シグマ 100-400mm F5-6.3 DG DN OS | Contemporary Xマウント 主な仕様
●焦点距離:35mm判換算150-600mm相当
●最短撮影距離:1.12m(W)/1.6m(T)
●最大撮影倍率:1:4.1(W)
●レンズ構成:16群22枚
●最小絞り:F22-29
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:67mm
●大きさ・重さ:φ86×199.5mm・1135g
●付属品:フード カバー
Xマウント版は残念ながらテレコン非対応
過去にLマウント版とEマウント版のそれぞれを試用したことがあるが、どちらのマウントもとても印象の良かったレンズなので、Xマウント対応には嬉しいサプライズだった。
Xマウントの仕様に適合させるため、フルサイズ版からスイッチ機能に小変更が施されている。AF/MF切り替えスイッチの代わりに「AFファンクション設定スイッチ」が配置され、AF-Lボタンが「AFファンクションボタン」に置き換わった。
これによりAFファンクションボタン(いわゆるレンズ側のボタン)押下時の機能選択ができるようになっている。
また、手ブレ補正の効果がフルサイズ版の最大4段から5段へと改善したのは嬉しいポイント。その他ボディ側の収差補正や、Eマウント版と同様にAF-C中のズーム操作にも対応するという。
Lマウント版ではテレコンに対応したが、Xマウント版はテレコンには非対応。マウント側を眺めていると、何となく純正のテレコンが装着出来そうな雰囲気もある。が、レンズファームが対応していないので、動作が不明であるし合成F値などの表示も出来ないと推測される。
ズーム方式はフルサイズ版と同様に回転式。フードやレンズ先端を掴んで「エイヤッ」と引き伸ばす=直進ズームスタイルにも対応する「デュアルアクションズーム」仕様となっているのも同様だ。
三脚座は付属しないが、別売りオプション「TRIPOD SOCKET TS-111」が用意されている。
「AF-C中のズーム操作」は得意とはいえないかも…。
X-T5に組み合わせてドッグランで柴犬を撮影してみた。被写体認識「動物」と組み合わせてどれくらいカンタンに楽しめるか? のチェックだ。
この時の印象はイマイチで、AF中にズーム操作をするとAFが迷ってしまう頻度が高いことが気になった。仮にボディがX-T5ではなくX-H2Sであれば、印象は違ったかも知れないが…。
ちなみに、一般的なズームレンズは厳密にはバリフォーカルレンズという分類となり、ズーム操作するとフォーカス位置が変わってピントがズレてしまう場合が多い。ズーム操作でフォーカス変動がないレンズのことを本来はズームレンズと呼ぶが、それは細かい話なので無視して下さい。
が、ここで無視できないのは、バリフォーカルレンズでは位相差AF(像面位相差含む)でAF-C中にズーム操作を行うとカメラが把握していた被写体の位置がズレしまうこと。これに対応するためにレンズ側に補正データを持たせておくことで、AF-C中にズーム操作をしても迷わずAFし続けることができる、という仕組みがある。
(パナソニック)LUMIX S5などのコントラストAFの場合はフォーカス位置が変化したとしても実画像のコントラストで判断するので、特別な補正データを持たなくても問題無かったりもする。
「ガチ動きモノ」を撮るなら純正を推奨。
話は逸れたが、この「ズーム操作によってAFが迷う挙動」が出てあまり快適とは言えなかった。ズーム操作をせずに撮影した感触でも、対象の動きに急激な変化があった場合にはAFが追従しきれなかったりレスポンスが悪くなる場合があった。
知人のEマウント版ユーザーの何人かにも尋問してみたところ、Eマウント版でもAF中にズーム操作を行うとAFが迷うというウラが取れた。直進ズーム的に使う場合には注意が要るよね、というのは共通見解のようだった。「AFの転がり始めが鈍いことがある」と言えば動体撮影経験者であれば、アレね、と共感できるだろう。
これは一概にレンズの責任とは考えていないし、そのように評価するつもりもない。が、過去にフジ純正レンズ=XF70-300mmやXF150-600mm=との組み合わせで同様の撮影をした際にはこうした挙動が気になりることはなかった。
おそらく純正レンズが持つ制御や通信といった部分でのアドバンテージが表面化するシーンもあるということなのだろう。もちろん、スムースにAFする時もある。
X-T5の被写体認識については、まずまずといったところ。ただしピント精度は怪しくて、微妙に後ピンのカットが多かった。これについてはカメラの実力不足だろう。今後の成熟に期待したいところ。
ということで、当初の目的であるカンタンに撮れるか? については、それなりに経験が必要だと思いました。たとえばXF70-300mmのほうがAFのレスポンスが良く動作も安定しているので、カンタンに撮れると思います。
動物園では大活躍しまっせ!
