■曽根原 昇氏プロフィール
写真家、テクニカルライター。1971年生まれ、愛知県出身。信州大学大学院修士課程を修了。2006年よりフリーランスとなり、2010年に活動拠点を長野県より関東地方に移す。現在は雑誌、叢書、単行本などでの撮影や、カメラやレンズについての執筆も手がける。写真展に「イスタンブルの壁のなか」(オリンパスギャラリー東京/大阪)など。
OMデジタルソリューションズのフラッグシップモデル「OM SYSTEM OM-1 MarkⅡ」を曽根原 昇氏が解説
「有用な機能を引き継ぎつつ、連写性能やAF性能を確実に高めた」
2022年3月に発売されたOMシステムのフラッグシップモデル「OM-1」の後継機。その進化は大きなものではなく、基本的にはOM-1へ新機能が追加された程度に留まっている。

ライブGND機能が追加された。グラデーションフィルターの効果をデジタル処理で再現したものだがリアルなフィルターより汎用性が高く便利だ。手ブレ補正が強力なので手持ち撮影できるところも良い。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 12-40mm F2.8 PROⅡ 絞り優先AE(絞りF8.0 1/20秒) ISO200
■共通撮影データ/WB:オート
デザインも質量もほぼ同じ(グリップ部のメインダイヤルの表面処理が変更)であるが、メーカーロゴが「OLYMPUS」から「OM SYSTEM」に変更されたのが外観上の一番大きな違いであろう。また、モデルの違いを示すために、本モデルのボディ左下には「Ⅱ」のバッヂが貼られている。

OM-1と外観上の違いは少ないが、トップカバーのロゴのほか、正面右下の「Ⅱ」の表記とダイヤルの表面処理が滑りにくく変更されている。

OM-5に続いてOM-1も「OLYMPUS」から「OM SYSTEM」のロゴに変わったが、そもそも「OM SYSTEM」自体はフィルム時代からOMシリーズの総称として親しまれてきたもので、ロゴも当時のモノをベースにリファインされている。
ほとんどマイナーチェンジといっていいMarkⅡであるが、一番の新機能と言えるのがライブGND(グラデーションND)機能だ。これは画面全体に光量減少を掛けるライブNDに対して、画面を2分割した状態で掛けられるのが特長で、濃度はND2(1段相当)からND8(3段相当)まで選択可能。明暗差の大きな撮影シーンでも高輝度部と低輝度部を一枚の画像で表現することができる。グラデーションフィルターの効果を、光学フィルターを使わずにデジタル処理でリアルタイムに再現したものと言えば分かりやすいだろうか。

OM SYSTEM OM-1 MarkⅡの背面
ちなみに、従来のライブND機能もND2から最高でND128(7段相当)へと進化させている。風景撮影などで高価でかさばるND系フィルターを別途用意する必要がなくなるというのは、本当にありがたい機能である。

中央の丸印を任意の位置に動かし、角度を調整。それを基準に画面を二分割してND効果が得られる。グラデーションもソフト、ミディアム、ハードから、ぼかし加減を選択できる(写真:桃井一至)。
また、OMシステムのデジタルカメラ全般が得意とする手ブレ補正機能は、OM-1を上回る8.5段分の補正効果を達成しており、夜景をはじめとした暗所での手ブレ抑制はもちろん、前出のライブND/GNDやハイレゾショット撮影などでも大いに効果を発揮してくれる。

OM SYSTEM OM-1 MarkⅡの上面
その他にも、バッファメモリーの増強により高速連写時の撮影枚数が2倍以上に向上。高速連写SH2のコマ数設定も細分化されて、より被写体に合わせたコマ数が選択可能になり、連写をキープできる時間と共に使い勝手が向上している。
画質面でもAWBのアルゴリズムを改善することで、ミックス光などの難しい条件でもクリアな色再現が得られるようになったという。

低温化においても確実に動作するための耐低温-10°を実現し、世界最高基準の防塵・防水等級 IP53に対応(防塵・防滴性能を有するレンズ装着時)。堅牢性もフィールドでは大きな武器だ。
「OM SYSTEM OM-1 MarkⅡ」は地味ながらも着実に機能を磨いたOMフラッグシップ
星景写真も含めた風景撮影や、野鳥などネイチャー撮影などに最適なカメラ
AFについても、OM-1でときおりとっちらかった動作を見せることがあったが、AI被写体認識AFの強化により画面内の人物が小さくても認識できるようになったほか、枝の被る位置にいる鳥でもAFが追従するなど改善されている。
外観の変化の少なさや飛び道具的な新規デバイスの投入はないが、中身の進化は着実に進んでいるのだ。

望遠に強いマイクロ4/3規格の最新レンズ・150-600mmを使用。最大で1200mm相当の画角で、遠くて小さな小鳥も大きく写せる。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS 絞り優先AE(絞りF6.2 1/250秒) ISO200
そもそもOM-1 MarkⅡの基となったOM-1は、もともとマイクロ4/3規格で初めて積層型センサーを搭載したミラーレスカメラだ。オリンパスのOM-D時代からのプロキャプチャーやライブコンポジットなどの有用な機能を引き継ぎつつ、連写性能やAF性能を確実に高めている。OM-1 Mark Ⅱの進化が比較的地味に思えるのは、OM-1の完成度がすでに極まっていたということの証ではないかと思えてくるほど。

シャッターボタンを全押しする以前の瞬間を連続記録できるプリ撮影機能は、「プロキャプチャー」としてオリンパスが初搭載した機能。OM-1 Mark Ⅱではその機能にさらに磨きがかかっている。
■M.ZUIKO DIGITAL ED 150-600mm F5.0-6.3 IS シャッター速度優先AE(絞りF6.3 1/4000秒) ISO3200 静音+プロキャプチャーSH2使用
現在、同社はフィールドカメラとしてのシステム構成をアピールしているように感じられるが、OM-1 MarkⅡは、まさにその思想の頂点に位置するカメラなのだろう。交換レンズの充実度を考慮すれば、星景写真も含めた風景撮影や、野鳥など普通なら撮るのも難しいネイチャー撮影などに最適なカメラであることは間違いない。
OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1 MarkⅡ」の「◯と×」
⚪︎
・マイクロ4/3初の積層型センサー搭載機
・必要な人にはありがたい新機能のライブGND
・地味ながらも着実な正統進化
×
・ローリングシャッター歪みがちょっと大きい
・撮像センサーが更新されなかった
・不要な人には多すぎる諸機能
(写真&解説:曽根原 昇)
OMデジタルソリューションズ「OM SYSTEM OM-1 MarkⅡ」のスペック
- センサーサイズ:4/3型
- 画素数:約2037万画素
- ファインダー:OLED EVF 約576万ドット
- レンズマウント:マイクロフォーサーズマウント
- モニター:3.0型 約162万ドット
- 感度:ISO 200~102400 ※拡張ISO 80相当
- 連続撮影速度: 約10コマ/秒 ※静音連写SH1時 約120コマ/秒
- バリアングルタッチパネル
- SDXC(UHS- Ⅱ対応) デュアル
- 大きさ:約134.8×91.6×72.7mm
- 重さ:599g
- 発売日:2024年2月23日
- 価 格:実売29万5310円(ボディ)/ 35万4440円(12-40mm PROⅡキット) / 32万8000円(12-45mm PROキット) ※価格は記事執筆当時
本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