11年振りに復活したフジフイルム「X-M」シリーズの最新型「X-M5」。その性能は? プロカメラマン・豊田慶記氏が実際に撮影したインプレッションを交えて徹底解説します。

■豊田慶記氏プロフィール
広島県生まれ。日本大学芸術学部写真学科卒業。メカに興味があり内燃機関のエンジニアを目指していたが、植田正治・緑川洋一・メイプルソープ等の写真に感銘を受け写真の道を志す。スタジオマン・デジタル一眼レフ開発などを経てフリーランスに。作例デビューは2009年。カメラ誌でのキャリアは2012年から。カメラグランプリ外部選考委員。日本作例写真家協会(JSPA)会員。

フジフィルム「X-M5」は11年振りに復活したXシリーズのEVFレス機

「イマドキの動画寄りモデルだけど、サブ機としてかなり使える!」豊田慶記氏がフジフイルム「X-M5」を解説

X-Trans CMOSセンサーを搭載しつつも、ファインダーレスとすることでコンパクトにまとめた「X-M」シリーズの最新型が11年振りに復活した。名称は先代“X-M1”から4階級特進の“X-M5”。センサーとエンジンはX-S20と同じ26MPのX-TransCMOS 4と最新のX-Processor 5となり、静止画の撮影性能的には同等とのこと。

画像1: 「イマドキの動画寄りモデルだけど、サブ機としてかなり使える!」豊田慶記氏がフジフイルム「X-M5」を解説

X-T50と同じく、ボディ左肩にフィルムシミュレーションダイヤルを搭載したこともポイントのひとつ。それでいて右肩にモードダイヤルを持つ仕様はX-S20と同等で、Vlogモードのポジションがあるのも同じだ。

画像2: 「イマドキの動画寄りモデルだけど、サブ機としてかなり使える!」豊田慶記氏がフジフイルム「X-M5」を解説

X-M5のVlogモードは縦動画にも対応

Vlogモードには9:16ショート動画モードというSNS向けの縦位置動画を、カメラは横位置のまま縦動画での録画(解像度はフルHDに固定/1080x1920)ができる設定が追加されたことが新しい。

これはとても面白い試みだと思うけれど「縦動画スマホで良くね?」という気持ちも正直アル。とは言え、横位置のまま縦動画が録れるモードを実装してきたことに対しては称賛したい気持ちがあるし、今後の動画鑑賞環境を占う上でも興味深い。

スチル派としては、背面モニターはバリアングルなので、EVFを持たないX-E4だと思って本機を使いたいユーザーは少しだけ注意が必要かもしれないし、バリアングル歓迎! という場合には朗報だろう。

画像: 通常のチルトよりもバリアングルモニターの方が便利だったりもする。少し気になったのはモニターの輝度が他のXシリーズと比べてやや低いように見えること。屋外では輝度最大でも視認性があまり良くなかった。

通常のチルトよりもバリアングルモニターの方が便利だったりもする。少し気になったのはモニターの輝度が他のXシリーズと比べてやや低いように見えること。屋外では輝度最大でも視認性があまり良くなかった。

X-M5のデザイン、質感、メディア

箱は哀しいけれど、隠れたところの質感が素敵♪

機材が届いてまずビックリしたのが、化粧箱が「資源と環境に対する配慮に溢れる仕様」となったこと。もちろん化粧箱の有無がリセールに影響しない昨今ということもあるし、重要度は下がっているのかもしれないけれど、趣味のモノだからこそ、購入時のワクワクを大事にして欲しかったと思う。

さて、小言はこのくらいで、想像以上にコンパクトだし、デザインもトヨタ基準ではかなり好感触。写真で見るより実物の方が印象は良かったこともあって「コシナレンズとの相性が良さそうだぞ…」という予感がビンビン。

アレコレと弄くり回していると、ちいサイズが災いしてか、手のデカい筆者(手袋のサイズ2L〜3L)にとってはFSダイヤルとモードダイヤルが少し操作しにくい感じがあった。

その一方で前後の電子ダイヤルの操作感はかなり良くてニンマリ。前ダイヤルはプッシュ操作対応というのも、Xシリーズユーザーとしては嬉しいポイント。気に入ればX-Pro2代わりに買っても良いかな?と、ワリとマジで思いました。

画像: バッテリーはNP-W126Sを使用。X-E4やT50Ⅱ以外にもX-Pro3やT3、X100シリーズが採用するバッテリーだ。メディアスロットはバッテリー室に同居のシングルスロットでUHS-I対応。

