ニコンからAPS-Cフォーマット=ニコン的に言えば「DXフォーマット」のミラーレス機 Z 30が登場しました。ニコンのカメラとしては「Vlog with Nikon」とワリとハッキリとコンセプトを明言していて、立ち位置が分かり易いタイプです。

今さらのVlogカム…というのはさておき

画像: マウントの大きさをアピールするために両肩の高さを下げていたZ 50と比べるとトップの高さが均一になってスッキリした感があっていいね。はじめからこういう手堅い手法でデザインすれば良かったんだよ! と思いますぜ。

マウントの大きさをアピールするために両肩の高さを下げていたZ 50と比べるとトップの高さが均一になってスッキリした感があっていいね。はじめからこういう手堅い手法でデザインすれば良かったんだよ! と思いますぜ。

通常営業のニコンだと、新機軸であることを強くアピールしたいが為に分かりにくいコンセプトとドッキングさせたがるのが常でしたが、本機は単純明快。
正直な気持ちを言えば「え? 今更Vlogカム??」という気持ちも否定できません。

しかし、動画の印象が強いワケではないニコンのイメージを変えるための試金石、はたまたVlogの楽しさを知ってもらおうということなのでしょう。と同時に「ニコンってこんなメーカーだよ」ということを幅広い世代にアピールするための意欲作、というところまでは推測することが出来ました。

画像: 廉価版でありつつも、高い質感を有するのはニコンならでは。この辺はどこぞのメーカーとは大きく違う。が、性能面はこの限りではない。

廉価版でありつつも、高い質感を有するのはニコンならでは。この辺はどこぞのメーカーとは大きく違う。が、性能面はこの限りではない。

このページを訪れるような沼の住人であれば「コイツはZ 50のEVFをぶった斬ったカメラだな」と思うでしょうとも。かく言う私めもそう思いました。背面LCDがチルトからバリアングルになっているのでどちらかと言えばZ fcの派生なのかな?
手にとって見ると、ニコン機らしい握り心地の良いグリップや質感の高さなど『カメラ作りのこの「要らない基本の「キ」』を熟知していると思しき安心感は「流石はニコン」なところ。

画像: 今さらのVlogカム…というのはさておき

加えてニコンZシリーズで最小・最軽量となる約405gの重量と、EVFを持たないフラットスタイルでコンパクトなサイズなので「コンデジ代わりに良いかも」と好印象だし「Zシリーズで一番格好良いんじゃね?」と思いました。
Z 50ってマウント径の大きさっていうコンセプトをアピールするために天板が低くデザインされていますよね。アレが格好悪さというか取ってつけたようなEVFの歪(いびつ)な感じを強調してると思っているので、こういう正道なデザインはとても良いと思いますよ。

画像: 上面はシンプル。上から見るとコンパクトなボディに大型グリップをうまく纏めたな、って感じがしてGood。これぞまさしく「シンプルニコン」の再来なんじゃね?

上面はシンプル。上から見るとコンパクトなボディに大型グリップをうまく纏めたな、って感じがしてGood。これぞまさしく「シンプルニコン」の再来なんじゃね?

Z 30の具の部分はZ 50やZ fcとほぼ同等というか同じスペック。ボディ内手ブレ補正機構ももちろん持ってません。
背面のデザインはZ 9の系譜というか第二世代のZの操作デザインなので、従来機との同棲はちょっと迷いが出るかもって感じはプンプンします。iボタンの位置がZ fc以降で上に来たのは良いと思いますが、再生ボタンの位置が迷走していてZ fcともZ 50とも違うよね。むむ、Z fcは1.5世代だったのか…みたいな妄想が捗りますね。

興味深いと思ったのはセンサーの位置を示す「距離基準マーク」が白塗りじゃなくなったこと。実用性という意味ではドレだけのものがあるのか分かりませんが、いままであって当然だったものがシレッと変更されているのを目の当たりにすると「じゃZ 30っていう銘板が無ければもっと良いよね。Nikonロゴもグレーとかのステルスタイプを用意してくれないかな?」みたいな事を思ってしまうワケで。デザインの為にLバッジを取り払ったパナソニックを見倣って欲しいね。

画像: 同じバリアングル液晶のZ fcは「なぜこの位置にインターフェイスを?」って配置になってて何かしらを物理で接続すると液晶が引っかかったけど、Z 30は流石に改善しています。てか開発時に気付くだろ、普通は。

同じバリアングル液晶のZ fcは「なぜこの位置にインターフェイスを?」って配置になってて何かしらを物理で接続すると液晶が引っかかったけど、Z 30は流石に改善しています。てか開発時に気付くだろ、普通は。

動画のみならず、「ワカってる静止画オジサン」が使ってもいいと思います!

