ニコンのフルサイズミラーレスカメラ「Z6Ⅲ」の性能は? プロカメラマン・助川康史氏と豊田慶記氏、そして編集部・井上雅行が手に取り、実写して徹底レビュー! これを読めばZ6Ⅲのすべてがわかる、決定版の記事です。

■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。

■助川康史氏プロフィール
1975年10月生まれ、鉄道写真が専門のプロカメラマン。鉄道ジャーナルや時刻表表紙などで活躍中。(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ所属。日本鉄道写真作家協会(JRPS)所属。

■井上雅行プロフィール
モーターマガジン社写真部。クルマ関連の写真・動画を主に撮影。レースカメラマンとしても30年以上、国内外のモータースポーツを取材&撮影する。JRPA(日本レース写真家協会)副会長。

ニコンZ6Ⅲの進化のポイントは!? 助川康史氏が実写&解説

三代目にして 激進化! 機動力に溢れる ニューバランサー

ニコンZ6IIIの発表を受けて色めきだった鉄道写真愛好家は少なくないだろう。Z6シリーズはハンドリングの良い約2450万画素と高感度特性の高さから、アグレッシブな鉄道写真を撮る人にとってはまさにドンピシャな機種だった。だが、今回のZ6IIIはZ9やZ8のスピリットを継承したということで、さらに期待は膨らむ。そこで鉄道写真家である私が体感した、Z6IIIの進化した機動力や能力を少しだがお伝えしよう。

画像: 総武本線を1カ月に2~4往復しか走らないレア車両の『B.B.BASE』。失敗したくない列車の一つだが『被写体検出(のりもの)』&『高精度AF』でピントの心配とはおさらば! 緻密な構図取りに専念できる。総武本線(物井~佐倉) ■NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR 絞りF13 1/400秒 ISO 400 WB:晴天 ■共通撮影データ/ニコンZ6III マニュアル露出

総武本線を1カ月に2~4往復しか走らないレア車両の『B.B.BASE』。失敗したくない列車の一つだが『被写体検出(のりもの)』&『高精度AF』でピントの心配とはおさらば! 緻密な構図取りに専念できる。総武本線(物井~佐倉)
■NIKKOR Z 180-600mm f/5.6-6.3 VR 絞りF13 1/400秒 ISO 400 WB:晴天
■共通撮影データ/ニコンZ6III マニュアル露出

まずは何と言っても『被写体検出(乗り物)』&『高精度AF』の搭載が大きな魅力だ。走行する列車を大きく撮影する編成写真で、特に正確な『置きピン』がやりづらい望遠〜超望遠撮影では強力なサポートをしてくれる。『被写体検出(乗り物)』はAFポイントが捉えるべき列車の先頭部を正確に捕捉し続け、さらにZ9やZ8をしのぐ、最大マイナス10EVまで検出可能な『高精度AF』が、低輝度下でのピント合わせも可能にしている。また逆光下にも強いAFなので、ヘッドライトの輝きが強くなってきた夕暮れ時の編成写真撮影でもAF-Cが良い働きをしてくれる。Z6IIではAFが暴れてしまうような状況でも安心して使えるのだ。

画像: Z6Ⅲの性能を一番体感できるのがEVF。『高速連続撮影(拡張)』の電子シャッター設定にすれば、動画のような滑らかな表示になるので『流し撮り』もお手の物。撮影の楽しさが広がること間違いなしだ。 西武池袋線(高麗~武蔵横手) ■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF14  1/40秒 ISO100 WB:晴天

Z6Ⅲの性能を一番体感できるのがEVF。『高速連続撮影(拡張)』の電子シャッター設定にすれば、動画のような滑らかな表示になるので『流し撮り』もお手の物。撮影の楽しさが広がること間違いなしだ。
西武池袋線(高麗~武蔵横手)
■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF14  1/40秒 ISO100 WB:晴天

そして世界初の『部分積層型CMOSセンサー』の恩恵は計り知れない。 新型のCMOSセンサーというと、何かと絵作りばかりが気になってしまうが、イメージセンサーの性能はAF精度やEVF性能にも大きな影響を与える。特にZ6IIIの『部分積層型CMOSセンサー』はEVFの大幅性能アップに大きく寄与していると感じる。読み出し速度はZ9やZ8の積層型CMOSセンサー程でないそうだが、EVFの表示タイムラグは驚くほど少ない。また電子シャッターにすることで約20コマ/秒の高速連写が可能になるだけでなく、EVF表示が60fpsになることで、より滑らかに動体を追うことができる。

流し撮りで威力を発揮! 電子シャッターが普通に使える!

