カメラの未来はスマホに潰された??

諏訪:今の20代の子たちとかは、仕事してても貯金するお金すらない人もいっぱいいる。カメラなんてそうそう買えない。
阿部:カメラの値段って難しいよね。どんどん高くなっていって、今ではお手頃なカメラってほとんどない。でも、逆に言えばお手頃のカメラをたくさん作ってたのに、それを買ってくれないからお手頃じゃなくなった、というのもある。結果的に価値がわかる人だけに買ってもらえばいい、みたいになった。やっぱりスマホにシェアとられて売れなくなったからなんだよね。
諏訪:それもあると思いますね。
阿部:頑張ってお手頃なカメラを今出しても、やっぱりスマホでいいやってなるとやっぱり売れない。そうするとカメラは高くするしかない。なんかここって難しいね。
編集部:スマホとあんまり変わらねーじゃん、とかって思っているのかな?
諏訪:そう思ってる人は圧倒的に多いと思います。
阿部:だってカメラメーカーの人に会ったって「いやー、スマホを買い替えたらすごいんですよ」って言われるから(笑)
諏訪:そもそもプリントしないから粗が分からない。ある程度違いがあっても、違いの見方が分からない。そのクオリティの違いに気づかない人はいっぱいいるんですよ。
阿部:まあ、スマホの鮮やかな液晶を見ちゃうとねー。
森田:彩度マシマシ。ずっと見ていると疲れるけど、そこまでは見ない。
   ■   ■   ■
山田:そもそも論の話に戻しちゃうけど…。そもそもフィルム時代にカメラが売れたっていうのは、カメラが欲しかったから売れてたとメーカーの人は思っていた。でも「写ルンです」が出てきて、実はカメラが欲しかったんじゃなくてプリントが欲しかった、ということがわかった。
阿部:写真が欲しかったんだよね。
山田:で、その後スマートフォンとかデジタルの時代になって、同じようにプリントできるようにしたんだけど、今度はみんなが欲しがっていたのは、プリントではなく映像だった。
阿部:そう。送り飛ばせるデータ。
山田:で、カメラメーカーはそこで画質をアピールしてきた。でも、多くの人にとって、映像は思い出すきっかけが大切なのであって、画質どうこうではなかった。スマートフォンで撮った写真で、その時のいいことを思い出せればそれで十分。スマートフォンだと画質が…とか言い出すのはごく一部の人であって、スマートフォンで撮って何が悪いのって。僕なんか純粋に思っちゃうわけですよ。
阿部:そういった意味では、ある種、カメラの役割は終わってるのかもしれないね。
山田:もちろん、その中にはやっぱりプリントが好きだっていう人は当然いていい。じゃあプリントするんだったらいいカメラでいい画が欲しいよねって。
阿部:だから高いカメラになるんだよ。高価で、画質が良くて、へーっていうのが撮れるようなカメラ。そもそもプリントを額に入れて飾ろうなんていうのは、それなりの余裕がある人だから。若い人にそれを求めるのはどう考えても無理がある。せいぜいモニターで見るくらい。ほとんどはスマホで足りるから。
編集部:つまりカメラは贅沢品?
阿部:趣味性が強いものになっていくのは仕方ないんじゃないのかな。時代の波に押されて、動かされてるから。
森田:元々写真なんて趣味の世界ですからね。このムックにしても、読者は40代以上の男性が圧倒的で、10代とか女性はほとんどいません。まあ、重箱の隅をつつくような画質評価とかボタンの押し具合なんて、言っちゃえば変態の世界ですからね(笑)
阿部:そう考えると来年(2023)のCP+のポスターなんて大きな誤解だよね。
諏訪:ね。今、俺もそれ言おうと思ってた(笑)
阿部:かわいい女の子がカメラ持って出てくるとか、毎年ああいう路線でやってるけどさ。まったく現状がわかってない。
諏訪:そう。実態と違うところに思いっきりアプローチしようとしてますよね。
森田:変に若い人に媚びて、無理に広げようとか一切しないほうがいいんじゃない?
編集部:かと言ってオッサンばかりを見てても先がない。
阿部:それもあるよね。
諏訪:俺が作っているYouTubeとかでも、カメラの製品の紹介をしている動画なんかはもう絶対40代以上なんですよ。ほとんど。だけど、時計だとか関係ない話をした回は10代、20代がいっぱい見てる。どれだけカメラに興味がないかっていうのが(笑)
編集部:自分の子供とか赤ちゃんの写真を撮って、アルバムに貼るなんて習慣はもうないのかな?
諏訪:微妙にあるみたいですよ。
編集部:紙焼きにして?
諏訪:はい。後でゆっくりめくって懐かしめるように。
阿部:フォトブックみたいなのを作ってあげたりはするでしょう。孫の写真をおばあちゃん、おじいちゃんにあげるとか。
諏訪:スタジオアリスとかで、いわゆるメモリアルブックとかを作っている家はけっこうありますね。
森田:七五三とかね。
諏訪:かなり盛況だとは聞いています。宣伝もけっこう目にしますしね。
   ■   ■   ■
森田:たしかにスマホは便利だと思います。すぐSNSにアップできるし。でも、いまの若い子たちにしても学校写真だったり成人式だったりで、プロの撮った写真に触れているわけじゃないですか。そこで一目置くというか、ここぞというときはちゃんとした撮影機材が必要だっていう認知度くらいはみんなあると思いますが。
阿部:それはあるんじゃない? 以前テレビを見てたら、マッチングアプリで女の子が男性を決めるときの、写真の選び方みたいなのがあった。スマホで簡単に撮った写真ではなく、プロカメラマンに頼んだような写真の人だと、まじめに相手を探しているとか。へーって思って見てたんだけど。
編集部:撮影:赤城耕一とかクレジットが入ってたらすごいことになる(笑)
山田:婚活などのプロフィール写真をやっている人が知り合いにいます。単純に写真を撮るんじゃなくて、まずは面接から始まるんだって。その男性が自分はどういう風に見られたいかっていうのを一時間くらいディスカッションして決めるらしい。だから撮る側も女性が多いんだって。阿部:それなりに大変なんだな。
山田:ちゃんとシステムになってるんですよ。スタジオもあって、スタイリストもヘアメイクもつくし。
阿部:そうなると、なんか高そう。
山田:でも5万円くらいだよ。5万円で一生が決まると思えば。
大門:それは紹介所が全部一式やってるってことなんだ。
坂本:俺の身内に婚活アドバイザーがいるから、よく手伝っています。何カットも撮った中から、どれを選ぶか相談されたり…。この俺がそいつの人生決めていいのかよって思いながら(笑)。でも、最初の写真の印象で7割から8割決まるらしいから、けっこう重要なんだって。
山田:写真を撮る時は、男性でも普通にメイクしますからね。当然レタッチもあるだろうし。
(続く 残り40000字)
   ■   ■   ■

This article is a sponsored article by
''.