なせか国内発売が延び延びになっていた本機ですが、この度、めでたく発売となりました。ここはもちろん、THETA大好きな写真家=宇佐見健氏がレポートします!

360°静止画/動画の作成がより身近に!

画像: サイズや重量などはTHETA Z1(右)と大差ない。しかしタッチパネルに大きなスペースが取られているので印象はずいぶん異なる。そのパネル下部の半円部分はシャッターボタンになっている。歴代機種の丸ボタンより大きく押しやすい。

サイズや重量などはTHETA Z1(右)と大差ない。しかしタッチパネルに大きなスペースが取られているので印象はずいぶん異なる。そのパネル下部の半円部分はシャッターボタンになっている。歴代機種の丸ボタンより大きく押しやすい。

2013年に発売された、シャッターボタンひと押しで周囲360度の光景を静止画像として記録する初号機がTHETAシリーズの始まりだ。その後モデルチェンジのたびに動画撮影機能追加や画質向上、ライブストリーミング対応や4ch空間音声録音など様々な機能を載せる進化を遂げてきた。

2019年には撮像素子に従来機よりも大型の1.0型裏面照射CMOSセンサーと独自開発の屈曲光学系を採用した約23MPのTHETA Z1を投入。静止画撮影ではRAW(DNG)+JPEGの記録方式にも対応し、動画撮影では4K(3840×1920 29.97fps)の高画質動画の撮影を可能にした。

現行機種としては、THETA Z1の内蔵メモリを増強したTHETA ZⅠ(51GB 2021年4月28日発売)が旗艦機。実勢価格はおよそ13万円台とやや高価だが、360°のデジタルストックフォトの素材など業務用途でも通用する高画質機である。もう1機種は、エントリーモデルとなるTHETA SC2。3万円台という身近な価格でありながらも、シェアしやすい画質の360度静止画/動画が楽しめる。

新発売となったTHETA Xはこの中間ポジションを担うシリーズの8機種目で、建築・不動産や自動車業界など急速に拡大しつつあるビジネスシーンにおける360度映像の需要増に対応するべく登場したアドバンスドモデルという位置付けだ。

タッチ画面により操作性が大きく改善

THETAの設定状態が把握できるライブビュー画面。セルフタイマー、画像サイズ、撮影設定画面呼び出し、静止画/動画切替、撮影モード設定画面呼び出しは画面下部に並んだ各アイコンから簡単に設定可能。露出補正やWB変更、HDRやNRなどオプションメニューへのアクセスも容易だ。画面白枠は部分はタッチシャッターの範囲(オフも可能)。

撮像素子にはQuadBayerCoding 構造の4800万画素 1/2インチセンサーを2基搭載。最大6000万画素の高精細360°静止画と5.7K動画に対応した高画質での撮影が可能だが、静止画像の記録方式はJPEGのみである。

トピックとなるのは、THETAシリーズとしては初となる2.25型タッチパネルモニターを搭載したこと。これにより撮影モードや機能などの設定はもちろん、撮影時のライブビュー確認や撮影直後の画像再生も本体のみで行えるようになった。従来機のように端末(スマートフォン等)との接続の手間が省けたことで、撮影効率はすこぶる良好だ。

ライブビュー画面はタッチ画面で視点を360°グリグリとスクロールして撮影前に写り具合を確認できる。スマホなどへ接続する手間がないためTHETA X単体で効率よく撮影が完結する。

誰もが簡単に扱えなければビジネスシーンで活躍するのは難しいわけで、その点ではかなりユーザーインターフェースもしっかり考えて作り込まれていて操作性も従来機と比較して分かりやすくなっている。過去にTHETAに触れて「ちょっと難しいかな?」という印象を抱いた人も、今回のハードルはかなり低く感じられるはずだ。

画像: 機能や撮影モードの設定など、従来機ではモバイル端末の専用アプリ経由で行っていたカスタマイズなども含め必要な設定は本体タッチパネルで行える。もちろん、従来機同様にモバイル端末経由での諸設定、撮影も可能。その場合はTHETA Xのバッテリー消費を抑えるためにタッチパネル表示OFFも可能だ。

機能や撮影モードの設定など、従来機ではモバイル端末の専用アプリ経由で行っていたカスタマイズなども含め必要な設定は本体タッチパネルで行える。もちろん、従来機同様にモバイル端末経由での諸設定、撮影も可能。その場合はTHETA Xのバッテリー消費を抑えるためにタッチパネル表示OFFも可能だ。

従来機からの進化には感心するばかり!

当然ながら撮影直後の画像再生確認もタッチ画面で行える。静止画は拡大表示もできるので、集合写真やセルフィ程度なら表情や目瞑りくらいのチェックはできるだろう。
最も便利に感じたのが、動画の再生も撮影直後に行えること。従来機ではモバイル端末転送時の自動変換かパソコンの専用アプリで変換作業をしないと360°動画として再生できなかった。

画像: タッチパネルでの再生画面で最初に表示されるサムネイル表示。撮影日ごとのカレンダー表示なっているので旅行などで使っても目当ての画像を探しやすい。

タッチパネルでの再生画面で最初に表示されるサムネイル表示。撮影日ごとのカレンダー表示なっているので旅行などで使っても目当ての画像を探しやすい。

この画像転送と変換にかなり時間を要するのと、転送中は端末を他のアプリに切り替えることも次の撮影を行うことも不可なため、現場での再生はかなり面倒な作業だった。保険的に複数回撮影すればメモリー容量も食うし、事後の確認作業量も増加するというストレスから開放されたということになる。