..となれば、鉄道写真撮影で特に威力を発揮する場面は『流し撮り』だ。連写時も動画を見ているかの如く動体が追える。もはや流し撮りのしやすさに関しては一眼レフをはるかに凌駕すると言っていい。ちなみに、電子シャッターが常用的に使えるようになったことも特筆すべき点だ。電子シャッターで誰もが気になるのが『ローリング歪み』だが、先述した編成写真撮影でも、列車の速度や大きさ、焦点距離によってローリング歪みは出てしまう。

画像: 日向灘の夜明けを特急[ひゅうが]と共に。朝陽が登った空と日向灘に注ぐ小丸川という明るい背景であっても、列車や船の暗部のディテールはしっかり。これがZ6IIIの広いダイナミックレンジの表現力だ。日豊本線(川南~高鍋) ■NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 絞りF7.1 1/2500秒 ISO800 WB:色温度(4500K)

日向灘の夜明けを特急[ひゅうが]と共に。朝陽が登った空と日向灘に注ぐ小丸川という明るい背景であっても、列車や船の暗部のディテールはしっかり。これがZ6IIIの広いダイナミックレンジの表現力だ。日豊本線(川南~高鍋)
■NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 絞りF7.1 1/2500秒 ISO800 WB:色温度(4500K)

ただ私の分析では、100km/hで走行する在来線を撮影する場合、150mm以上の望遠であればローリング歪みは気にならないだろう。それ以下の焦点距離やより速い速度の列車であればメカシャッターで撮影すれば良い。なので、鉄道風景写真や鉄道イメージ写真も含め、私は普段の設定は電子シャッターをデフォルトにしている。

画像: 梅雨時らしい雨がそぼ降る高麗川の畔で特急『ラビュー』を撮影。思った以上に暗いためにISO3200の超高感度を設定するが、ノイズが非常に少なくディテールもしっかり表現できる。 ■NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 絞りF8  1/1250秒 ISO3200 WB:色温度(4900K)

梅雨時らしい雨がそぼ降る高麗川の畔で特急『ラビュー』を撮影。思った以上に暗いためにISO3200の超高感度を設定するが、ノイズが非常に少なくディテールもしっかり表現できる。
■NIKKOR Z 24-70mm f/2.8 S 絞りF8  1/1250秒 ISO3200 WB:色温度(4900K)

そしてやはり約2450万画素ならではの、ダイナミックレンジの広さや高感度特性も忘れてはならない。高画素機とは違う、センサーの受光性能の高さと画像処理エンジン『EXPEED 7』が日中は豊かな階調を、夜間はノイズが少ない超高感度撮影を実現している。まだまだお伝えしたいことはたくさんあるが、この続きは是非ニコンプラザや量販店で手に取って確かめて欲しい。

助川康史が考えるニコンZ6Ⅲの「◯と×」

  • 被写体検出(乗り物)&高精度AFは強力な撮影サポートを実現
  • 美麗なだけでなく、滑らかで表示タイムラ グが少ないEVF

×

  • さすがにZ9やZ8に比べると、ローリング歪みは出やすい

(写真&解説:助川康史)
※『カメラマン リターンズ#11 間違いだらけのレンズ選び!! & レンズBOOK 2024』より転載

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「ニコンの本気が伺える仕上がり」豊田慶記氏がニコンZ6Ⅲの性能を徹底分析

Z9 & 8を上回るスペックを 盛り込んだ意欲作

「Zシリーズで最高画質」とアピールされるEVFと、コストと性能のバランスを模索した部分積層型CMOSセンサーを搭載するアッパーミドル機・Z6IIIが登場した。

画像1: Z9 & 8を上回るスペックを 盛り込んだ意欲作

名称からも分かる通りZ6シリーズの最新機種。Z6からZ6IIでの進化の歩みが非常に限定的だったため、筆者は「(ライバル各社から)周回遅れ」と評したが、本機はZシリーズのフラッグシップモデル・Z9やZ8を一部では上回るスペックを持つなど、ニコンの本気が伺える仕上がりとなっている。

画像2: Z9 & 8を上回るスペックを 盛り込んだ意欲作

冒頭でも触れた通り、現行のミラーレス機として最高となる4000cd/m2の明るさ(Z9/8は3000cd/m2)を実現したEVFは、576万ドットの解像度(同じく約369万ドット)となり、ニコン機で最高のスペックを誇る。実際にZ8などと覗き比べてみると、表示応答性に限って言えばZ9/8のほうが僅かに秀でているように見えたが、精細感では本機が明らかに優れていて充実の覗き心地が実現されていた。

