独特なアスペクト比とデジタルズームの概念
ここが本機の重要なポイントになると思うのですが、本機にはアスペクト比を簡単に切り換えるための「アスペクト比切換ダイヤル」と、デジタル的なズーム効果を簡単に切り換えるための「デジタルテレコン切換レバー」の2つが備えられています。
アスペクト比やデジタルズームの切り換えとか、なにを当たり前のことを大げさにと思われるかもしれませんが、実は本機にとってはこれがとても重要なのです。
「アスペクト比切換ダイヤル」は、その名の通り、アスペクト比を切り換えるためのダイヤルです。
デフォルトのアスペクト比4:3以外にも、馴染みの深い3:2や、銀塩中判カメラでお馴染みの1:1(6:6)、あるいは7:6などといった9種類のアスペクト比に対して、視覚的に即座に切り換えることができます。

アスペクト比17:6で撮影してみた作例です。17:6というのは、本格的なワイド写真が撮れる、往年の銀塩富士フイルムカメラのアスペクト比です。
■絞り優先AE(F5.6 1/160秒) プラス0.7露出補正 ISO80 WB:オート デジタルズーム80mm(35mm判換算63mm相当)
もうひとつの「デジタルテレコン切換レバー」はと言うと、こちらは固定搭載のレンズ本来の焦点距離35mm(35mm判換算約28mm相当)を、レバーを切り換えるごとに45mm(同約36mm相当)、63mm(同約50mm相当)、80mm(同約64mm相当)になります。

デジタルテレコンはいわゆる「クロップ」ですので、画素数が減少する分マイナスの効果と捉えられがちですが、何しろ元のポテンシャルが膨大ですので、本機で設定したデジタルテレコンなどは、画質的にそれほど問題にならないのではないかと思います。

本来の1億画素(焦点距離は35mm判換算で28mm相当)で撮影した作例になります。有り余る画素数を有効に使っていくことになりますので、少々のクロップ(デジタルテレコン)などは、画質的にほとんど問題になりません。
■絞り優先AE(F4.0 1/140秒) プラス0.3露出補正 ISO400 WB:8000K
ちょっと面白いなと感心したのが、これら「アスペクト比切換」と「デジタルテレコン切換」を組み合わせると、勝手知ったる「お馴染みのフォーマット」で撮影できるところです。
例えば、上の画像と同じ条件で、アスペクト比を3:2、デジタルテレコンを45mm(35mm判換算約36mm相当)にすると、ほぼ35mmmフルサイズデジタルカメラと同じフォーマットで撮ることができます。クロップした結果、焦点距離35mmのレンズで36mm相当の画角になるのですから、これはほとんどフルサイズという考え方です。この場合の画素数は約5470万画素。

■絞り優先AE(F4.0 1/250秒) マイナス0.3露出補正 ISO400 WB:8000 デジタルズーム45mm(35mm判換算36mm相当)
同じく、アスペクト比は3:2、デジタルテレコンを63mm(35mm判換算約50mm相当)にすると、ほぼAPS-Cサイズのデジタルカメラと同じフォーマットで撮ることができます。APS-Cサイズの焦点距離は、フルサイズの焦点距離(36mm相当)を1.5倍したもの(54mm相当)に相当しますので、この画角をほぼAPS-Cサイズ相当と考えるのは当たらずとも遠からずと言ったところではないかと思います。この場合の画素数は約2860万画素となります。

■絞り優先AE(F4.0 1/250秒) マイナス0.3露出補正 ISO400 WB:8000 デジタルズーム63mm(35mm判換算50mm相当)
さらに、アスペクト比を4:3、デジタルテレコンを80mm(35mm判換算約64mm相当)にすると、ほぼマイクロフォーサーズ規格のデジタルカメラと同じフォーマットで撮ることができます。厳密にはマイクロフォーサーズ規格よりいくらか広く高画素に撮れて、マイクロフォーサーズ規格と同等にトリミング可能と言った方が良いかもしれません。この場合の画素数は約1970万画素。

