ニコンからZ 26mmf/2.8が3月3日に発売される。このレンズの特徴はいわゆる「パンケーキレンズ」と呼ばれる薄型・軽量のレンズ。レンズ単体で約125g、厚みもフード装着状態でボディから30mm程度でありながら、フルサイズフォーマットのイメージサークルに対応するのはお見事。APS-Cフォーマットで使う場合には約39mm相当画角で楽しむことができます。
NIKKOR Z 26mm f/2.8 主な仕様
●焦点距離:26mm
●最短撮影距離:0.2m
●最大撮影倍率:0.19倍
●レンズ構成:6群8枚
●最小絞り:F16
●絞り羽枚数:7枚
●フィルターサイズ:52mm
●大きさ・重さ:φ70×23.5mm・約125g
●付属品:フード
Z fcブラックボディとの組み合わせを推奨でっか?
筆者の悪態が届いたのか、マウントは金属製。ただ、ニコンダイレクトで7万2600円(税込)なので、これで樹脂マウントであったなら暴動が起きてしまいますね。
今回は発売が同時にアナウンスされたZ fcのブラックモデルと組み合わせてみました。本機はAPS-Cフォーマット・ミラーレス機のZ fcに新たに追加された新色であるが、海外では昨年末より既に先行発表されていたものになります。
Z fc登場時に実施していた「プレミアムエクステリア張替キャンペーン」が、ブラックボディの発売に合わせて再実施されます。しかもカラーバリエーションを一新するという力の入れよう。さらにシルバーボディ購入者で、かつキャンペーンに応募していない人も無料で利用出来るとのこと。気になる人は公式情報をチェックしましょう。
まずはZ fcの黒を愛でてから。
パッと見た時の印象はシルバーボディのZ fcよりも、往年のFM2の雰囲気に近い、というのがNewFM2の黒を持っている筆者の感想です。不満点はシルバーのZ fcと同様に触り心地に「ニコンクオリティ」があれば…と感じてしまうところ。
まぁ、こうしたワガママを反映させれば製品価格に跳ね返ってくるので、さらに文句が出てしまうのかも知れませんが。でもねぇバッテリー蓋にバネが付いていないところなど、どうにも安っぽいんだもん。
たとえば先ごろ発表されたEOS R50はエントリーモデルとなっているけれど、バッテリー蓋にはしっかりバネが付いていますし、Z fcよりも細かな配慮が行き届いていて安っぽい感じがしません。
とは言え、キヤノンはZ fcみたいなモデルには決して手を出さないだろうとも思うので、ニコンは色々なユーザーに向けてのアピールを根気よくやっている、とも思っています。
使用感や撮影した時の印象などは全くもってZ fcそのものでした。
Zらしい、スキのない描写は変わらず…。
AFモーターはSTMですが、速度とレスポンスは普通で、可もなく不可もなくといったところ。ZレンズはAF駆動音が静かなレンズが多いけれど、本レンズはピント駆動音がします。これはインナーフォーカスタイプではなく、全体繰り出し方式を選択していることが影響しているのかも知れません。
手にした感じは軽量ながら華奢な感じはなし。コントロールリングの操作感もスムース。鏡筒はここ2年くらいのZレンズではお馴染みのサテン調の仕上げでパッと見た時の質感は上々ですが、冬場は爪が当たると擦過痕が目立つし、手指が乾燥してガサガサになるなど、筆者の好みではありません。
付属のフードは取り付け指標が分かり難いけれど、一度取り付けてしまえば滅多な事では取り外さないので問題ないでしょう。
このフードは、遮光性というよりもどちらかと言えば近接地に繰り出される鏡筒保護用の印象です。試しにフードあり・なしで撮り比べてみましたが、描写からは明確な効果を確認することはできませんでした。
個人的にはフードありの方が格好良く見えるので、敢えてフードなしで運用しようとは思いません。かぶせ式のレンズキャップは、フードの装着可否によらずスッと着脱できるのは良いところだね。
フードのローレットパターンがコントロールリングのパターンとほぼ同一なので、撮影時に操作しようとするとフードを回してしまいそうになるところはマイナス。一応「どうして同じパターンなの?」と聞いてみたところ、ニコンから下記の回答が。
