シグマ 10-18mmF2.8 DC DN | Contemporary 主な仕様(Xマウント)
●焦点距離:35mm判換算15-27mm相当
●最短撮影距離:11.6 (W)-19.1 (T) cm
●最大撮影倍率:1:4 (W)-1:6.9 (T)
●レンズ構成:10群13枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ72.2×64.3mm・250
●付属品:フード
新開発のフード脱着機構を採用
用意されるマウントはソニーEマウント、フジXマウント、Lマウント用の3つ。
今回はフジXマウント用のテストを行ったが、フジXマウント版の重量はわずか250gという驚きの軽さを実現していることが特徴だろう。最も重いLマウント版でも260gしかない。
最短撮影距離はワイド端で11.6cm(レンズフード先端からは約1cm!!)、テレ端で19.1cm(同じく約10cm弱)まで寄れるというのも興味深いが、超ワイドで接写するとレンズフードの影が写り込んだりするので注意が必要だ。
レンズフードはバヨネット式ではなく新開発のプッシュオン式が採用された。装着時は指標を合わせて押し込みで装着でき、取り外しにはわずかに回すと抜去できる。新しい操作感なので、正直なところかなり不思議な感触だ。慣れればスピーディに着脱できそう…と思っていたが、フード自体の全長は3cm弱しかないので、実質付けっぱなしでも問題なさそうな感じ。
新感覚のフードだが、レンズそのものが非常にコンパクトなこともあり、グリップが下となる縦位置保持から正位置に構図を変更する際に、フードに手が触れて外れてしまうことが2度あった。レンズがコンパクトで保持する場所が限られていること、筆者の手が大きいことが噛み合ってしまったことが原因と思われるが、初物であるし今後の改善についても期待したいところ。
AFモーターはステッピングモーターとのことだが、快適な速度で駆動する。動作音は筆者が10代であれば駆動音が聞こえたのかもしれないが、40代の筆者の耳には届かなかった。
相変わらずレンズのクオリティは高く、フジ純正レンズよりも明らかに高品位に感じられる。
開放からシャープ、ボケは…まあ及第点かな
描写は開放絞りから期待よりもシャープ。周辺部でのハイライトエッジに生じる色ズレなどについても、意地悪しなければ気になるシーンは少なく、ズーム位置や撮影距離問わず基本的にとても良く写る。このサイズで、かつ開放F2.8という欲張ったスペックが無理をして達成したものではない事に感心させられた。
ズーム全域でピント面では高いシャープネスが得られる一方で、ボケについては騒がしい感がある…が、ワイドレンズなので「こんなもん」と言えばその通りだろう。
逆光耐性は、画面の中央付近に強い光源があったほうがフレア・ゴーストは出やすいように感じられたが、周辺部に光源を配置した場合の実力としては超ワイドレンズとしてはまずまずといったところ。
歪曲や周辺光量については自動で補正されるので、気になるシーンはなさそうだ。
試用を通じての不満は(というか厳密にはX-T5に対する不満なのだが)10~13mm付近でのAF精度の悪さ。AF-Sで一発撮りは正直危険なので、AF-Cで連写して撮るのが吉だ。
あとは…ほぼイチャモンになるが、小さすぎて手の大きなユーザーにとってはズームやピントリングの操作が窮屈だ。それくらいしか不満らしい不満はない。
比較作例はないが、私物のXF10-24mmF4 OIS(初代)と比べた感じでは、純正レンズの方が描写性はちょっとだけ良い印象。さらにテレ側の6mmの差は運用面で ”効く” シーンがそれなりにあった。
とはいえシグマは、1段明るいう上にサイズ感が大変に素晴らしい。というか、このサイズなら負担なくバッグに追加することができるだろう。XF10-24mmも大きなレンズではないが、本レンズを体験した後だと「結構デカいな」と思うシーンが何度もあった。
無理をしていないF2.8。光るトータルバランス。
Xマウント用の超ワイドズームと言えば、タムロンの11-20mmF/2.8 Di Ⅲ-A RXD(Model B060)という選択肢があることも忘れてはならない。こちらは直接比べたワケではないが、過去に純正レンズと比較した時のデータから言えば、描写性はタムロンがトップだろう。しかもボケもキレイだし逆光耐性にも優れている。
総じて「王道の純正レンズ」、「お散歩の友シグマ」、「描写自慢のタムロン」という印象か。筆者の評価基準ではどのレンズでも写りに不満はないと思うが、動作が安定しているという点では純正もしくはシグマという印象だ。
ということで、シグマはほとんどのユーザーにとって満足以上の描写性を持っていて、サイズ感が特に魅力的なレンズというのが感想となる。開放F2.8通しとは思えないほどの驚異的なコンパクトサイズと、ズーム全域でのシャープでキレの良い描写を持つ、というと褒めすぎかも知れないが、Contemporaryというコンセプトの中で性能とバランスを最大化させたことが実感出来るとても良いレンズであることは間違いない。
これ以上の性能を期待するなら別の選択肢を検討すべきだが、そういった性能重視の選択肢とも共存できるキャラクターになっていることはとても興味深い。
もしもの時の懐刀として、お散歩のお供としても最適なので、ナンダカンダで長いお付き合いになるのは、こういう性能以外にも特徴を持つタイプのレンズだったりもする。一度手放してしまうと想像以上に寂しい想いをしてしまうものだ。