富士フイルムから「XF8mmF3.5 R WR」が登場した。フルサイズ換算で12mm相当の画角となり、Xシリーズ用のレンズとしては最広角レンズのうちのひとつ(もうひとつはXF8-16mmF2.8R LM WR)となる。そんな超ワイドレンズながらフィルター径がΦ62と比較的コンパクトであり、出目金レンズではないのでフィルターワークが容易だ。

フジフイルム XF8mmF3.5 R WR 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算12mm相当
●最短撮影距離:0.18m(撮像面から)
●最大撮影倍率:0.07倍
●レンズ構成:9群12枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:9枚
●フィルターサイズ:62mm
●大きさ・重さ:φ68×52.8mm・約215g
●付属品:フード ラッピングクロス

パッケージングはお見事! ピント合わせは慎重に…。

画像: 超ワイドレンズで寄って撮ると独特の表現になる。ボケは「まぁそれなり」な感じ。順光気味で木漏れ日や繰り返しパターンの対象を背景に配置すると、ちょっとボケ味が気になるかも知れない。 ■フジフイルム X-S20 絞り優先AE(F4.0 1/180秒) ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ProNeg.Std

超ワイドレンズで寄って撮ると独特の表現になる。ボケは「まぁそれなり」な感じ。順光気味で木漏れ日や繰り返しパターンの対象を背景に配置すると、ちょっとボケ味が気になるかも知れない。
■フジフイルム X-S20 絞り優先AE(F4.0 1/180秒) ISO320 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ProNeg.Std

レンズ名称からも分かる通り、絞りリング付きであることを示す「R」、防塵防滴・-10℃の耐低温性能を有していることを示す「WR」仕様となっている。
にも関わらず全長は僅か5センチ少々、フード込でも8cm程度しかなく、重量については僅か215gしかないことに驚かされる。設計の巧みさはもちろんだが、APS-C専用設計であることのメリットが活きているのだろう。

使用感はここ2~3年で登場したフジノンレンズ、例えばXF33mmF1.4などと同様にシッカリしたビルドクオリティになっており、XF35mmF1.4時代の華奢な感じはなくなった。個人的には、ピントリングの操作トルクはもう少しだけ重めというかネットリさせてほしいが。

AFは高速かつ静粛だが、画角が広すぎるためか、小さな対象に狙い通りにピントを合わせるのはAF/MFどちらについても少々難しいというか、コツが必要だろう。ちなみに今回組み合わせたX-T5のEVF(約369万ドット)では安定してMFさせるのは難しかった。

この点に関して、X-H2等の576万ドットEVFを持つ機種であれば、あるいは違った意見になる可能性はあるのかも知れない。が、そもそも論として超ワイドはピント合わせが難しいので、X-T5やX-H2系がハイレベルなAFを持っているからと言って気を抜くのは早計だ。

画像: Webカメラマン上でのサイズだと良く分からないので、印象優先でキレの良いF4.0の写真を採用していますが、こういったシーンではパンフォーカスには見えなかった。というか、X-T5だとF8で回折しちゃうのよね…。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F4.0 1/500秒) プラス1.7露出補正 ISO640 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

Webカメラマン上でのサイズだと良く分からないので、印象優先でキレの良いF4.0の写真を採用していますが、こういったシーンではパンフォーカスには見えなかった。というか、X-T5だとF8で回折しちゃうのよね…。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F4.0 1/500秒) プラス1.7露出補正 ISO640 WB:オート ※フィルムシミュレーション:PROVIA / スタンダード

描写について、シャープネスそのものは基本的に優秀だ。仔細に観察すると画面の四隅では少し低下しており、少しでも端正な画質を求めるのであればF5.6程度まで絞り込んでやる必要があるけれども、レンズサイズからも分かる通り完璧な光学性能を目指したレンズではない。

また、この程度であれば後処理での補正も楽なので落とし所としては絶妙だろう。ということで、粗があることも事実ではあるけれど、目くじらを立てる程ではないので安心してほしい。

画像: パッケージングはお見事! ピント合わせは慎重に…。

優秀過ぎる電子補正。でも歪曲のカケラくらいは欲しいんですけど…。

画像: 人間の視野角より広い画角となる換算12mm相当の超ワイドレンズなので、撮り方によっては強烈なイメージに。なので、フレーミングは難しいけれども撮ってて凄く楽しい。このシーンではピントが深く見えた。なので「なるほど、パンフォーカスになりそうだぞ」という感触があったのだけれども。 ■フジフイルム X-S20 絞り優先AE(F4.0 1/850秒)マイナス0.7露出補正 ISO640 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ProNeg.Std

人間の視野角より広い画角となる換算12mm相当の超ワイドレンズなので、撮り方によっては強烈なイメージに。なので、フレーミングは難しいけれども撮ってて凄く楽しい。このシーンではピントが深く見えた。なので「なるほど、パンフォーカスになりそうだぞ」という感触があったのだけれども。
■フジフイルム X-S20 絞り優先AE(F4.0 1/850秒)マイナス0.7露出補正 ISO640 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ProNeg.Std

最短撮影距離が18cm、レンズフードの先端からで言えば約10cm弱まで寄れるので、画角以外の点でも特別な表現ができそうだ。
また、補正が上手いせいか撮影時には気付かなかったが、周辺光量落ちがほぼ無い。個人的には周辺光量が少し落ちているくらいのほうが好みなので、若干の寂しさがあるがこれも時代なのだろう。

歪曲についてもキレイに補正されている。完璧に補正されてしまうとシーンによっては反って見えるので、筆者好みで言えば歪曲は1%程度残存させてほしいが、こちらについてはライトルームなどでRAW現像する際に任意で設定すると良いだろう。というか、カメラ側で補正の可否を選択したいものだ。

画像: 小さくて軽いのにキレの良い写り。この瞬間が令和ですね。勝手に電子補正されるので、歪曲はほぼゼロ。まっすぐ写るので気持ち良いけれども、超ワイドレンズでまっすぐ撮るのはヒジョーに難しいです。 ■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/120秒) ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ACROS + R

小さくて軽いのにキレの良い写り。この瞬間が令和ですね。勝手に電子補正されるので、歪曲はほぼゼロ。まっすぐ写るので気持ち良いけれども、超ワイドレンズでまっすぐ撮るのはヒジョーに難しいです。
■フジフイルム X-T5 絞り優先AE(F5.6 1/120秒) ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ACROS + R

ボケ感については、撮り方によってはかなりウルサイ。ワイドマクロ的な使い方をしたいのであれば、背景の処理等で多少の工夫は必要だろう。

チクチクと文句も挙げたが、筆者の感想としてはこれと言って大きく気になるところの無いレンズである。軽量コンパクトで接写性も申し分無く、キレの良い描写で文句の無い一本に仕上がっていると感じた。

強いて言えば、公式ページで「36cmに設定してF8でパンフォーカスに」と謳われているが、X-T5などの40MP機では、鑑賞サイズによってはパンフォーカスに見えないシーンもそれなりにあるように見えた。また、超ワイドなので、撮影に夢中になっていると指や足が写り込んでしまう点には要注意だ。

画像: 優秀過ぎる電子補正。でも歪曲のカケラくらいは欲しいんですけど…。

This article is a sponsored article by
''.