「あったリ前のシーン」での性能向上は明らか!
この先長いんで、ザックリと結論ね。
カメラが得意なシーンだとお世辞抜きで相当良いです。
特に人物と一般的な四足歩行の動物については非常に強力にAFしてくれるので快適でした。被写体に了承をとってないので画像は載せられませんが、雪中を走り回る柴犬に対して苦もなくAF追従していたし、ポートレートについてもビシバシAF出来ていたので、カメラが得意なシーンで使っていると「S5ⅡのAF、スゲーぞ!!」ってなると思います。
正直、PDAFの初号機をよくここまで仕上げられたな、と驚きました。何様目線だ? って思うかもだけど、各社それぞれの初号機を思い出すとどれも良くなかったからね。キヤノンだとEOS Rの初期ファームとか…。EOS M2っていうPDAFの前例があったにも関わらず、よ。
ソニーα7のAFが使えるようになったのはα7 Ⅱからだったし、動体撮れるようになったのはα7 Ⅲ以後。ニコンで言えばZ 6も褒められないよね。シグマのfp Lも「まぁ、うん…」って感じ。それが、後発とは言えイキナリこの性能を実現してきたので驚いています。
ここでS5がヘボいか? っていうとそんなこともなくて、カメラマンリターンズの#7でも触れましたが、S5だってサーキットとかドッグランでも過不足なく撮れたからね。だけどPDAFを得たことでさらにレベルアップしているぞ、と感じられるAF性能を実現していると思います。
あ、小さいものに対する補足力も高かったです。正直AFで撮れないと思ったシーンでも一発で合焦したのには驚かされました。
以下はネガティブなので閲覧注意。
その雲行きが怪しくなるのは暗所や低コントラストです。で、そこに追い打ちをかけるのが、そういった条件で追尾AFやフルエリアを使おうとすると結構ヤバめでした。EV5を切ると「追尾AFが反応しねぇ」な挙動が出てきます。1点とかゾーンだとAF追従するけれど、日中と比べて明らかに精度が落ちるのもイマイチ。
また、被写体認識の誤検出は結構多かったです。なので、被写体認識を常時ONにしておくのではなくて、シーンに応じて適宜ON/OFFをして運用したいところ。操作自体は非常にイージーなのは素晴らしいね。
追尾AFをはじめとする被写体判別系のAF(動物や乗り物に対応といったAIによる被写体認識じゃないよ。どこに被写体があるのか? を判別するオートエリアとかトラッキングの話)はそこまで賢くない印象。
トラッキング中に被写体からどんどんズレていって、最終的にAF開始した部分の色や輝度、形状といった要素が何も感じられないところでAFしようとする挙動が目立ちました。上述の通り、照度が下がるとその程度は悪化します。
もしこれからハンズオンなどでフィールドに持ち出す機会に恵まれれば、暗所でのAFCは試してみて下さい。
誤解を恐れずに言えば、他社機と比べてAFC性能で特に暗所でのAF性能は、まだ比べる段階には行っていないかと。
同クラス帯では最強のAFシステムを持つα7 IVやEOS R 6辺りとは、少なくともオールラウンド性で勝負できるレベルにはありません。一応だけど、アチラの方が価格は遥かに上なので、スペック的に近いということで話をしていますよ。
少なくとも「手放しで絶賛」はないと思うの…。
ともあれどこぞの先行レビューで言われているほどスゴイAF性能ではないぞ。やたらヨイショしてるレビューは、オメーは最新のソニーやキヤノンのAFを知らんのか? ってマジに思うよ。初号機としては素晴らしいPDAF性能と評価したけれど、ユーザーにとっては初号機かどうか? ってのは全く関係のない話だからね。
大事なコトなので2度言いますが、カメラが得意なシーンや光量やコントラストが潤沢な日中シーンだとかなり印象は良いです。が、苦手なシーンに突入すると「ん?」な挙動が目立ちます。ということで、使うシーンによって意見が大きく分かれそうです。
SNSでもチラホラ見かけるAFC中のEVFのレートが下がるのは、動体撮影ではあまり楽しくないです。AF開始と同時にレートが下がるから「え?」となって集中力も削がれるし、被写体をフレーミングし続けるのが難しくなります。
ということで、期待のAF性能については、概ねα7 Ⅲとドッコイってのが公平な評価だと思います。得意なシーンはもっとずっと強力だけど、不得意なシーンが著しく足を引っ張ったって感じ。S5と比べると全体的に実力は上だけど、新しいのだからそれは当然だよね。
「カタログスペックでは語れない部分の向上」をどう評価するか
S5の後継機という観点から評価すれば、従来機から全体的にレベルアップしていて、特にカタログスペックで表すことが難しい使い勝手の部分が大きく改善しているところが魅力的でした。
カメラの道具としての部分が良いと、手馴染みが良いし疲労も少なくて撮影に集中できるからね。あとLUMIXはUIのデザインも分かりやすいので、1機種覚えれば全機種に対応できるっていうのも魅力。旧オリンパスとかだと操作に慣れれても時々パニックになるからね。
S5Ⅱは総じて愛着が持てるカメラだと感じたし、撮っていて楽しいです。コレ、非常に重要なところだね。
PDAFについては厳しい意見になったけど、常日頃からトヨタがボロクソに言っているニコンのZシリーズとかと同じで、使い方次第では全く問題ありません。
ただ、誰にでもオススメできるか? っていうと、やっぱり難しくてどちらかといえば動画ユーザーにこそ、PDAFの恩恵を受けられると思います。スチル派だと他にもAF性能が良いカメラはあるから、難しいです。でもLUMIXの絵作りは個人的に素晴らしいと思っているから、その絵作りを楽しめる撮影フィールドが広がったという点は非常に良いことだと思います。
LUMIXとしては画期的も、他社との比較ではフツーって感じ?
ということで、だいぶ辛口な評価になったけど、かなり良いカメラだと思っているし、実際問題として気に入っています。デザインも結構好きで、たとえばメーカーロゴがヒッソリと配置されてるのも良い。ボディ前面にメーカーロゴが入っていないのはシグマとパナくらいだと思いますよ。パナはブランドロゴは力強く入っているけど、メーカーロゴは探さないと見つからないもんね。
カメラのトータルバランスが良いね。これはゲームチェンジャーになるんじゃね? って感じもある。その代わり誰にでも薦められるか? と言われれば否かも。万能性という意味では、高価だけどキヤノンやソニーがリードしています。
S5ユーザーは「買い替え必須」か? っていうと、微妙。AFにしても、どうしようもない差ではないけど、ビックリするくらい違うこともあるから、使い方次第なのよね。それでもS5ユーザーは不用意にS5Ⅱに触れるのは非常に危険。撮影性能の差よりも道具としての使い心地の改良が本当にデカイ。
あと僅かではあるけれど、絵がいい感じ。S5よりどこか上品に感じられる写真が撮れちゃうから、これがハマっちゃう人にとっては危険が険しいくらい危ないです。さらに旗色が悪いことに、Lマウントにはシグマレンズがあるので、他社機ユーザーが下手にS5Ⅱに浮気をしてしまうと、気付けばシグマレンズが増えていくという恐ろしい沼があります。
最後に。
パナソニックについては、ニコンやキヤノンみたいにサポート体制がある程度しっかりしているとは言えないから、メーカーにとっては売れたあとが本当に大変だと思います。だから開発だけでなく、サービスセンターも頑張ってほしい。ユーザーが居付いてくれるかどうかはサポート次第ですぜ。