画像: 1画面表示をタップするとさらに拡大表示となり、その状態のまま画面をスクロールして細部のチェックが可能。個人的にはもう少し拡大倍率を上げて欲しいと思うが、技術的にはさほど難しくなくファームウエァのアップデートで対応可能なレベルということなので期待したい。

1画面表示をタップするとさらに拡大表示となり、その状態のまま画面をスクロールして細部のチェックが可能。個人的にはもう少し拡大倍率を上げて欲しいと思うが、技術的にはさほど難しくなくファームウエァのアップデートで対応可能なレベルということなので期待したい。

THETA Xでは撮影直後に本体内で360°ムービーへの変換も自動で完了→記録される。よってmicroSDに記録された動画をそのままyoutubeやfacebookなど360°コンテンツの対応の動画配信サイトやSNSなどに投稿するだけでVRコンテンツとして視聴できるようになったことも360°映像へのエントリ―を容易にしている。

このタッチ液晶とUIのお陰で全体的な操作性の向上は著しいものだが動画撮影主体で使用するなら従来機に比べてTHETA Xは圧倒的使いやすく、一度味わうと恐らく戻れなくなるだろう。

画像: 目的の画像をタップすると1画面表示に切り替わる。お気に入りの画像☆マークを付加でき、これはモバイル端末のアプリでの表示にも反映される。ゴミ箱マークで不要画像の消去も可能。動画をいちいち端末やPCに転送せずに確認できるようになったことは朗報だ。

目的の画像をタップすると1画面表示に切り替わる。お気に入りの画像☆マークを付加でき、これはモバイル端末のアプリでの表示にも反映される。ゴミ箱マークで不要画像の消去も可能。動画をいちいち端末やPCに転送せずに確認できるようになったことは朗報だ。

モバイル端末と組み合わせての動画配信も変わらず魅力

画像: モバイル端末の専用アプリは従来機同様RICOHが無償配布している"THETA+"が利用可能。静止画を360°画像特有の画角でJPG画像に切り出したり、アニメーション化やタイムラプス動画の生成などが簡単に行える。

モバイル端末の専用アプリは従来機同様RICOHが無償配布している"THETA+"が利用可能。静止画を360°画像特有の画角でJPG画像に切り出したり、アニメーション化やタイムラプス動画の生成などが簡単に行える。

ちなみに360°静止画/動画から任意の画角で画像を切り出したり、リトルプラネットやミラーボールと呼ばれる360°映像特有の視覚効果やエフェクトを付加する編集を行わないなら、モバイル端末との接続は不要だ。

しかし、それらエフェクトを加えることも360°撮影の楽しみや醍醐味でもあるし、特に動画素材の場合はモバイル端末のアプリを使えば長すぎた尺や余分なシーンのカット、録画時の音声をBGMへ差し替えるなどの編集も短時間で行える。撮影後に素早くwebやsnsでシェアするスピードも重視するのであればモバイル端末と組み合わせて使うのが最良であることに変わりはない。

画像: スマホ専用アプリTHETA+を使い、THETA Xで撮影した360°静止画像にリトルプラネットの視覚効果を加える編集をして切り出した画像。THETA X単体ではこのような編集や画像の切り出しはできない。

スマホ専用アプリTHETA+を使い、THETA Xで撮影した360°静止画像にリトルプラネットの視覚効果を加える編集をして切り出した画像。THETA X単体ではこのような編集や画像の切り出しはできない。

画像: シリーズ初の交換式になった充電池"DB-110"は同社GRⅢ・GRⅢ Xと共通。また、内蔵ストレージに加えてmicroSDXCカードスロットを搭載。バッテリーアウトの不安と撮影後の画像転送のストレスが解消されたのは使い勝手を大きく向上させる進化である。

シリーズ初の交換式になった充電池"DB-110"は同社GRⅢ・GRⅢ Xと共通。また、内蔵ストレージに加えてmicroSDXCカードスロットを搭載。バッテリーアウトの不安と撮影後の画像転送のストレスが解消されたのは使い勝手を大きく向上させる進化である。

撮影画像比較 vs THETA Z1

THETA Xの11K、5,5Kの2モードとTHETA Z1の最高画質を撮り比べてみた。THETA Xのイメージセンサーは主にモバイル機器に採用されているQuadBayerCoding 構造のイメージセンサー。高画素モードの11K静止画や8K動画では確かに解像感は高いが。この時画素ピッチが0.8μmと狭くなるためノイズが増えやすいという宿命がある。

一方、5,5Kモードでは同色4画素を混合して画素ピッチが1,6μmの高感度モード。メーカーとしては5.5Kモードがデフォルトで、11Kモードでの撮影には撮影メニューのHDRモードやNRモードの併用を推奨するとのこと。

比較作例は晴天屋外の撮影なのでノイズの浮きはさほど気にならない。5.5KモードもZ1との比較は流石に酷な感もあるが、十分な画質はキープできている。それぞれ記載のURLに飛ぶと視点のスクロールや拡大が自由に行えるので、フェンスの細かい分部や遠景部分を見比べると解像力の差が分りやすい。

動画作例

ここでの動画作例は共に5.7Kでの撮影。強い太陽光の直射を受けていることと撮影時にレンズの一方が空側、一方は地面側に向けているため若干の露出差があるが、レンズの向きを変えることで解消できるレベルで許容範囲。像自体のスティッチ部分は自然。天頂補正による手振れ補正の効果も十分確認できる。本来はそれぞれ1分以上の尺があるが、"THETA360.com"への掲載が1動画10秒までのため短く編集しています。

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