豊田は動画をヤラない人なので、静止画メインで使ってみました。
どうせZ 50とかZ fcと同じでしょ? と期待値は低めだったけど、コンパクトなことと16mmスタートのキットレンズのお陰で非常に楽しい。Z 50みたいに客観的に見た時に「うっ」と芸術点がマイナスされることも無くて気分が良いです。グリップの感じは相変わらず良くてZ 50とは甲乙付けがたし。好みの差だとは思うんだけど、Z 30のほうが豊田的によりシックリ来ました。

画像: Z 30でのファーストショットに終わりかけの紫陽花をパチリ。色が抜けて良い具合に侘び寂びが表現出来ていてステキ。「あら?オートエリアAFが少し良くなったような…??」とこのタイミングで思った次第。Z28mmf/2.8は写りは良いんだけど、前玉が小さくて格好悪いのよねぇ。この前玉サイズにこの太さの鏡筒必要ある? みたいな。 ■NIKKOR Z 28mm  絞り優先AE(F2.8 1/500秒) プラス0.7露出補正 ISO100

Z 30でのファーストショットに終わりかけの紫陽花をパチリ。色が抜けて良い具合に侘び寂びが表現出来ていてステキ。「あら?オートエリアAFが少し良くなったような…??」とこのタイミングで思った次第。Z28mmf/2.8は写りは良いんだけど、前玉が小さくて格好悪いのよねぇ。この前玉サイズにこの太さの鏡筒必要ある? みたいな。
■NIKKOR Z 28mm  絞り優先AE(F2.8 1/500秒) プラス0.7露出補正 ISO100 

写りは文句ナシ。Z16-50mmのキットレンズは小さい・軽い・良く写るの三拍子揃ってて、お世辞抜きで傑作だね。

今回はGRⅢの代わりになるんじゃねーの? と思ったので、Z 28mmF2.8とも組み合わせてみたところ、軽快で実に楽しかったのだけど、APS-Cで使うならF2.0でコンパクトなのが欲しいよね。それにこのレンズは前玉が非常につぶらな瞳なので正面から見た姿がイマイチなのです。
VRの無いレンズだと手ブレには多少気をつけないと、という気持ちになるんだけど、そういう気持ちを持てる人であれば手ブレが気になるシーンはそれほど無いと思います。

動作で気になったのはAF。従来機よりもオートエリアAF時にAFが背景に抜ける頻度は大きく下がっていて「進化したな」とは思ったのだけど、被写体が画面の中央にある場合だけで、いわゆる「写真的な構図」で撮るとやっぱり背景というか遠景側にAFさせたがる癖が出ました。

画像: Z 30とZ28mmを組み合わせるとGR3xの代替になるのでは? と思ったんだけど、GR3xの方が寄れるし小気味よく撮影が出来ますな。スナップシーンだとAF性能はドッコイって感じ。至近側はGRの方が賢いと思いました。 ■NIKKOR Z 28mm f/2.8 絞り優先AE(F2.8 1/2500秒) マイナス0.3露

Z 30とZ28mmを組み合わせるとGR3xの代替になるのでは? と思ったんだけど、GR3xの方が寄れるし小気味よく撮影が出来ますな。スナップシーンだとAF性能はドッコイって感じ。至近側はGRの方が賢いと思いました。
■NIKKOR Z 28mm f/2.8 絞り優先AE(F2.8 1/2500秒) マイナス0.3露

従来機と比べて良くなってはいるけれど、それでも他社と比べてAFは明確に負けてると思うのでもうひと頑張りして欲しいところ。
タッチAFする人ならそこまで気にならないかも知れないけれど、それでも「なんで?」と思うシーンはありまっせ。