画像3: Z9 & 8を上回るスペックを 盛り込んだ意欲作

また表示色域についても、従来機のsRGBからDCI-P3対応へとスペックアップ。階調モードがHLG記録の画像/映像では、撮影・再生時にHDRモニターに近い再現性がEVFで得られ、ワークフローの効率化が図れるが、JPEG記録では従来通りsRGBの表示となる。

画像: インターフェースはマイク端子とヘッドフォン端子の位置が入れ替わった。細かいことだが、三角環カバーからニコンロゴが消えた。グリップ形状の違いと、バリアングル化でボディの厚みが増したことがよく分かる。

インターフェースはマイク端子とヘッドフォン端子の位置が入れ替わった。細かいことだが、三角環カバーからニコンロゴが消えた。グリップ形状の違いと、バリアングル化でボディの厚みが増したことがよく分かる。

センサーは新開発の24MP部分積層型CMOSセンサー。「部分積層」とは、撮像部の上下に回路を積層配置させていることを示している。「コストと性能のバランスを模索したもの」とのことだが、とても面白い取り組みだ。読み出し速度がZ6IIの約3.5倍と自信を覗かせるが、その一方でフラッグシップモデルとの差は明示されない。知りたいのは上位との差だと思うのだが...。

画像: 背面モニターはZfに続き、バリアングルタイプが採用された。あと、再生ボタンとドライブモードボタンの位置が入れ替わった。それ以外のボタン配置は踏襲。AF-ONボタンが若干上を向いたことで押し易さがさらに良くなった。

背面モニターはZfに続き、バリアングルタイプが採用された。あと、再生ボタンとドライブモードボタンの位置が入れ替わった。それ以外のボタン配置は踏襲。AF-ONボタンが若干上を向いたことで押し易さがさらに良くなった。

動画性能は、画素数からも分かる通り6K/60pの動画記録にも対応する。8Kじゃないことに不満を覚える人もいるかもしれないが、世界の動画の主流はまだまだ4Kに達しておらず、必要十分なスペックだろう。外観は従来機の面影を残しつつも、グリップ形状や操作性を刷新。ボタン配置はZ8などと同じ配置になったほか、背面モニターはZ6IIのチルトアングルからバリアングルタイプへと変更された。

画像: Z8と比べると小さいが、Z6Ⅱからは大きくなっている。前後電子ダイヤルにラバー処理されているZ8は別格…という印象だ。こうやって並べてみるとZ6Ⅱがコンパクトに感じられ魅力的に思える。

Z8と比べると小さいが、Z6Ⅱからは大きくなっている。前後電子ダイヤルにラバー処理されているZ8は別格…という印象だ。こうやって並べてみるとZ6Ⅱがコンパクトに感じられ魅力的に思える。

スペックアップのせいか、重量増ではあるが外装をZ8と同じくカーボンコンポジットの素材とすることで増加分は約55gに抑えられている。とはいえ、ソニーのα1より重い。

ニコンZ6ⅢのEVF、使い心地、コスパの良さは?

性能的には出し惜しみナシ!ただし、国内価格を考えると...

手に取ると、グリップの感触は手の大きな筆者にとってはZ6IIの方が好ましく感じられた。一旦構えてしまえば手馴染みの良いカタチだと感じられたが、Z24-120mmなど、合計約1.4kgを超える組み合わせで撮影していたところ、筆者の手のサイズでは30分程度で中指と薬指へのストレスを感じた。個人差があるので、購入を検討している方は是非、実機でチェックして欲しい。

画像: Z9を超えたニコン最高の高精細EVF。Hi2設定で最高4000カンデラの照度を堪能できるが、目が眩みそうな程にまぶしいので注意。

Z9を超えたニコン最高の高精細EVF。Hi2設定で最高4000カンデラの照度を堪能できるが、目が眩みそうな程にまぶしいので注意。

EVFは覗き心地の良さはいつものニコンで、さらに精細感に優れ、ノイズ感も少なく素晴らしい。が、Z6などのEVFをいまだに良いと感じることも事実だし、筆者の印象では、カメラの質感はZ6IIの方が優れているように感じられた。

AF性能はZ6IIからすると一足飛び以上の進化を果たしており、業界標準となっているα7C IIやEOS R6 MarkIIに得手不得手を除けば追い付いた感がある。

