2年前にソニーEマウント用が先行発売されていたタムロン50-400mm F/4.5-6.3 Di Ⅲ VC VXD、このレンズに待望のニコンZマウント用が発売となった。ニッコールZ100-400mmよりテレ側F値が1/3段暗いものの、その分コンパクト。さらにワイド側が50mmからと汎用性の高さも売りのこのレンズを、レースカメラマンがレポートする。
■共通データ AF-C WB:オート

コダワリというよりもはや矜持? のフィルター径67mm

テレ側開放をF6.3、フィルター系67mmと抑えたことで、メーカーではコンパクト超望遠ズームと謳ってはいるが、実際の大きさ重さはどうだろうか。ニッコールZ100-400と比べてみた。

ワイド側での全長はニッコールZの222ミリに対し。タムロンは186ミリと36ミリコンパクト。ただしテレ側に伸ばすとその差はグッと縮まり10ミリ程度の差に。重量はニッコールZが三脚座込みで1435g、一方タムロンは1180gだが別売りの三脚座をつけると約200g増えるので両者の差はほとんどなくなる。

ニコンに負けずタムロンもズッシリとした高画質を期待させる質量感だ。理由は後述するが、この三脚座はぜひとも装着して使用することをオススメする。

画像: 上段:ニッコールZ100-400mm 下段:タムロン50-400mm ワイド側全長の比較、レンズ径はほぼ同じ。

上段:ニッコールZ100-400mm 下段:タムロン50-400mm ワイド側全長の比較、レンズ径はほぼ同じ。

画像: テレ側400mmにズームすると両者の差はほとんどなくなる。この状態でも鏡筒先端の強度は十分。

テレ側400mmにズームすると両者の差はほとんどなくなる。この状態でも鏡筒先端の強度は十分。

画像: レンズ側でのAF切り替え可能。また、ボタンの機能はPCでカスタムもできる。

レンズ側でのAF切り替え可能。また、ボタンの機能はPCでカスタムもできる。

純正を超えた? VXDリニアモーター採用

今回は400mm側での使用をメインに、サーキットで使用してみた。ニコンが頑なにSTMを使用するのに対し、タムロンはVXDというリニアモーターを採用している。レーシングスピードで走行するマシンを捉えるのにVXDのタムロンがかなり有利では? と期待を込めて撮影に臨んだ。

確かにAFの出足はタムロンの方が速く、ニコン純正を凌駕するまさに価格の下克上。しかしマシンを捉えてからの連写ではSTMとVXDの差はあまり無く、両者同等のAF捕捉力だ。ニッコールZ100-400mmはSTMを2個搭載しているせいもあるのだろう。

しかしレース以外の、不規則な動きをするスポーツ撮影では、初動の速いタムロンに分があると思われる。動画はともかくスチル撮影ではSTMよりリニアモーターの方がメリットが大きいので、このレンズの存在価値は大きい。

画像: VXDリニアモーターによる高速AFはZ9以外のボディでもその威力を発揮する。ゴースト、フレア耐性も良好だ。 ■ニコン Z6Ⅲ 400mm 絞りF9 1/640秒 ISO800

VXDリニアモーターによる高速AFはZ9以外のボディでもその威力を発揮する。ゴースト、フレア耐性も良好だ。
■ニコン Z6Ⅲ 400mm 絞りF9 1/640秒 ISO800

画像: レース終盤でのポジション争いを捕捉し連続撮影を開始する。 ■ニコン Z9 400mm(DXクロップ600mm相当) 絞りF7.1 1/800秒 ISO500

レース終盤でのポジション争いを捕捉し連続撮影を開始する。
■ニコン Z9 400mm(DXクロップ600mm相当) 絞りF7.1 1/800秒 ISO500

画像: ズームアウトしながらの連続撮影。途中一瞬だけピントを外すもVXDリニアモーターが瞬時に補正してくれた。 ■ニコン Z9 135mm(DXクロップ200mm相当) 絞りF7.1 1/800秒 ISO800

ズームアウトしながらの連続撮影。途中一瞬だけピントを外すもVXDリニアモーターが瞬時に補正してくれた。
■ニコン Z9 135mm(DXクロップ200mm相当) 絞りF7.1 1/800秒 ISO800

純正Sラインに肩を並べるタムロン技術の結晶!

