■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。
キヤノン RF75-300mm F4-5.6のインプレッション
忖度ナシで驚きのハイコスパ。想像以上の写りを見せる
本ムック締め切り直前に飛び込んできた驚きの一本。1999年発売のEF75-300mm F4-5.6III(日本未発売の海外モデルで、つい最近まで販売されていた)の光学設計を流用することで、開発リソースを極限まで削減し、製造工程でも既存部品の活用など、あらゆる部分で低コストを徹底し、3万円台の販売価格を実現している。

撮影機材の価格が右肩上がりのなかで、これは「令和の奇跡」と言って良い。ベースレンズ登場から25年経つので、さすがに樹脂部品の進化や鏡筒内部設計の改善はあると予想しているが、キヤノン公式ではそういった部分への言及はない。

ショーウインドウのトルソーを撮影。ガラス越しだが期待よりも写りが良く「おっ!」という気持ちになった。最短撮影距離が1.5mなのは少々不満。
絞りF6.3 1/320秒 マイナス0.3露出補正 ISO400
共通撮影データ/ EOS R8 プログラム AE ISO100 WB:オート
AFは従来レンズと同様にDCモーターが採用されている関係か、コストの都合かは不明だが、これまで全てのRFレンズに採用されていたコントロールリングを本レンズは持たない。鏡筒の質感についても、他のRFレンズからワンランク落とされている印象だが、製品価格からすれば妥当以上のもの。500mlのペットボトル1本分の大きさと重さとほぼ同じサイズというのもハンディで良い。
実写の感想は、お世辞抜きで想像以上。晴天日中でも開放絞りから十分にキレのある写りを楽しめた。DLO(デジタルレンズオプティマイザ)を含めたレンズ収差補正技術の進歩も利いているのだろう。AFは昨今の製品としては遅い方だが、それでも無限遠から至近端まで駆動させるような使い方をしない限りは鈍足が気になることはない。

絞り込んでいることもあるが、かなりの切れ味だ。望遠の使用頻度は高くないけれど、持ってないのは不安、というユーザーにも良い選択肢だ。
絞り F9 1/400秒 マイナス1.3露出補正 ISO200
レンズ内光学式手ブレ補正・ISも搭載されていないし、今回のカメラボディ・EOS R8のように、ボディ内手ブレ補正機能・IBISを持たない機種の使用でも、ISO感度に関する設定/オートの低速限界を標準から1に変更すれば、実用上問題なさそうだ。
RF100-400mmとの性能差が分かりやすい一方で、これで十分という層も多いはずだ。収益性では貢献度の低い製品であるが、価格面でユーザーに寄り添った姿勢を見せてくれたことはとても嬉しい。
Photo&Text 豊田慶記
キヤノン RF75-300mm F4-5.6のスペック
- 焦点距離:75~300mm
- レンズ構成:9群13枚画
- 角(対角線):32°11′~8°15′最短
- 撮影距離:1.5m
- 最大撮影倍率:0.06倍(75mm時)、0.25倍(300mm時)
- 最小絞り:F32(75mm時)、F45(300mm時)
- 絞り枚数:7枚
- フィルター径:58mm
- レンズフード:ET-60(別売)
- 最大径×長さ:約φ71.2mm×146.1mm
- 重量:約507g
価格:オープン(実売3万5200円)
発売日:2025/5/30