画像: Zfに初搭載された手ブレ補正のAFポイント連動機能がZ6Ⅲにも採用された。ワイドレンズで周辺部をAFする際に効果的とのこと。

Zfに初搭載された手ブレ補正のAFポイント連動機能がZ6Ⅲにも採用された。ワイドレンズで周辺部をAFする際に効果的とのこと。

Z9/8での感触と比べると、センサーの読み出し性能の差が効いていると感じるシーンがあるが、そこまで厳しい撮影をするのであれば上位モデルを、ということだろう。その一方で、オートエリアAFはニコン機で最も賢く、これまで苦手だったシーンでも迅速かつ正確にAF動作をしていた。

画像: 被写体検出メニュー。あれ?鳥認識は??となりそうだけれど、動物に設定することで対応している。専用モードが欲しいところだ。

被写体検出メニュー。あれ?鳥認識は??となりそうだけれど、動物に設定することで対応している。専用モードが欲しいところだ。

総じて、Z6IIIは性能的には出し惜しみが無いと感じられた。ただ正直に言えば、税込・44万円に迫るボディ価格を考慮すると感心するほどではない。ライバルが進化した段階で「ちょっと高いかも...」と評価が渋くなってしまいそうな懸念があるのだ。

画像: 動画記録は最高6K/60pでの記録ができる。また読み出し速度が大きく改善されたことでFHDであれば最高240pに対応するので、スローモーション再生用途としても魅力的だろう。

動画記録は最高6K/60pでの記録ができる。また読み出し速度が大きく改善されたことでFHDであれば最高240pに対応するので、スローモーション再生用途としても魅力的だろう。

不満点は国内価格に対する質感の低さ。金属外装の従来機の方が質感は高く、メディアカバーを開く際の音の安っぽさや、閉じる際に下側を押すと不十分な閉じ感になることが気になった。生活に必要のないものを、どうやってユーザーに選んで頂いて、長くファンになって貰えるか?ということにもっと真摯であって欲しい...そう思った。

豊田慶記氏が考えるニコンZ6Ⅲの「◯と×」

  • 一足飛び以上の進化を果たしたAF
  • ニコンで一番良いオートエリアAF
  • 精細感あり、覗き心地の良いEVF

×

  • 国内価格に対する質感の低さ

ニコンZ6Ⅲのスペック

  • センサーサイズ:35mm(フルサイズ)
  • 画素数:約2450万画素
  • レンズマウント:ニコン Zマウント
  • 感度:ISO 100~64000※1
  • 連続撮影速度: 約14コマ/秒
  • ファインダー:0.5型 OLED EVF 約576万ドット
  • モニター:3.2型 約210万ドット
  • バリアングル タッチパネル
  • CFexpress(Type B)/ XQD/SDXC(UHS-II対応) デュアル

※1 拡張ISO50/204800

※2 メカ:高速連続撮影 拡張時/電子:20コマ/秒

  • 発売日:2024年7月12日
  • 価 格 :43万5600円(ボディ)/55万1100円(24-120レンズキット)
  • 大きさ:約138.5×101.5×74mm
  • 重さ:約760g

(写真&解説:豊田慶記 )
※『カメラマン リターンズ#11 間違いだらけのレンズ選び!! & レンズBOOK 2024』より転載

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ニコンZ6Ⅲを編集部員が自腹で買って撮影&レビュー!

Z9ではなくて、Z8のサブ機 としてなら完璧な三代目!

先代Z6II比で約3.5倍の高速読み出しを可能にした部分積層型24MPセンサーに最新の画像処理エンジン、そして9種類の被写体認識AFや8段の手ブレ補正効果(Z8以上)を引っ提げて登場したニコン・フルサイズミラーレス中核機の三代目。

JPEG撮影が基本の私にとっては、メインカメラZ9の高感度ノイズが悩みの種。かといって高感度番長のZ6系はAF性能的にイマイチだった。そんな悩みを解消してくれるZ6IIIの登場をどれだけ心待ちにしていたことか。発売と同時に飛びついた(チョット高かったが)。

画像: 縁石に乗り上げるシーンをDXクロップ&電子シャッターで捉えた。AFの追従性はZ9譲りだ。 ■NIKKOR Z 600mm f/6.3  VR S DXクロップ900mm相当 絞りF6.3 1/320秒 ■共通撮影データ/ISO100 WB:オート

縁石に乗り上げるシーンをDXクロップ&電子シャッターで捉えた。AFの追従性はZ9譲りだ。
■NIKKOR Z 600mm f/6.3  VR S DXクロップ900mm相当 絞りF6.3 1/320秒
■共通撮影データ/ISO100 WB:オート

