ニコンのフラッグシップミラーレス一眼「Z8」と「Z9」にはどんな違いがあるのか。成長と進化を続けるハイエンド兄弟機の性能をプロカメラマン・助川康史氏が実写して徹底比較!

■助川康史氏プロフィール
1975年10月生まれ、鉄道写真が専門のプロカメラマン。鉄道ジャーナルや時刻表表紙などで活躍中。(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ所属。日本鉄道写真作家協会(JRPS)所属。

ニコン Z8 と Z9 はどう違う? プロカメラマン助川康史氏(自腹購入!!)が比較レビュー

高速性と高画素を両立させたフラッグシップBros.

ニコンZ9が発売されて早3年(※記事執筆当時。2021年12月24日発売)。Z9を携えて線路際を彷徨う撮影行脚も3回季節が廻ったことになる。「ニコンフラッグシップミラーレス一眼」の言葉どおり9種類の被写体検出AF性能、完全電子シャッターやブラックアウトフリーのリアルライブビューファインダーに始まる各種性能や機能は、今までのZシリーズとは大きく一線を画す期待以上の仕上がりだった。

また、数度にわたるファームアップで新機能追加や性能面のアップが図られ、まさに成長&進化を続けるプロ機である。

そしてその1年半後に世に送り出されたZ8。Z9と同等の機能を有し、同じ画素数を誇るハイエンド兄弟機という位置付けながら、軽量コンパクトにまとめられたボディが風景写真やよりライトな撮影するユーザーの「軽快でありながら本格的な美しい写真を撮りたい」というわがままな心をがっちり掴んでいる。

画像: Z8はZ9から体積比で約30%、D850で15%小型化。Z9の重量から約430g軽くなっている。ただし、Z8にパワーバッテリーパックMB-N12を装着すると、全高はZ9よりも高くなる。正面から見た際のボディとの左右のツラが合わないのはちょっと残念…。

Z8はZ9から体積比で約30%、D850で15%小型化。Z9の重量から約430g軽くなっている。ただし、Z8にパワーバッテリーパックMB-N12を装着すると、全高はZ9よりも高くなる。正面から見た際のボディとの左右のツラが合わないのはちょっと残念…。

もちろん鉄道写真撮影でもZ9と同様のパフォーマンスを見せてくれる頼りがいのある機種だ。Z9とZ8の両機には既存の撮影スタイルはもちろん、今まで撮影が難しかった状況や不可能とさえ思われた撮影でも助けられ、そして何より私に新たな表現力を与えてくれた。

画像: Z8のカードスロットはZ9と同じXQDとコンパチのCFexpressと、新たに汎用性の高いSDカードとのデュアルに。

Z8のカードスロットはZ9と同じXQDとコンパチのCFexpressと、新たに汎用性の高いSDカードとのデュアルに。

特筆すべきは、積層型CMOSセンサーによって達成した完全電子シャッター化と、ブラックアウトフリー化を実現したEVF「リアルライブビューファインダー」を搭載したことだろう。動体を撮影する際に、電子シャッターはローリング歪みが出るために使用を控えている人も多かったはずだ。

しかし完全ではないものの、通常撮影では歪みが気になることなく十分に自然な描写力を得ており、約20コマ/秒の高速連続撮影と最高1/32000秒の超高速シャッタースピードが可能になった。

画像: HC85系『ひだ』を超望遠で顔アップイメージを狙う。置きピンではピントと列車のベストバランスの位置を掴むのが難しい。しかし被写体検出(のりもの)と高精度AFのおかげで最高の一枚に仕上がった。高山本線(飛騨小坂〜渚) ■Z8 Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR 絞りF6.3 1/500秒 ISO2000 WB:5000K

HC85系『ひだ』を超望遠で顔アップイメージを狙う。置きピンではピントと列車のベストバランスの位置を掴むのが難しい。しかし被写体検出(のりもの)と高精度AFのおかげで最高の一枚に仕上がった。高山本線(飛騨小坂〜渚)
■Z8 Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR 絞りF6.3 1/500秒 ISO2000 WB:5000K

今まで標準レンズで新幹線の編成写真を撮影する時は1/8000秒でも被写体ブレしてしまうという不満があったのだが、Z9の登場によってフィルム時代から続いていたその不満もついに解消することができた。

