■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
コシナ Voigtlander NOKTON Classic 40mmF1.4 MC VM 主な仕様
●焦点距離:40mm
●最短撮影距離:0.7m
●レンズ構成:6群7枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:43mm
●大きさ・重さ:φ55×29.7mm・175g
●付属品:-
スペック競争に背を向けた「情熱コシナ」の原点??
伝統的なレンズ構成を現代版にアレンジしつつも、球面レンズのみで設計。これは昨今の主流である「絞り値や撮影条件に依らず安定してシャープで高コントラストな描写を提供する」高性能レンズとは一線を画すもの。いわゆる「レンズの味」を楽しむというコンセプトだ。
20年前のこのコンセプトを打ち出したというのは、かなり攻めているように思う。「光学性能を追求することが、本当に写真にとって良いことなのか?」 まるでそう問いかけているかのような、情熱的なレンズなのである。
全長が30mm未満という驚きのサイズ感で、重さも175gしかない。それでいて開放F1.4というのは現在の感覚では異色。いかに光学性能重視で肥大化が進んでいるのか? が分かるような気がしてくる…が、ユーザーの購買理由に「性能向上」がある以上は仕方のないことなのだろう。
ユーザーとメーカーは共犯関係にあるということを思い出させる現実がそこにあるが、全部が全部そっち方面にならなくても良いんじゃないですかね?
絞りリングのステップは他のフォクトレンダーブランドと同様に1/2段。操作感はいつものコシナレンズそのもので、とても心地良い。今回の試用機材の製造年と使用状況は不明だが、仮にこのクオリティを20年も維持出来ているのだとしたら、それは大変に素晴らしいことである。
最短撮影距離は0.7m。ヘリコイドアダプタ(LM-LSL M Ⅱ)全伸ばしの状況では、指標まで約26cm、レンズ先端からは約20cm弱まで接写することができた。
う~ん、なんというか、周辺を除けばそれほど「クラシック」ではないかも…。
開放絞りだともっとポワポワしてると思っていましたが、全然普通に使えましたよ!…みたいな温度感で書くと怒られそうですが、実際問題として、普通に良く写ります。
もちろんポワポワ(味わい)させようと思えば、そうなる条件を理解していればポワポワを活かした撮影も楽しめます。でも基本的には結構シャープで気持ち良く、絞ればさらにキリリとしてスッキリ系の描写。
ヘリコイドアダプタ運用じゃなければ、むしろコンパクトなのに明るくて性能の良いヤツ、みたいな印象を持っているユーザーも居るかも知れません。
2024年のミラーレス機の感覚だと、周辺は正直「それなり」。
だけど、日常的に周辺のフレームギリギリに被写体を配置するような使い方じゃなければ気にならないハズ。
絶妙な立ち位置こそがロングセラーの理由なのでしょう。
どうしても周辺部をチェックしてしまうんだ…って人は、まだこういったレンズに手を出す時期ではありません。心を強く持って、純正のお高いレンズを選ぶか、LマウントユーザーであればシグマのArtラインを選びましょう。それが健全です。
ただし、もし、こういうレビューの写真を見て「ピン」と来てしまったのであれば、機は熟したのだ、と。
レンズの得意(スッキリ写る)なところを積極的に使えるようにするには? とか、逆に味わい部分を意図的に発生させるにはどうすれば? な使い方を模索してみたり。
そんな感じでアレコレ試してみるのが楽しく、コンパクトであることで足取りも軽く。
読書で言えば「読後感の爽やかなレンズ」って感じ。
性能だけでも味わいだけでもない、中庸さもしっかりと持ち合わせたバランス感覚に優れたチューニングだからこそ、ロングセラーとなっているのだと思いました。
ちなみに次回はSC=シングルコート編をお送りする予定です。