コシナからXマウント用フォクトレンダーレンズに開放F0.9のレンズ「NOKTON 35mm F0.9 Aspherical X-mount」が登場した。本レンズはCP+2023にて参考出品されていたもので、換算約52.5mmの超大口径標準レンズとなる。フォクトレンダーのXマウントレンズはこれで5本目となる。

コシナ フォクトレンダー NOKTON 35mm F0.9 Aspherical X-mount 主な仕様

画像: コシナ フォクトレンダー NOKTON 35mm F0.9 Aspherical X-mount 主な仕様

●焦点距離:35mm判換算約52.5mm相当
●最短撮影距離:0.35m
●最大撮影倍率:1:7.1
●レンズ構成:8群10枚
●最小絞り:F22
●絞り羽枚数:12枚
●フィルターサイズ:62mm
●大きさ・重さ:φ72.7×64.99mm・492g
●付属品:フード 

アンダーF1.0=巨大でもしゃーない、としなかったのがエラい!

画像: 体力測定撮影(お約束)してすぐに「これは!」と感じたので、我慢できずに急遽全力での趣味撮影に切り替えました。ほぼ至近端かつ開放絞りとは思えない描写だし、そもそもの写りがメチャクチャ良い!!! ■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/5000秒 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

体力測定撮影(お約束)してすぐに「これは!」と感じたので、我慢できずに急遽全力での趣味撮影に切り替えました。ほぼ至近端かつ開放絞りとは思えない描写だし、そもそもの写りがメチャクチャ良い!!!
■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/5000秒 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

サイズ感は常識的な範囲に収まっており、フード装着状態での長さはちょうど90mm、重さはレンズ単体で500gを切る492gを実現。アンダーF1.0のレンズでありながらも、この見事なバランス感覚にまずは拍手。

既に発売されているNOKTON35mmF1.2がとてもコンパクトにできている事を考慮すると、F0.9を実現するためには最低限このサイズが必要だったのか、と納得してしまった。
Xマウント用のアンダーF1.0レンズはLaowaなどからも既に何本か登場しているが、電気通信可能なレンズということでは筆者の知る限りでは初となる。

ちなみにXマウントの超大口径標準レンズという意味では、2018年に富士フイルムが開発発表とレンズロードマップへの記載をしながらも、結果的にはサイズを理由に製品化を断念した「XF33mmF1.0 R WR」という幻のレンズがある。

画像: 極端に薄いピントが新鮮。超大口径レンズにありがちなホワホワもなく、GAレンズというかコシナの設計の上手さが見えますな。あとXシリーズだと1/8000秒以上のシャッター速度が楽しめるのが良いよね。 ■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/32000秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

極端に薄いピントが新鮮。超大口径レンズにありがちなホワホワもなく、GAレンズというかコシナの設計の上手さが見えますな。あとXシリーズだと1/8000秒以上のシャッター速度が楽しめるのが良いよね。
■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/32000秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

このNOKTON35mmF0.9のサイズ感を目の当たりにしてみると、無邪気に「XF33mmF1.0 Rを製品化できたのでは?」と考えてしまうかもしれないが、AFレンズとMFレンズでは仕様要件が異なるので、実際にはそこまで単純な話ではない。

AFモーターはミニ四駆のモーターのように強力ではないし、動作を精密に制御することも難しい。フィルム一眼レフ時代のように、カップリングで「エイヤ!」とAF駆動させれば解決、というワケにはいかないのだ。

他のX-mount用フォクトレンダーレンズと同様にXシリーズに最適化されているので、絞りリングやフォーカスリングの回転方向は純正と同じ。電気通信にも対応しているので、対応ボディとの組み合わせではExif情報やAE/AWB、IBIS動作など純正レンズと同等の使い勝手を実現している。

通信に対応していないボディ(対応ボディはコシナのホームページに記載)では、Exif情報にレンズ名称や撮影絞りは記録されないものの、実絞りによる絞り優先オート撮影とマニュアル撮影が可能なので心配は無用だ。

EVF上にて、ピントが浮かび上がってくる様子に感動!