バッテリーはNP-W126Sを使用。X-E4やT50Ⅱ以外にもX-Pro3やT3、X100シリーズが採用するバッテリーだ。メディアスロットはバッテリー室に同居のシングルスロットでUHS-I対応。

質感で一番ビックリしたのは、バッテリー蓋を開けた時の質感が素晴らしく良いこと。X-S20やX-T50の質感を進んで褒めたいと思わなかったけれど、X-M5については「なかなか頑張ってるぞ」と言いたい。

逆に少し残念だったのは、メディアがUHS-I対応であること。26MPセンサーだし、撮ることに関しては用途的にもUHS-Iで十分なのでしょう。だけれどもPCへの転送速度にはソコソコの差が出てくるので、撮影枚数の多い筆者としては何とかしてUHS-Ⅱの採用を頑張って欲しかった。まぁ、コスト的に仕方なかったのかな。

画像: 並べてみるとX-M5の縦にも横にもコンパクトであることが際立っていることが分かる。その一方で、X-T50がIBISをこのサイズに詰め込んだという驚きも同時にやってくる。

並べてみるとX-M5の縦にも横にもコンパクトであることが際立っていることが分かる。その一方で、X-T50がIBISをこのサイズに詰め込んだという驚きも同時にやってくる。

画像: 横方向のサイズは意外にもほぼ同等に見えるがT50は約12mm大きく、デザインの妙がある。カメラバッグへの収納性はX-M5が良いが、レンズ装着状態ではそこまでの差ではなく、むしろX-T50の全部盛り仕様が輝いて見える。 X-E4よりも一回り小さなX-M5。背面モニターのサイズはほぼ同等であり、右側のスペースをかなり削っていることが分かる。EVF分のスペースを削減しただけでなく、内部構造の最適化も図られたのだろう。

横方向のサイズは意外にもほぼ同等に見えるがT50は約12mm大きく、デザインの妙がある。カメラバッグへの収納性はX-M5が良いが、レンズ装着状態ではそこまでの差ではなく、むしろX-T50の全部盛り仕様が輝いて見える。
X-E4よりも一回り小さなX-M5。背面モニターのサイズはほぼ同等であり、右側のスペースをかなり削っていることが分かる。EVF分のスペースを削減しただけでなく、内部構造の最適化も図られたのだろう。

X-M5の実写インプレッション

EVFも手ブレ補正もないけど、サクサク撮れて抜群に楽しい♪

「買う気マンマンで実写するぞ!」ということでXF35mmF1.4と組み合わせてスナップに繰り出した。レリーズ感がX-E4に似ているような? という気がするけれど、どうだろう?? ともあれ、IBIS(ボディ内手ブレ補正)機特有の制震性重視のサイレントな感触ではなく、どこか心地良さがある。アッチも好きだけど、やっぱコッチも良いよね♪…って感じ。

画像: 描写はいつものフジ。ISO感度が高めなのは、手ブレにビビって速めのシャッター速度で撮りたかったから。1/500秒でもブレる時はブレるし、俯瞰はブレやすい(トヨタ比)から、自分の使い方としてはIBISやOISは欲しいです。 ■XF35mmF1.4R 絞りF2.8 1/500秒 マイナス1.3露出補正 ISO320 フィルムシミュレーション:エテルナブリーチバイパス ■撮影共通データ/絞り優先AE WB:オート

描写はいつものフジ。ISO感度が高めなのは、手ブレにビビって速めのシャッター速度で撮りたかったから。1/500秒でもブレる時はブレるし、俯瞰はブレやすい(トヨタ比)から、自分の使い方としてはIBISやOISは欲しいです。
■XF35mmF1.4R 絞りF2.8 1/500秒 マイナス1.3露出補正 ISO320 フィルムシミュレーション:エテルナブリーチバイパス
■撮影共通データ/絞り優先AE WB:オート

AFの感じは、筆者が普段使っているX-T5と比べても違和感はないので、小さく軽いって部分が引き立ちます。コンパクトだけどサクサク撮れるカメラって抜群に楽しいよね。

画像: エテルナブリーチだと思った人もいると思うけど、リアラエースです。コントラスト上げて、彩度は下げてNRを最低にすると良い感じでした。このシーン、全然AFが来なかったからMFで激しく連写。「EVFさえ装備されていれば!」って思いながら。 ■XF35mmF1.4 R  絞りF3.2 1/420秒 ISO320 フィルムシミュレーション:リアラエース