サーキットでは、ピット内や記者会見など、あまりストロボを使いたくない場面でZ6IIIの高感度耐性が威力を発揮する。Z9ではあまりキレイとは言えなかったISO800でもノイズを感じることなく、ISO3200まで積極的に感度を上げられる。筆者の場合、Z9だとISO800までが許容限度だったので、撮影の幅が大きく広がった。

Z9のサブ機として使用するのであれば、走行シーンの撮影もこなせなくてはならない。Z6IIIのAF-C、CH+での動体捕捉力はZ9と併用しても違和感は感じられないくらい十分な実力を持つ。ただし両機の撮影フィールを揃えるには、Z6IIIのカスタムメニューでフレームレート120fps、そして電子シャッターを選択する必要がある。シャッター方式が「オート」のままだと電子先幕となり、EVFがブラックアウトはしないもののカクカクとした表示になってしまうからだ。電子シャッターにすればCH+でのコマ速も20コマ/秒に上がるうえに、Z9同様にEVFのリアルタイム表示が可能となる。

センサー読み込み速度の関係で、横方向の流し撮りでは背景にローリング歪みが発生するが、これはEVFでの追いかけやすさとトレードオフ。一眼レフに慣れている人は電子先幕でも十分追えるので、歪みが気になる人はそちらを選択すればいい。ただしクロップして超望遠効果を狙う場合などは、電子シャッターの方が圧倒的に撮影しやすいのも事実。この選択は実に悩ましいのだが、動きモノをメインに撮影する人はハイスペックな電子シャッター搭載のZ9、Z8をどうぞ、ということなのだろう。

画像: 横方向の流し撮りを電子シャッターで撮影。正確に振ればマシンは問題なく写る。背景のガードレールなどにローリング歪みが発生するが許容範囲か。 ■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF10 1/320秒

横方向の流し撮りを電子シャッターで撮影。正確に振ればマシンは問題なく写る。背景のガードレールなどにローリング歪みが発生するが許容範囲か。
■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF10 1/320秒

そしてZ6IIIで電子シャッターを選択している場合、ストロボ同調が上限1/60秒となってしまうので注意が必要。なので通常撮影ではシャッター方式は「オート」にしておいた方が良い。

これは状況に応じてメカシャッターと電子先幕を自動で切り替えるもので、デフォルトはこの状態だ。ややこしくなるが、電子シャッターと電子先幕やメカシャッターが自動で切り替わるモードは無い。走行シーンは電子シャッターで撮影し、ストロボ使用時には電子先幕やメカシャッターを、そんな設定があればいいのに...と思う。ちなみに、ハイスピードフレームキャプチャー(いわゆる「プリキャプチャー」)は強制的に電子シャッターになる。

またレンズ交換時にセンサーシールド機能が無いのも気になる。メカシャッターを閉じてくれれば良さそうなものだが、開いたままでセンサーは剥き出しだ。メーカーによると、シャッター幕とマウント面との距離が近いために、交換時にレンズ後端がシャッター幕と接触し破損する可能性があるためだとか。レース合間の移動中にレンズ交換をすることも多いので、大いに気を遣わなくてはならない。

画像: カスタムAFエリアの横1列を設定してスタートシーンを撮影する。Z9と同じ AFエリア設定ができるようになった。 ■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF7.1 1/1000秒

カスタムAFエリアの横1列を設定してスタートシーンを撮影する。Z9と同じ AFエリア設定ができるようになった。
■NIKKOR Z 100-400mm f/4.5-5.6 VR S 絞りF7.1 1/1000秒

筆者の場合、サブ機だとしても1日2000カット以上は撮影する。これだとバッテリー1つでは持たないのでバッテリーパックMB-N14を装着した方が良いのだが、Z9の電池EN-EL18dを使用できないため装着していない。電池を共用できないのにボディを大型化させることに意味を感じられないからだ。

そこがサブ機として残念な点だが、バッテリー、記録メディアを完全に共用できるZ8をメイン機とすれば、Z6IIIはサブ機とし完璧なのだろう。それでも、Z9の弱点である高感度ノイズを補うためだけにD5を手放せなかった私にとっては、システムがZニッコールに統一できたので、Z6IIIを導入して良かったことに変わりはない。

編集部井上雅行が考えるニコンZ6Ⅲの「◯と×」

  • Z9より2EV以上優れる高感度耐性
  • Z9同等に向上した3DトラッキングAF
  • 明るく見やすいEVF

×

センサーシールドがない

シャッター方式のメカと電子はその都度切り替えが必要

EN-EL18系対応のバッテリーパックがない

写真&解説:井上雅行(カメラマン編集部)
※『カメラマン リターンズ#13 間違いだらけのカメラ選び!! & デジカメBOOK 2024-2025』より転載

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