画像: ほぼ至近端で、0.7段絞った(それでもF1.1!)状態。ベラボーにシャープだよね。フリンジが全く出ないワケではありませんが、この手のレンズとしては驚異的に出ません。意地悪しないと本当に出ない。 ■フジフイルム X-T5 絞りF1.1 1/640秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

ほぼ至近端で、0.7段絞った(それでもF1.1!)状態。ベラボーにシャープだよね。フリンジが全く出ないワケではありませんが、この手のレンズとしては驚異的に出ません。意地悪しないと本当に出ない。
■フジフイルム X-T5 絞りF1.1 1/640秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

外観デザインと質感の高さは相変わらずの素晴らしさ。付属の金属製フードについても同様で、植毛が施されている。装着性は申し分なく、ブラインド操作でも容易にかつ「カチッ」と気持ち良くハマるので、何度も着脱したくなるほど心地が良い。

こうした様子に触れていると、ついつい「XFレンズはどうして…」と思ってしまうかも知れないし、筆者もしばしばボヤいています。が、本来は求められる仕様が異なるので乱暴に比較出来るものではありません。
XFレンズは軽量化とタフネス性の両立や、快適なAF性能を実現するために様々な部分で頑張っています。

話をもどして、付属のフードは逆付けも可能だが、フード長は約2cmなので付けっぱなしでの運用でも問題はないだろう。
撮影はX-T5との組み合わせで行った。

開放F0.9なので、ピント合わせにはさすがに気を使うけれども、ピントリングのしっとりとした重さが心地好く、シビアなピント合わせにも応えてくれる。指先とピントが連動しているかのような感覚で撮影できるのが良いし、ボヤケた世界から薄いピントが浮き上がってくる様子をEVFで眺めていても一眼レフのような楽しさがあった。

画像: 画面右下に太陽を入れ込んでいますが、逆光耐性もナカナカのもの。口径食はありますが、このレンズサイズでこの程度であればかなり頑張ってると思いまっせ。 ■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/1250秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

画面右下に太陽を入れ込んでいますが、逆光耐性もナカナカのもの。口径食はありますが、このレンズサイズでこの程度であればかなり頑張ってると思いまっせ。
■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/1250秒 ISO250 WB:オート ※PROVIA / スタンダード

と、サラッと書いてみましたが…EVFを覗いていてピントが浮かび上がってくる様子に喜びを感じるとは思ってもいませんでした。
もちろんね、LUMIX S1シリーズやZ8/9などではそういう喜びがレンズによっては味わえますが、そういった感動をXシリーズでも体験できるとは、ね。
それも576万ドットの高精細なEVFを持つX-H2シリーズではなく、369万ドットのX-T5でもグッと来たってのがポイント高い。

撮影中に「うわぁー、ピント薄くてなかなか合わねー(ニヤニヤ)」な感じでいちいち楽しいし、ピントが合えば達成感がある。露出やピントや作画の狙いとか、そういった諸々が上手いことハマると思わず息を呑んでしまうような写りを楽しめます。

この対話している感じが素晴らしくて、たいへんに充実感があります。満ち足りた写真時間を得る方法には様々ありますが、本レンズと過ごす時間もまた満ち足りたものでした。もちろん、個人の感想ですが。

URTLON27mmも激しく良くて、購入から約1ヶ月経った今でも現在進行系でニヤニヤ出来ていますが、こいつも良いねぇ。出会う順番が違っていたら、あるいは…、と試用中は感情が大暴れしておりました。

画像: X-Pro2と組み合わせてみても、絶妙なサイズ感に悶絶。

X-Pro2と組み合わせてみても、絶妙なサイズ感に悶絶。

酔狂にもアポランターと比較してみましたが…。

画像: 硬めの絵作りにしてコントラスト高めていますが、周辺光量落ちは思ったほどは目立ちません。落ち方がなだらかってことだね。元データ見てもらいたいくらいなのだけど、開放絞りで遠景でもすっごいシャープ。 ■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/26000秒 ISO250 WB:オート ※クラシッククローム

