■撮影共通データ パナソニック LUMIX S5 マウントアダプター SHOTEN LM-LSL M Ⅱ 絞り優先AE WB:オート
Voigtlander COLOR-SKOPAR 28mm F2.8 Aspherical Type I VM 主な仕様
●焦点距離:28㎜
●最短撮影距離:0.7m
●最大撮影倍率:1:2.8
●レンズ構成:5群8枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:10枚
●フィルターサイズ:34mm
●大きさ・重さ:φ52×23.5mm・143g
●付属品:フード
回転ヘリコイド&真鍮ボディ&2色展開…アーンド2タイプ!
ちなみに、このレンズは同じ光学系ながら外観の異なる兄弟レンズType Ⅱがあります。(L39には触れません)。
Type Iの特徴は何と言ってもデザイン。一般的な企業では、企画担当者が上司を酔い潰すでもしなければ承認が下りないであろう「回転ヘリコイド仕様」はまさに道楽の極み。もはや「玄人以外にはハードルが高過ぎるのでは?」という懸念など、もうコシナ社内には存在しないのかも知れません。
「回転ヘリコイド」とはナンゾや? というと、フォーカシングでレンズ鏡筒(正しくはレンズバレル)がクルクル回ってしまう不都合のある構造のこと。なので、バレル側に絞りダイヤルが付いていると絞り操作する時にフォーカスレバーを無限遠か至近端のストッパーで固定して操作するなどの工夫が必要(後述のお作法)です。
回転ヘリコイドの代表格というと、エルマーの5cmF3.5かなぁ…。
この不都合を解消したのが「直進ヘリコイド」。現在のMFレンズでは一般的な仕様で、フォーカシング操作でレンズ鏡筒がクルクルと回りません。
話を戻して、Type Iはコンパクトではあるけれど、真鍮素材を採用により、やや重めの約143g(それでも軽い)。さらに上述の通り回転ヘリコイド仕様なので、絞り操作時には ”お作法” が必要となります。また最短撮影距離は0.7mと、28mmレンズとしては全然寄れません。
一方のType Ⅱは、一般的な直進ヘリコイド仕様に加えてアルミ素材が採用されているので、重さはわずか約106g。空気とほぼ同じ重さなので、日常的にバッグに忍ばせても全く負担にならないどころか、「今日は懐に28mmを忍ばせているのだ」という背徳感にも似た高揚感を味わえます。
さらにType Iと違って普通のMFレンズと同等の操作性であることと、最短撮影距離が0.5mと多少寄れるので、使い心地は至ってフレンドリーです。
真鍮とアルミ素材の違いは、重さ以外には絞り操作時のクリック感の触感がトヨタ的には分かり易い(説明し易い)です。真鍮は角の丸く湿度のある感触(コリっとした感じ)で、アルミの方がハリがあって軽快な感触(カリッとした感じ)を楽しめます。
ちゃんと写るんかいな? なんて思っていた自分を恥じましたー。
回転ヘリコイド童貞風情には、どう触れてよいのか分からないでしょうけれど、トヨタは19歳の時に新宿の蚤の市で出会ったエルマー5cmF3.5先生で初体験を済ませていますので、気負いなど一切ありません(フォーカスレバーに付いてるロックボタンを押しながらヘリコイドを回せば良いだけ)。
フォーカシングの感触は絶妙なネットリ感で心地良し。絞りダイヤル(便宜上、回転ヘリコイドでは絞りリングのことを「絞りダイヤル」としています)の感触も抜群。
ちなみに、フォーカスレバーが真下で距離指標はだいたい2.5mでした。
今回も例によって焦点工房さんの「LM-LSL M Ⅱ」というマウントアダプターとLUMIX S5の組み合わせで撮影しています。
アダプタ側のヘリコイドを全伸ばしした状態での最短撮影距離は、指標まで約20cm、レンズフード先端からで言うと約13cmまで寄れました。Type Ⅱだともう少し寄れると思います。
最近のレンズと比べると異常に小さいので「コイツ、本当にちゃんと写るんか?」とはホンの少しだけ思いました。
で、その写りは………「馬鹿野郎!(褒めてます)」って感じ。
思うに光学性能は40万えんのアレよりも上なのでは??
外観デザインが刺激的だし、サイズも狂ったように小さいので、さすがに周辺部は期待してませんでしたが、絞り開放から全然使えるというか像高7割くらいまでは普通にシャープだし、最周辺でも悪くない。
これはむしろ、非常に高い信仰心が無ければ手にすることが出来ないあのメーカーのレンズよりも光学性能は高いんじゃないかなぁ…。
具体例を挙げるのが憚れるので止めときますが、定価で38万(税込)くらいするヤツです。数回しか使ったことないけど、写りだけで言えば同等以上な気がします。
コスパ云々ではなくて、こっちなら肩肘張らずに使えそうだし、トヨタの生き様にはフォクトレンダーが合ってるぞ、って話です。
シビアにチェックすると、分かり易いところだと絞り込んでも周辺光量落ちは気になります。が、トヨタは特にワイドレンズでは周辺の光量は落ちてる方が良いと考えていますので、この特性はご褒美のようなもの。
モノクロで少し硬めの絵作り(コントラストを上げるか、シャドー側だけでもトーンを下げとく)にして、太陽の方向を意識して撮るとガツンと周辺が落ちて大変にキモチイイ。
ヘリコイドアダプタ併用時の最至近でも、筆者基準(被写体周辺がちゃんと写っていて、周辺は別にどうでも良い)だと開放から十分にシャープって感じ。
試用を通じて面白いと感じたのは、このレンズを使うと絞りをあまり変えずに撮るようになったこと。
他のフォクトレンダーレンズだと「絞りが利く(絞りで描写変化がある)」レンズが多いこともあって絞りをチョコチョコ変えちゃうから、少し気合を入れて「今日はF5.6縛りで撮るぞ」と心に誓っても、ついつい絞り遊びに興じてしまいますが、やっぱり回転ヘリコイドだから絞り操作が無意識に億劫になるのだろうね。
ふと「そういえば絞り変えてなかったな。それじゃチョックラ変えてやるか」とニヤつきながら操作する流れでした。
LUMIX S5のEVFとLV表示だと厳密にMFするのが少しシンドいシーンもあったけれど、距離指標を頼りに撮ってると段々と勘が冴えて来て、大体でもピントが合うようになるから、分かりやすく成長を感じられて楽しいね。外れてもソレはそれで発見があって良いです。
軽くて寄れる“Type Ⅱ”よりも好きなワケは…。
トヨタは常日頃より「軽い方が正義である」や「1mmでも寄れる方が良い」などと強く訴え続けていますので、レンズの素性から言えばType Ⅱこそが正解となりますが、トヨタ的にオススメなのは重くて寄れなくて少し使いにくいType Iとなります。
その理由は楽しさ。Type Ⅱも格好良くて使用感もナイスだから使っていて気分良いのだけれど、Type Iのイカれた格好良さと回転ヘリコイド仕様に痺れました。
やっぱね、メカ操作に「ひと手間」があると少し特別なコトをやっている様に感じられてウキウキします。操作する頻度がたとえ下がったとしても、ね。ガチャガチャやるだけで楽しいからね。
あと、Type Ⅱより少しだけお手頃なのもGoodですね。差額で飲みに行けるからね。