■撮影共通データ:Nikon Z 8 露出モード=マニュアル
AstrHori 120mm F2.8 MACRO 2X 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算120mm相当
●最短撮影距離:0.3m
●最大撮影倍率:2.0
●レンズ構成:9群14枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:13枚
●フィルターサイズ:72mm
●大きさ・重さ:φ約77×158mm・約930g
●マウント:E/RF/Z/L/EF
使い勝手の良い望遠マクロ
「AstrHori(アストロリ)」は中国深センのレンズブランドで、世界30カ国以上の地域で、高品質なレンズをリーズナブルな価格で販売している。それと共に、それは何に使うのか? のようなユニークなレンズや、そこを突くか! というようなマニアックなレンズも販売している、今注目のブランドだ。
本レンズは、最大撮影倍率2倍の拡大能力を有する、マニュアルフォーカスのマクロレンズで、焦点距離は120mm(35㎜判換算)、開放F値はF2.8のスペックを有する。今回はZマウント=ニコン Z8との組み合わせで使用した。
最短撮影距離は0.3mだが、120mという望遠画角と2倍の最大撮影倍率のおかげで、体感的にかなり寄れるレンズというイメージだ。マクロレンズで寄れるとなると、被写体にずいずい近付きたくなる。そんなときの本レンズの利点が、インナーフォーカス形式だということ。
ピント位置を変えたときにもレンズの全長が変わらない=レンズの繰り出しがない。これは、たとえば被写体となる「花のシベ」に近付いての撮影中に、フォーカス位置を変えたがために周囲の他のシベにレンズが接触して花粉が付いた……のような事故も起きにくい。
また、13枚の絞り羽根は円形絞りを採用しており、ボケの滑らかさはもちろん、肉眼では気が付かないような光の丸ボケを写真内に生み出してくれることが多い。キラリと光るものがあればレンズを向けたくなるので、スナップ撮影にもお勧めしたいレンズだ。
逆光時の独特のフレアーも楽しめます!
レンズ構成は9群14枚(高屈折レンズ3枚、EDレンズ4枚)で、コントラストの高い画が得意なレンズだと感じた。特に、半逆光の状態でのポートレートの描写性能は素晴らしく、肌の質感からまつ毛一本一本まで繊細に描き出している。
かと思えば、撮影者の目が開かないほどの強い逆光状態で撮影してみると、オールドレンズのような、ふんわりとした大きなフレアーが発生。これは好みが分かれるところだろうが、筆者は一本のレンズでシャープな画と、ふんわり優しい画が撮れることは、ポートレートのレンズとしてはメリットとして捉えている。普通は、そんなに強すぎる逆光での撮影はしないだろうし。
ただ重量が約930g(Zマウント)と、そこそこ重いので、手持ちでの長時間撮影はちょっと大変かも。またマニュアルフォーカスのレンズなので、ピント合わせに不安を感じる方もいるかも知れない。が、ピントの山を見やすい高性能なファインダーと、ピント箇所を拡大する機能、拡大表示をシャッター半押しで解除できる機能を持つカメラを使用すれば、それほど苦労せずに本レンズを楽しむことができるだろう。
AstrHori 28mm F13 Macro 2:1 Pro ペリスコープレンズ
●焦点距離:35mm判換算28mm相当
●最短撮影距離:0.8cm(レンズ先端から)
●最大撮影倍率:2.0
●レンズ構成:16群21枚
●最小絞り:F40
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:装着不可
●大きさ・重さ:φ65×460mm・約830g
●付属品:レンズボックス、USBケ-ブル(調光用コントローラー付き)
●マウント:E/RF/Z/L/EF
これってナニ?? 圧倒的なインパクト!
個性的な外観の本レンズは、「虫の目レンズ」とも呼ばれるマクロレンズだ。細長いペリスコープをメインユニットに付けることで、最大撮影倍率2倍、レンズ先端から最短0.8cmまでのマクロ撮影が可能になる。
焦点距離は28mm(35mm判換算)で、絞りはF13-40、絞り羽根枚数は7枚、レンズ構成は高屈折レンズ2枚、低分散レンズ2枚を採用した16群21枚…と、スペックを並べたところでこのレンズの外観の面白さには敵わないだろう。
使用した一番の感想は、被写体にぶつかるほど近付ける。とすると、レンズ面の傷が心配になってしまうが、耐久性の高いサファイアガラスを採用しており、その心配はなさそうだ。
モノがモノゆえ、遠隔シャッターが無難。
また、レンズ先端は20cmまで完全防水なので、レンズの先を水中に入れての撮影も可能。マニュアルフォーカス故に、あまり動きの激しい被写体の撮影は難しいが、ミニチュアやアクアリウム、水ハネが気になる料理撮影などで活躍しそうだ。
近付き過ぎると被写体が暗くなってしまうが、USBポートから給電することでレンズ先端のLEDリングライトが使用できる。室内の撮影なら、積極的に活用したい機能だ。
三脚を使用してブレにくい状況で撮影しても、長い筒状のレンズはシャッターボタンを押す衝撃で揺れやすい。そこでスマホのアプリを使用して遠隔シャッターで撮影するか、カメラ本体のタイマー機能を使用して、カメラを触らない状態でシャッターが切れる方法で撮影するほうがいいと感じた。
ガラスの器に水滴を垂らして、ほぼ撮影最短距離から各絞り値で撮影してみた。絞り値F20の描写がボケすぎず、写しすぎずで、筆者好みの描写になった。ガラスの器に点々と写り込んでいるのは、レンズ先端部のLEDライトだ。補助光として、画面右下から小型のLEDライトでも照らして明るくしている。
マクロレンズの撮影だと、花や昆虫の標本写真を考えがちだが、接写できることの面白さを取って、イメージ写真を撮影するのも楽しいだろう。その際は、明るい撮影状況としっかりとした三脚での撮影をお勧めする。
今回は2本のマクロレンズを紹介したが、最近の中国製レンズは価格を超えるような高性能なものや、これまでのレンズでは考えられないような面白ろスペックのレンズが続々発売されている。ほとんどはお財布に優しい価格なので、気軽に試せるのも人気のひとつと言えるだろう。今回も実際に撮影してみて「この価格でこれだけ遊べるなら…」と、高い満足感が得られた。