流し撮りを好む私にとって、両機のEVFは一眼レフ時代以上に流し撮りの成功率を大幅に引き上げてくれる。被写体検出「のりもの」も、走行中の編成写真撮影で今や無くてはならない機能である。

画像: ▲ブラックアウトフリーのEVFは流し撮り時に威力を発揮!イルミネーションと列車とのコラボをズーミング流しで挑戦したが、想像以上に美しい作品となった。 ■Z9  Z 24-120mm f/4 S 絞りF4 1/15秒 ISO3200 WB:4450K 東武鬼怒川線(大谷向〜大桑)

▲ブラックアウトフリーのEVFは流し撮り時に威力を発揮!イルミネーションと列車とのコラボをズーミング流しで挑戦したが、想像以上に美しい作品となった。
■Z9  Z 24-120mm f/4 S 絞りF4 1/15秒 ISO3200 WB:4450K 東武鬼怒川線(大谷向〜大桑)

一方で、Z9においてはフラッグシップ機でありながらD5やD6に比べて常用の最高感度が控えめだ。しかしこれは約45MPの高画素機にしたことで、より多くのユーザーに裾野を広げた結果ではないかと私は感じている。

ちなみに超高感度特性を優先したいハイエンドユーザーにはZ6Ⅲがおすすめ。ハンドリングの良い約24MPでZ9よりも最高常用感度が1段以上高いISO64000で撮影が可能だ。Z9、Z8、そしてZ6Ⅲと実に上手い棲み分けだ。

話が逸れたが、Z9やZ8に対して私は特に不満を抱いたことは無い。撮りたいものを確実に、そして期待以上の作品を生み出してくれる名機だからだ。ちなみに、現在の私の取材や撮影はZ9とZ6Ⅲという組み合わせがメイン。Z9は主に縦構図撮影で愛用しており、常に臨戦態勢でカメラバッグの中に収まっている。

画像: フラッグシップ機は高速連写やAF精度に注力し、そのぶん画素数は抑えめと思われがちだが、高画素機でもあるZ9は緻密な描写力も見逃せない。車両中心の撮影から鉄道風景写真までこなしてしまう。 ■Z9 Z 24-120mm f/4 S 絞りF13 1/800秒 ISO200 WB:晴天 津軽鉄道(芦野公園〜川倉)

フラッグシップ機は高速連写やAF精度に注力し、そのぶん画素数は抑えめと思われがちだが、高画素機でもあるZ9は緻密な描写力も見逃せない。車両中心の撮影から鉄道風景写真までこなしてしまう。
■Z9 Z 24-120mm f/4 S 絞りF13 1/800秒 ISO200 WB:晴天 津軽鉄道(芦野公園〜川倉)

ニコンZ8 / Z9 の「◯と×」

  • 9種類の被写体検出と高速&高精度AF
  • 確実な流し撮りが可能なEVF
  • 緻密な描写を誇る約45MPの高画素

  • 常用最高感度が他のフラッグシップ機より控えめ
  • 省エネ設計とはいえ、それでも電池の消耗が激しい(Z8)

(写真&解説:助川康史)

ニコン Z8 / Z9 のスペック

  • センサーサイズ:35mmフルサイズ
  • 画素数:約4571万画素
  • ファインダー:0.5型OLED EVF 約369万ドット
  • レンズマウント:ニコンZマウント
  • モニター:3.2型 約210万ドット
  • 感度:ISO 64~25600 ※拡張ISO 32/102400
  • 連続撮影速度: 約20コマ/秒 ※ハイスピードフレームキャプチャ+(C120)時は約120コマ/秒
  • 4軸チルトアングル タッチパネル
  • Z8:CFexpress Type B(XQD)/SDXC(UHS-II対応)デュアル
    Z9:CFexpress(Type B)/XQD デュアル
  • 大きさ:Z8 約144×118.5×83mm / Z9 約149×149.5×90.5mm
  • 重さ:Z8 約910g/ Z9 約1340g
  • 発売日:Z8 2023年5月26日 / Z9 2021年12月24日
  • 価格:Z8 59万9500円 / Z9 77万2200円(共にボディ)※価格は記事執筆時のものです
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この記事は『カメラマン リターンズ#13 間違いだらけのカメラ選び!! &デジカメBOOK 2024-2025』を転載したものです。本誌もチェック!↓

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