エテルナブリーチだと思った人もいると思うけど、リアラエースです。コントラスト上げて、彩度は下げてNRを最低にすると良い感じでした。このシーン、全然AFが来なかったからMFで激しく連写。「EVFさえ装備されていれば!」って思いながら。
■XF35mmF1.4 R  絞りF3.2 1/420秒 ISO320 フィルムシミュレーション:リアラエース

画像: 写りは「いつものXシリーズ」で、もはや完成されてる感あり。コンパクトで小気味よく撮れて楽しいのだけど、LCDの視認性があと一歩な印象は否めず。 ■XF35mmF1.4R 絞りF2.8 1/340秒 マイナス0.7露出補正 ISO320 フィルムシミュレーション:エテルナブリーチバイパス

写りは「いつものXシリーズ」で、もはや完成されてる感あり。コンパクトで小気味よく撮れて楽しいのだけど、LCDの視認性があと一歩な印象は否めず。
■XF35mmF1.4R 絞りF2.8 1/340秒 マイナス0.7露出補正 ISO320 フィルムシミュレーション:エテルナブリーチバイパス

で、Voigtlander ULTRON27mmF2と組み合わせてスナップをしてみると、これが期待したより面白くない。晴天日中だとやはりLCDのみではMFがやり難くて「チッ」と思うことが多いってのが理由。ちなみにEVFを持たないミラーレス機にはパナのS9があるけれど、アチラの方がMFはやりやすいように感じた。IBISの有無を抜きにしてもS9の方がMFの快適性は上じゃないかな。ということで、VoigtlanderではなくXF27mmみたいなAFで薄いレンズと組み合わせるのが良さそうです。

画像: XF27mm装着状態の佇まいはとても良い感じ。ボディの質感は悪くないのだが、レンズの動作がかなり雑なことが気になった。AFの動作感が良いXF23mmF2R WRやXF16mmF2.8R WRと組み合わせたくなる。

XF27mm装着状態の佇まいはとても良い感じ。ボディの質感は悪くないのだが、レンズの動作がかなり雑なことが気になった。AFの動作感が良いXF23mmF2R WRやXF16mmF2.8R WRと組み合わせたくなる。

総じて凄く良さそうなのだけれども、写真主体の自分の使い方とは違うかな?という感想。動画向けに結構、頑張ってはいるし、タイムコード同期設定がATOMOS AirGlu BTに対応しているなど、フィックスで録画する用のコンパクトなカメラが欲しい人にとっては、かなりお手頃にシステム参加できる画質の良い機種が手に入る。コレって、かなり魅力的だと思う。

フィルムシミュレーションがあるからLogで記録しなくても十分使える、といった声を実際に聞いたことがある身としては、X-M5の真のユーザーが見えたような気がします。

結論としては、X-E4やX-Proシリーズの代替としては力不足というか、方向性が違うぞ、です。佇まいが良いから期待しちゃったけど、X-M5が開拓しようとしている方向やユーザー層が垣間見えて、製品作りって面白いなと思いました。

画像: X-M5はシャッターダイヤルではなくモードダイヤルを持つ。左肩にはフィルムシミュレーションダイヤルを備えた点がX-E4との大きな違い。露出補正ダイヤルから指標が消えたが、無い方が使い勝手は良いように思う。

X-M5はシャッターダイヤルではなくモードダイヤルを持つ。左肩にはフィルムシミュレーションダイヤルを備えた点がX-E4との大きな違い。露出補正ダイヤルから指標が消えたが、無い方が使い勝手は良いように思う。

豊田慶記氏が考えるフジフイルム X-M5の「◯と×」


・カッコイイ!
・お手頃な価格
・上位機譲りの高い撮影性能
・画質が良い

×
・背面モニターの視認性
・元箱が残念…

(写真&解説:豊田慶記)

フジフイルム X-M5のスペック

  • センサーサイズ:APS-Cサイズ
  • 画素数:約2610万画素
  • レンズマウント:フジフイルムXマウント
  • モニター:3.0型 約104万ドット
  • 感度:ISO 160~12800 ※拡張ISO 80/51200
  • 連続撮影速度: 約8コマ/秒(メカ)※ 電子シャッター時は約20コマ/秒
  • バリアングルタッチパネル
  • SDXC
  • 大きさ:約111.9×66.6×38.0mm
  • 重さ:約355g
  • 発売日:2024年11月28日
  • 価 格:13万6400円(ボディ)/15万2900円(XC15-45mmレンズキット)

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本記事は「カメラマン リターンズ#13」の記事を転載したものです。興味のある方は、本誌もぜひチェックしてみてください!↓

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