■絞り優先AE(F4.0 1/250秒) マイナス0.3露出補正 ISO400 WB:8000 デジタルズーム80mm(35mm判換算63mm相当)
「GFX100RF」は、さまざまなアスペクト比やデジタルテレコンを楽しめるのがウリのひとつですが、その中に概ねフルサイズやAPS-Cサイズ、マイクロフォーサーズ規格のフォーマットが十分な画素数で内包されているというのは、中判デジタルカメラならではの楽しい試みだと言えるのではないでしょうか。
妙に広めの単焦点レンズを固定搭載してきたなと思いましたが、独特な機能を使っているうちに、その意図を垣間見ることができたりしますので、むしろ嬉しくなってきます。
使用感を作例とともに
フィルムシミュレーションをACROS、アスペクト比を1:1にして撮影してみました。6×6でこそありませんが、かなり中判カメラらしい雰囲気を楽しむことができます。サクサクと楽しく撮れるのでついたくさん撮ってしまうのですが、データ量が多いため、気づけばバッファがいっぱいになっていたりします。使用するSDカードは高速で大容量のタイプがおすすめです。

■絞り優先AE(F4.0 1/220秒 ISO8000 WB:オート 内臓NDフィルター使用
固定搭載される35mmレンズは逆光耐性にも優れており、きわどい位置に強い光源を入れても、ゴーストやフレアが発生することはほとんどありませんでした。レンズ交換ができないカメラですので、この優れた性能は頼りがいがあります。被写体認識機能ももちろん備えていますので、ネコの瞳にピントを合わせるのも容易でした。

■絞り優先AE(F8.0 1/1250秒) マイナス1.3露出補正 ISO80 WB:8000K デジタルズーム63mm(35mm判換算50mm相当)
お休み中のネコに接近して撮影しました。メカニカルシャッターで撮影しましたが、レンズシャッター方式が採用されていますので、とても静かでネコを起こしてしまうこともありません。また、シャッターブレも少ないため、手ブレ補正機構を持たない本機であっても、比較的低速なシャッター速度まで手ブレの心配をせず撮ることができます。

■絞り優先AE(F4.0 1/140秒 ISO80 WB:オート
同じネコですが、今度はデジタルテレコンで焦点距離を63mm(35mm判換算50mm相当)にして撮影してみました。これでも約2860万画素ありますし、実際に画質に不満を覚えることはまったくありません。ズームレンズのように大型化することなく、様々な画角を楽しめるのですから「上手いこと考えたもんだ」と感心してしまいます。

■絞り優先AE(F4.0 1/250秒 ISO400 WB:8000K デジタルズーム63mm(35mm判換算50mm相当)
フジフイルムのデジタルカメラらしく、フィルムシミュレーションを自由に変更できるところも醍醐味のひとつです。懐かしさを感じるような雰囲気を演出したかったので、フィルムシミュレーションを「ノスタルジックネガ」、さらにホワイトバランスを「8000K」にして撮影してみました。

■絞り優先AE(F4.0 1/52秒) マイナス0.3露出補正 ISO800 WB:8000K
まとめ。レンズ固定とは思えない、様々な画像の変化が楽しめる!

はじめは単焦点レンズを固定搭載しただけの中判デジタルカメラかと思っていたのですが、実際に使ってみるとラージセンサーを搭載するデジタルカメラの利点を巧みに使った、新しいタイプのコンパクトデジタルカメラであることをヒシヒシと感じることができました。
多くのデジタルカメラに搭載されている「デジタルズーム」と「アスペクト比の変更」ですが、それをレバーやダイヤルで操作できるよう前面に押し出してきたことで、中判デジタルカメラでありながら、35mm判フルサイズやAPS-Cサイズ、はたまたマイクロフォーサーズに相当する画角と焦点距離を一台で賄うことができます。しかもカメラのサイズはコンパクトなままなのですから、サイコーに使えるスナップシューターと言えるのではないかとすら思えてきます。
所有する喜びも万全で、カメラ本体としての高級感はもちろんのこと、同梱されるアクセサリー類も満足できる品質を備えていますので、購入したその日から最大限に撮影を楽しむことができることでしょう。
ちょっと値段が張るのは仕方のないことですが、持ち合わせたビルドクオリティーの高さと良好な実用性を考えれば、決して高い買い物ではなく、それだけの価値があるカメラなのだと実感しました。