フィルムカメラ時代は当たり前のリバーサルフィルム
フィルムカメラの全盛時代、カメラ専門誌で新製品紹介を執筆する場合、試写にはカラーリバーサルフィルムを使うのが常識だった。
最大の理由は現像したフィルムをルーペで拡大して見れば、レンズの性能の良し悪しが即座に判断できるから。
スリーブに入ったポジを受け取るまでの間に現像というプロセスが1回しか介在しないのでレンズ性能がダイレクトに反映されるばかりか、納期や現像代も含め、あらゆる面で当時は最高の方法だった。
余談になるが、かつて東京をはじめ需要が多い都市には多くのプロラボが現像所を構え2時間程度でリバーサルフィルムの現像をしてくれた。
それだけでなく当時は毎日ラボが集配に来る小売店も多く、午前中にフィルムを持ち込めば翌日に受け取れるなんていう店も珍しくなかった。
だがデジタルカメラの登場でプロラボは激減。都心に受付窓口だけを残し郊外に設けた現像所で集中して処理するスタイルが主流になる。
ムック本誌でPENTAX 17のレビュー記事を執筆するに当たり、試写に選んだのはカラーネガフィルム。機材を受け取ってから原稿〆切りまでの時間が限られていたので、最も早く現像処理ができる方法を選ばざるを得なかった。
それから読者の皆さんもご存じの通り、現在のリバーサルフィルムの値段と現像代は信じられないほど高価。コスト面も無視できなくなっている。
デジタル処理が入る現在のカラーネガプリント
今のカラーネガフィルムの処理工程はデジタル技術の介在なしでは成立し得ない。
たとえばネガから印画紙にプリントする際は、現像済のネガをフィルムスキャナーでデジタルデータ化。これをレーザー露光方式のプリンターで印画紙に焼き付けた後、現像プロセスを経てプリントが完成する。
いずれにしてもデジタル化の時点で何らかの画像処理が加えられるので、出来上がったプリントに撮影機材の性能がストレートに反映されるとは考えにくい。
実は「フィルムカメラのテストをするのに、ほんとうにこれで良いの?」という葛藤に苛まれつつ記事を書いていたというのが私の本音。
だが、今回は時間に余裕があったので、カラーリバーサルフィルムでリベンジすることにした。ただしWebで作品を紹介するには、デジタル化は避けて通れない……。
こうしてなんとなくすっきりしない気持ちを抱えながらも現像から上がったポジをデジタルカメラで撮影。「まあ、ネガで撮って途中で訳の分からない処理が加えられたプリントより、こっちの方が少しはまし?」というスタンスで眺めて頂ければ……。