Z 6が登場してからずっと解決してない(Z 9はまぁ良いだろう)ので同時期に登場した機種に搭載されてるセンサーの特性として近距離に被写体を見つけるのが苦手なのだろうね。だからセンサーが一新されないとこの性格は踏襲されると思われます。

一応ね、作例は挙げませんが動画性能もチェックしてみました。手持ちで動画電子手ブレ補正の具合とか顔AFの感じとかの確認ね。
正直動画用途で使いやすいのはEOS R7とかEOS R10の方が全然良いと思います。特にAFは贔屓目に言っても勝負になってません。Z 30のAFが良いって言ってるレビューは、他のカメラ使ったこと無いのかな? 何を基準に良いと言っているのだろうか、甚だ疑問。

画像: 葉山の海。Z 30は撮影に夢中になるっていうよりは、良い意味で淡々と記録出来る系のカメラな感じ。EVFが無いことが撮影中に客観視出来る手助けになっているような気もします。トータルで撮影は楽しい。EOS R10(ベータ機)のほうが、性能的に感心させられるシーンが多かったけど、楽しさではZ 30の方が上だと思いました。 ■NIKKOR Z 28mm f/2.8 絞りF2.8 1/2500秒 ISO100

葉山の海。Z 30は撮影に夢中になるっていうよりは、良い意味で淡々と記録出来る系のカメラな感じ。EVFが無いことが撮影中に客観視出来る手助けになっているような気もします。トータルで撮影は楽しい。EOS R10(ベータ機)のほうが、性能的に感心させられるシーンが多かったけど、楽しさではZ 30の方が上だと思いました。
■NIKKOR Z 28mm f/2.8 絞りF2.8 1/2500秒 ISO100

「従来機よりは良い」なら納得だけど、スマホと比べてるならスマホの方が賢いし、同じAPS-CミラーレスのX-E4やα6000シリーズと比べるならZ 30がそれらより優れたAFだとはとてもじゃないけど思えませんでした。意地悪な事を言えば「時々ピントを外すのが自然な表現で良い」とかならそうかもね。

手ブレ補正については、動画撮るならジンバルは必要だと思いました。ワリとガクガクするので手持ちはかなりキビシイんじゃないかな。画角の制限があっても、より補正効果の高いブーストモードなどがあると良いと思います。

画像: カメラがコンパクトだと普段撮らないような使い方が出来るのが良いね。Z 30はグリップが良いから試行錯誤が捗ります。Z 30ってエントリー向けのモデルだけど、歴戦の猛者にこそオススメって感があるんだよね、懐刀的に。 ■NIKKOR Z DX16-50mm f/3.5-6.3 VR 絞り優先AE(F5.6 1/1000秒) プラス0.7露出補正 ISO100

カメラがコンパクトだと普段撮らないような使い方が出来るのが良いね。Z 30はグリップが良いから試行錯誤が捗ります。Z 30ってエントリー向けのモデルだけど、歴戦の猛者にこそオススメって感があるんだよね、懐刀的に。
■NIKKOR Z DX16-50mm f/3.5-6.3 VR 絞り優先AE(F5.6 1/1000秒) プラス0.7露出補正 ISO100

ともあれ、撮影していて軽快で楽しいし、画質も申し分なし。スチル派の豊田としてはバリアングル液晶は好きになれないのだけど、Z 30買ったら動画はじめてみようかな? とポジティブな妄想を膨らましてしまうカメラではあったし、現在進行系で結構欲しくなっています。

「Vlog用です!」と明言する割には、タイミングがちょっとどころじゃなく遅い気もするし、Log撮影が出来なかったりヘッドホン端子が無かったり。
どことなく有り物の具材で何とか組み上げた感も否定出来ないけれど、Z 30のスペックや性能じゃなく道具としての使い心地の良さはとても魅力的だし、使って楽しい最小最軽量のZなので、スチル機として気になる1台ってのが正直な感想です。
「いかにも」なカタチのZ fcが苦手な人も居ると思うので、そういう人はZ 30が良いんじゃないかな。

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