動物園で撮影した感触は、柴犬シーンとは打って変わって好印象。AFの追従性と精度は申し分なく、信頼できる性能があり、快適な撮影を楽しむことができました。ライトに超望遠ズームを楽しむというContemporaryラインの製品コンセプトに、心から頷くことができました。
プチ分析してみると、動物園では対象がそこまで激しく動くことはないので、柴犬シーンのようなネガティブな挙動に出会わなかった、ということもあるかも…。
描写に関しては、非常に満足度が高い、というか大変に素晴らしいです。ズーム位置と撮影距離問わず解像感が非常に高く気持ち良い描写が楽しめました。
フルサイズでも周辺描写には大きな不満はなかったが、APS-Cではイメージサークルの中心部の美味しいところだけ使うので、考えてみれば悪かろう筈もないのだが。が、それでも尚、このサイズの超望遠ズームがこれほど写るとは! という驚きはありました。
接写性については、最大撮影倍率こそ0.24倍となかなかのスペックになっているが、ワイド端で最短112cm、テレ端で最短160cmと、超望遠ズームにしては寄れる、くらいのイメージに留めておくのが健全だろう。接写性を重視するのであればXF70-300mmF4-5.6 R LM OIS WRをオススメします。
望遠レンズでは特に重要な手ブレ補正の効果について。
最大5段というスペックよりも強力に効いている印象だった。作例では採用していないが、テレ端で1/30秒でも歩留まり良く撮影できたので。600mm相当画角ということを考慮すればスペック通りの実力があるし、撮影時のフレーミングの安定性も抜群だった。とはいえどれだけ手ブレ補正が進化しても被写体ブレは防げないので、できるだけ速いシャッター速度を選びましょう。
ライトバズーカの「ライト」は、まさしくお気楽でした!
本レンズは撮影性能とタフネス重視の“Sports”ラインではなく、普段使いを重視する“Contemporary”ラインの製品だ。製品紹介にも「ライトに楽しむ超望遠ズームを提案します」とある。
撮影には機動力がとても重要だ。「何時でも・何処でも」という使い方が出来る400mmクラスのレンズは少ない。その中で撮影性能と描写力、サイズ感が見事なバランスでまとめ上げられている。開放口径こそ違うが、フルサイズ用ながらAPS-C専用設計のXF100-400mmよりもコンパクトに仕上がっていて使い勝手も良い。
堅苦しいのはこのくらいで。なんかね、メッチャ良いです。激しいのを撮りたい人は純正を、そうじゃない人は、このライトバズーカを。仮にXF150-600mm持ってても、ちゃんと共存できるので安心して下さい。
と、ここで担当編集氏より「タムロンの150-500㎜(F5-6.7)と比較したらタムロンがかわいそうなの?」って無邪気な質問がありました。
価格帯が違う(タムロンは約18万、シグマは約11万)製品であること、サイズ感が異なること(タムロン約1.7キロに対して本レンズは約1.1キロ)、が挙げられます。
シグマはライトに楽しめる超望遠ズームだけれど、タムロンはより本気度が高い製品です。乱暴に言えば、タムロンって2Lのペットボトルなのよ。シグマは1Lのペットボトル。600g差ってのはそれくらい気持ちのハードルが違います。旅行であってもギリギリ持ち歩けるのはシグマだね。
ということで、タムロンが可哀想なワケではありませんよ。超望遠ズームなのに撮影倍率が高いタムロンには特別な魅力がありまっせ。
そんなこんなで、ちょっと今日は飛行機撮りたい、動物園で動物撮りたい、ちょっと遠くの景色を。そうした「ちょっと何かしたい」っていうささやかな情熱とか気持ちに応えてくれるレンズって良いよね。それでいて写りは抜群だから、軽い気持ちで撮ってたらマジになっちゃったけど、システムが軽いから帰りもラクラクってのが実に良いよ。
最後に。このレンズを企画した人、大好きです。