パナソニック LUMIX S 28-200mm F4-7.1 MACRO O.I.S. 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算28-200mm相当
●最短撮影距離:0.14m(W)/ 0.65m(T)
●最大撮影倍率:1:2(W)
●レンズ構成:13群17枚
●最小絞り:F322-45
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ77.3×93.4mm・約413g
●付属品:フード
「動画ユーザーへの配慮」から生まれた高倍率ズーム?
この驚異的なサイズ感…昔話になってしまうが、タムロンのAF28-200mmF/3.8-5.6 LD Aspherical IF Super( Model 171D)という1996年に発売されたレンズに近いディメンションということで、なんだかとても懐かしくなった。
ちなみにS5シリーズのキットレンズにもなっているS 20-60mmF3.5-5.6は全長約87.2mm・重量約350g。何かと話題の単焦点F1.8シリーズや先日レビューした100mmマクロは全長約82mmかつ約320g前後に収まっているが、これらのレンズと近いサイズ感で28-200mmのズームをまとめ上げたことは驚きだ。
ジンバル使用時のバランス調整が最低限で済むように…という配慮とのことだが、恐るべき開発力であり、またゴールの設定が絶妙なのだろう。
手に持った感じはいつものLUMIX Sレンズそのもの。色気こそないが実直な感じが伝わってくる。ズームリングの操作感も悪くないAFモーターにリニアモーターが採用されており、AFのレスポンスと駆動速度は申し分なく、静粛性も素晴らしい。
S5シリーズとの組み合わせでは重量バランスとサイズ感がマッチしていることも魅力に感じられた。
例によって防塵防滴・-10℃の耐低温仕様となる。手ブレ補正については、カメラボディ側との協調制御である「Dual I.S.2」に対応し、S1で最大6.5段、S5Ⅱでは6段の効果がアピールされている。
ついに「高倍率ズームの王者」が入れ替わりましたー!
今回の個体は製品版ではないので、その点ご留意いただきたい。
試用ではワイド端からテレ端まで、幅広い撮影距離と条件で撮影したが、見事な描写性能に驚かされた。
筆者はかねがね、フルサイズミラーレス用の高倍率ズームではニコンのZ24-200mm f/4-6.3 VR(全長114mm・重さ約570g)が最高峰だと認識していた。が、描写性のおいては同等以上という印象だ。どちらが好みか? と言われると本レンズの方が好み。さらに接写性が良いので「高倍率ズームの王者」として今後は本レンズを推していきたい。
注目していた接写性について、ザッと測ってみた感じでは100〜200mmではセンサー基準面から約65cm。70mmでは基準面から約30cm(フード先端から15cm弱)、50mm時には約20cm(同5cm弱)、35mm時はフード先端から1cm程度、28mmではフードにヒットした。
至近端でもピント面はシャープ。強いて言えば常用域よりも僅かに滲んで見えるが、芯はシッカリしており”柔らかさ”と表現するのがよさそうだ。公式の製品ページでもアピールされている通り、ボケ味は滑らかで美しく見える。
輝度差の大きなシーンであってもフリンジはほぼなく、相当意地悪しない限りは色づきを見つけるのは難しそうだ。
さらなるポテンシャルを引き出すにはS5Ⅱのファームアップが不可?
懸案の「テレ端の暗さ」については、気になるシーンはあまりなかった。この印象は高ISO感度性能の良いS5シリーズだったから、なのかも知れない。
レンズ性能で気になったのは逆光耐性。基本的には良好だが、特定の条件でフレア・ゴーストがわりと盛大に出てしまった。
もちろん、その条件からハズレてしまえば画面内はクリアなので、実用上で困るシーンは少ないと推測されるが、使い方次第の感はある。
この部分に関しては製品版で改善されることもあるので「なんだ、豊田が言うほど悪くないじゃないか」となる可能性も十分にある。
レンズ性能には感銘を受けたが、撮影中はS5ⅡのAF性能に若干イライラした。経験上、高倍率ズームは撮影中の撮影距離の変化が大きく、大ボケ状態でAFがスタートする頻度が一般的なズームレンズよりも多いと思う。しかも本レンズは接写性が高く、マクロ域で撮影したと思えば、そのままテレ端で遠景を狙うということも多々ある。
S5Ⅱユーザーならご存知だと思うが、大ボケ状態からAFさせると、特にAF-Cではサーチするまでに大きな空白の時間が発生する。画角内がゴチャゴチャしていると大ボケでなくてもAF開始までに待ちが発生する。ボディ側のAF性能が向上すれば、このレンズの魅力はさらに拡大されるので、ボディ側のファームアップにも期待したい。
「描写性能偏重主義」に一石を投じる痛快な一本!?
高倍率ズームは「便利ズーム」という認識もあるが、1本で様々な画角の特徴を学べるレンズでもある。本レンズを通して好きな画角を知ることが出来たり、画角の違いによる被写体の見え方の違いを学べたりする。
便利であるが、学びの多いレンズでもあることはもっと知られて良いことだ。たくさんのレンズの特徴を詰め込んだこのレンズで学び、さらにここ一番での勝負用に高性能な単焦点レンズを導入するのも一興だろう。
軽くフットワークの良い高倍率ズームをフルサイズ機で振り回すのは思いの外楽しく、次回は本命のレンズで撮ってみよう、と計画を立てることもまた写真の醍醐味だ。
先日の100マクロをテストした際にも思ったことだが、ミラーレス化と技術の進歩によって、こういう魅力を持ったレンズが増えるのだろうと予想していたが、実際には暴力的なまでに描写性能を重視するレンズが乱立する現実が待っていた。なので、本レンズのような魅力を持ったレンズの登場を心から歓迎します。
ということで、メチャクチャ楽しいレンズでした!