では画質はどうか? 結論から言えば、解像度についてはSラインのニコンと見分けが付かなかった。さらに、以前テストしたニッコールZ28-400mmのテレ側よりも良好だ。ただし開放F値での周辺光量の低下がタムロンでやや目立つ(筆者は周辺光量補正をOFFにしている)。

フィルター径67mmに拘らずに前玉を大きくすれば発生しなかったのに、と思うのは素人考えだろうか? ただこれはカメラ側の補正量によっては影響はないだろうし、そのままでも雰囲気ある描写になるので筆者には気にならない。

さらに言えば、DXクロップすることでこの現象は解消できる。正直、この描写力は2倍の金額を払ったニッコールZ100-400mmユーザーにはややショックな結果だと思われる。

画像: テレ側開放でやや目立つ周辺光量の落ち込みだが、むしろいい雰囲気になっている。ドライバーはあのバレンティーノ=ロッシ。 ■ニコン Z9 400mm 絞りF6.3 1/640秒 ISO125

テレ側開放でやや目立つ周辺光量の落ち込みだが、むしろいい雰囲気になっている。ドライバーはあのバレンティーノ=ロッシ。
■ニコン Z9 400mm 絞りF6.3 1/640秒 ISO125

画像: DXクロップすることで周辺光量落ちは解消。開放での画質も極めて高い。 ■ニコン Z9 400mm(DXクロップ600mm相当) 絞りF6.3 1/500秒 ISO200

DXクロップすることで周辺光量落ちは解消。開放での画質も極めて高い。
■ニコン Z9 400mm(DXクロップ600mm相当) 絞りF6.3 1/500秒 ISO200

プロカメラマンからちょっとだけ言わせて~

使用していて気になった点は、フードのロック機構がないこと。
400mmまで鏡筒を伸ばすと自ずと左手はレンズ先端のフードを持つことになる。フード自体のクリックは固く通常の撮影では外れることはないだろうが、スポーツ撮影などではフードが外れる回転方向に左手の力が入ってしまう。ロック機構があればフードが外れずにすむのだが。

従ってレンズ保持には前述した三脚座を手のひらに乗せホールドした方が安心して撮影できる。50mm側でのズームロック機構はあるのだが、肝心のフードロックが備わっていないのはもったいない気がする。蛇足だが伝統的にリアキャップが緩く、ボディキャップと結合させて保管ができないのだが...。

画像: 望遠ズームとしてはやや小ぶりなバヨネット式花形フード。クリックは固いがロック機構は備わらず。

望遠ズームとしてはやや小ぶりなバヨネット式花形フード。クリックは固いがロック機構は備わらず。

画像: 別売の三脚座を付けた状態。カメラを装着しテレ側に伸ばすと重心はちょうど三脚座面に。

別売の三脚座を付けた状態。カメラを装着しテレ側に伸ばすと重心はちょうど三脚座面に。

画像: 最短撮影距離は焦点距離で変化する。50-70mmでは最大撮影倍率1/2倍が得られる。

最短撮影距離は焦点距離で変化する。50-70mmでは最大撮影倍率1/2倍が得られる。

カメラメーカーの”縛り”が無ければ購入すべし!

ニコン純正としてはニッコールZ 100-400mm f/4.5-5.6 VR Sがラインアップされているが、実売価格が40万円弱と敷居が高い。一方こちらのタムロン製はほぼ半額の18万円強で手に入るうえ、ワイド側が50mmと汎用性が高くより実用的だ。

AF駆動もリニアモーターを採用しておりニコン製を上回る実力を持っている。プロは現場でのサポートがあるカメラメーカー製を使用するのだが、それ以外のユーザーはこちらをの方が有力な購入候補になりそうだ。

画像: 雪が無い夏の富士山だが、雲がいい場景を作り出してくれた。 ■ニコン Z9 50mm 絞りF9 1/1000秒 ISO100

雪が無い夏の富士山だが、雲がいい場景を作り出してくれた。
■ニコン Z9 50mm 絞りF9 1/1000秒 ISO100

画像: ドアを開け観客に応えるウィニングラン。ワイド側に余裕があるので引きつけて撮影できた。 ■ニコン Z9 80mm 絞りF8 1/500秒 ISO500

ドアを開け観客に応えるウィニングラン。ワイド側に余裕があるので引きつけて撮影できた。
■ニコン Z9 80mm 絞りF8 1/500秒 ISO500

This article is a sponsored article by
''.