A:コントロールリング・フード ともに操作性とデザインにおいて最適な形状を採用しています。さらに、フード装着時・非装着時いずれの状況でもかぶせ式キャップが適切に着脱できるように配慮しています。
その上で、フードとコントロールリングの部品間に適切な段差形状を設けることで区別させています。かつ、フードはしっかりと固定する仕様になっており、コントロールリングとは異なる力量に設定しました。
とのことでした。
本レンズと近いスペックを持っているのが、リコーのGR ⅢX。ですので、似た雰囲気で遊べるかも? と思い撮り始めましたが、写りから感じられる印象は全体的に異なっており、GR ⅢXの方が繊細でクリアな印象。ボケ味もGR ⅢXの方がキレイにボケているような記憶があります。
どちらかと言えば本レンズは自然な再現性に感じられました。これはどちらが優れているというものではなく、好みの問題となります。
ピント面は周辺部でもカッチリしていますが、周辺部のアウトフォーカス部分は本レンズの方がフワッとしている様子。
全体としては写りは非常にシャープなタイプで、絞り込みで描写変化がある、いわゆる「絞りが効く」タイプのレンズではなく、絞り開放から緩さのないシッカリとした解像感を楽しめる優等生レンズです。フルサイズで使う場合には異なる一面があるかも知れませんが。
至近端かつ絞り開放という条件では、僅かにフンワリしますが、少し絞り込むだけでキリッとする程度の柔らかさ。近接性はまずまず高く、フード先端から約16cmあたりまで接写することができました。
39mm相当画角で遊ぶ場合の注意点としては、撮影距離が5mを超える距離感では画角相当の雰囲気で遊べますが、撮影距離が3m未満の場合は実焦点距離である26mmレンズの広角然としたパースが目立ってくるところ。「相当画角」というのは、意外に扱いの難しいところがあると思っています。
ニコンの開発陣から、丁寧な回答をいただいました。
正直、7万2600円という価格設定に「すげー高いレンズだな」と驚きましたが、描写や唯一無二の特徴を見れば「ちょっぴり高いけど、まぁ妥当かな」くらいには気持ちが落ち着きました。性能的には妥当だと思いますが、感覚的には納得しきれない部分がまだあります。
どこ? と言えばそれはデザイン含めた質感の表現でしょう。たとえばシグマレンズのような高級感や質感があれば、もっと高価でも喜んで購入するのに、と思うのはよろしくない発想でしょうかね?
ということで、公式ページで強調されている「持つ歓びをかき立てる、洗練されたデザイン」という点については全く納得できませんでしたが、実力は本物でした。
最後に、「なにか開発のこぼれ話ない?」と質問したところ以下の回答がありました。こっちをプレスリリースに入れてほしかったよね。
A:
■メカ部分
・衝撃耐性、防塵防滴性能、フォーカス精度、光学性能…これらのうち一つでも妥協すればさほど苦労せず「最薄」を実現できますが、妥協せず「NIKKOR Z」として世に出すためのいくつもの高い性能基準を達成するために苦労の連続でした。
・駆動部分を構成していくにあたり、従来の計算手法だけでは予測しきれないことが多く試作機を使ったトライ&エラーを幾度も繰り返し、設計の適切解を模索しました。
■光学
・光学設計者観点からすると、撮像面からレンズ先端までの長さ(=光学全長)が短くなればなるほど、設計難易度は上がります。
レンズ全長を25mm以下と目標を定めていた中で、薄さと高い光学性能の両立は非常に難しい道のりでした。試行錯誤の結果、非球面レンズ3枚を使った8枚のレンズ構成を考えました。
薄型達成のため、レンズを駆動させる空間的余裕がないほど8枚のレンズをぎっしりと詰め込むことになりますので、全体繰り出しのフォーカシング方式をメカ設計担当と協議を重ね、高い光学性能を維持しながら、目標値より短いレンズ全長23.5mm/光学全長39.5mmの薄型を実現しています。
………ニコンさん、豊田にWebページの監修任せてみない?