硬めの絵作りにしてコントラスト高めていますが、周辺光量落ちは思ったほどは目立ちません。落ち方がなだらかってことだね。元データ見てもらいたいくらいなのだけど、開放絞りで遠景でもすっごいシャープ。
■フジフイルム X-T5 絞りF0.9 1/26000秒 ISO250 WB:オート ※クラシッククローム

写りについてもトヨタ的には極上でした。言わずもがな。
が、ちゃんとネガティブなことも挙げておくと、APO-LANTHARほどキレた描写ではありません。
さらにシビアに見ていくと開放絞りかつ至近側でのハイライトが僅かに滲んだり、さらにイジワルを積み重ねれば輪郭部にフリンジは発生したりもしました。が、基本的にはいずれも軽微です。ピント位置でトコトン、イジワルするとさすがに目立つ色づきは出るけれど、普通はそうやって撮らないからね。

周辺光量落はそれなりに落ちますが、それでも落ち方はなだらかなので画面効果として心地良く感じられます。アンチ周辺光量落ち派の場合は絞り込むか、フォトショップなどでの補正が必要でしょう。

しかし、F0.9のレンズとは思えないほど開放絞りからシャープに解像するので驚かされました。感覚的にはNOKTON50mmF1 Asperical Z-mountみたいな感じ、と言っても「なるほど」と思える人は限られると思いますが…。
誤解を恐れずに言えばこのレンズを凝縮した感じに写ります。レンズ構成図的にも類似性を認められるので見当違いな意見ではないハズ。

どうでも良い話ですが、NOKTON50mmF1 Asperical Z-mountの時に「ここまで性能高いなら、ひょっとしてF2.0まで絞ればアポランター相当になるんじゃね??」と思って試してみました。結果は「アポランターやべぇ…」でしたよ。
ま、良さのベクトルが異なるので、戯言と思って読まなかった事にしてくださいまし。

コマ収差については開放からF1.2までは点光源を画面のすみっこに配置すると「いるな」と分かります。なので、星景や夜景に大口径レンズを活かしたいと考える場合には、シーンによってはF1.4程度まで絞りたいところ。視点を変えればF1.4が使えるレンズということでもあります。

ここで、フジXの超高速シャッターが生きてくる!

画像: 綺麗なキャトルが居たので思わずパチリ。ボケの感じが良い。最新のレンズだと無味無臭に写りやすいのだけど、対象が過ごしてきた時間をも写し撮っている感じがします。 ■フジフイルム X-T5 絞りF1.3 1/6000秒 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

綺麗なキャトルが居たので思わずパチリ。ボケの感じが良い。最新のレンズだと無味無臭に写りやすいのだけど、対象が過ごしてきた時間をも写し撮っている感じがします。
■フジフイルム X-T5 絞りF1.3 1/6000秒 ISO250 WB:オート ※フィルムシミュレーション:ETERNAブリーチバイパス

重箱の隅をつつくようなことをクドクドと書き連ねていますが、これ以上の光学性能を追求するとOtusのように巨大になると推測されるので、筆者としては楽しさと性能とサイズが絶妙なバランスで釣り合っていると感じられました。

まとめとして、極端に薄いピントが独特で楽しいし、開放絞りでもホワホワしないキレの良さがあります。

なんてったってXシリーズは電子シャッターによって1/8000秒以上のシャッター速度が選択できるので、開放絞りであっても気軽に日中撮影が楽しめるのが良いよね。
それでいて、光線状態を選べば晴天日中であっても驚くほどシャープに解像します。フィルム時代から写真を楽しんでる人だと信じられないかも知れないけれど、スッキリした超大口径レンズなんだよね、写りとサイズが。

システムとして丸一日持ち歩いても疲れないサイズに収まっていること、スペックと性能のバランスの良さなど、全体として超大口径レンズを持ち歩いているにも関わらず、撮影が自由に感じられるところが心地良かったです。

兎にも角にも絶妙なバランスで出来上がっていて、ユーザーファーストであり、ちゃんとフォクトレンダーの魅力を表現したレンズになっているところがスゴイと思いました!!

画像: ここで、フジXの超高速シャッターが生きてくる!

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