関性が低いように感じられました。個体差なのか、海外レビューの個体はベータ機だったか…その辺りは良く分かりません。

70mm時。コンスタントF2.0ズームが云々、以前にスゲー写るんだよなぁ。描写性だけで言えば大好きかも。趣味でこのサイズを使かどうかは個人の自由なので特に思うところはありませんが、スナップ用途なら自分は選ばないかな。そういう意味でも「お仕事レンズ」としています。
■絞りF2.0 1/4000秒 マイナス0.7露出補正
