Webカメラマンにおいて、なぜかかこれまでその名前が出てこなかった、キヤノン EOS R3。しかし、それはもう昔の話。あたかも「出入り禁止」が解けたかのように、EOS R3を見せていただけました。まさに恩讐の彼方に! でも、ムックへの広告出稿は当分ないらしい。

件のオリンピックにてセンセーショナルにデビュー!?

画像: 見た目から想像するより全然軽いんですよ、これが!

見た目から想像するより全然軽いんですよ、これが!

9月のある日。
敏腕編集氏から「歴史的和解が為されたから品川に行くぞ」というメールが届きました。どうでもイイ話は2行もあれば十分なので本題。
キヤノンから「出るぞ、出るぞ!」と焦らされているEOS R3におさわりできる機会が唐突にやってきました。

EOS R3といえばオリンピック前後からテストを任された海外フォトグラファーがExifがシッカリ乗ったデータをネットの海に放り投げていてスペックがダダ漏れになっていましたし、そのあまりに奔放な振る舞いに驚きと心配を禁じ得ませんでした。きっとボロクソに怒られていると思いますが、ページビューとか再生数稼げればどうなっても良いという捨て身の判断だったのかも知れません。真面目にやっている人にはホントいい迷惑ですね。

ってことで、もうスペックなど知っていると思いますが視線入力搭載のEOS R3が正式発表と相成りました。
センサーは裏面照射型メモリ積層フルサイズCMOSの24MPでもちろんDPCMOS。メモリ積層タイプといえばソニーのα9でメジャーになったタイプ。読み出しが速く出来るってんで、ブラックアウトフリー連写とか秒30コマとか実現出来ちゃうヤツです。

α1と同様に電子シャッターでのシンクロに対応していてR3では1/180秒とα1の1/200秒よりちょっとだけ遅い。シンクロスピードでおおよそローリング速度が分かるので、ソニーは本当にクレイジーな技術を持っているというのが、R3のようにライバルになり得る機種が出て初めて分かるという、次元の違う戦をソニーはやっていますね。

ストロボの制御がありえないほどスゴイそうで…。

アクセサリーシューを完全リニューアル! 

豊田的にR3のヤベーと思ったポイントは、ストロボで全コマ調光やらして電子シャッター時に約15コマ/秒、電子先幕時に約6.8コマ/秒っていう途方も無いことをやっちゃったところ。
開発者以外はピンと来ないと思うので、何が凄いか? を軽く説明すると、連写中のコマ間に、プリ発光っていう極小さな調光専用の画角内の反射率を計測する発光をストロボにやらせて、プリ発光の反射を撮像センサーでカウント・演算して、その結果をストロボに伝えて、本発光させる、というのを最高で1秒に15回やっちゃうってところ。しかもブラックアウトフリーで連写しながら…。

秒15コマ程度なら演算的には全然余裕あると思うけど、光る側の余裕が一切無いからね。というのも、安定した微小発光を連続で行えて、緻密な発光制御と放熱性の高い発光管、大容量のコンデンサを内蔵したストロボ持ってないと実現出来ないことだから。
EL-1っていうトンデモナイ外付けストロボを発売したことが、R3で生きてくるとは想像出来ませんでした。EL-1の発表時には「やたらオーバースペックなクリップオンを開発したもんだなぁ。こんなに高いの、買うヤツ居るのか?」くらいの感覚でしたよ。

ちなみに、この話を担当編集氏に熱く解説しましたが、全く理解する気がないようでしたので、クラフトワークとキング・クリムゾンが毎日本気のライブ配信をやるようなお祭り騒ぎがカメラにもやってきたのだと言ってみたところ、その凄さだけは伝わったようでした。

視線入力! 世が世ならココムに抵触したのでは…。

このポケモンボールみたいのがスッと動くんです。もちろん、昔のようにAFフレームが固定されているのではなく、自在にサーフィンします! ちなみに動画では視線入力が作動しない、というのがちょっと痛快!

スペックをダラダラ紹介しても仕方ないので、おさわりして感心したところを紹介していきます。
まずはEVF。R5/6でもその超レスポンスに驚きましたがR3でも健在です。α1ほどの精細感はないけど、必要十分以上の覗き心地で、OVFに引導を渡す仕上がり。EOS 5DクラスならもうR3のEVFの方が全然良いんじゃないかな、正直。EVF覗けば表示されてるし、電源ONしてすぐ表示されるし、遅延はほぼ無いし。

気になる人も多いであろう視線入力は、キャリブレーション前の状態とキャリブレーション後の状態を堪能しました。キヤノンの中の人が「キャリブレーション前後で試してみて下さい」って勿体振ったコト言うので、そこまで言うならヤッてやろうじゃないか! と半ばケンカ腰でトライしてみたところ、キャリブレーション前は想像通りというか、平成の怪物EOS-3からこのくらいは進化するよね、っていうレベルの仕上がりで「ふーん」って感じ。

キャリブレーション後は「はぁ!? こんなモン売っちゃダメだろ!!!」って感じ。世が世なら軍事上の理由による輸出規制もあり得る性能だと思いました。しかもコイツが持つ雰囲気は、機能をやや過剰な表現でアピールしてくる「オリンパス・スタイル」ではなく、あくまでも裏方で補助ツールに徹しているところがキヤノンの憎らしいところ。これは実際に体験してみないことには分からない部分です。

ちなみに視線入力の精度、豊田的には抜群であると太鼓判を勝手に3つ押しときますが、担当編集氏にはあまり合わなかった様子。メガネやコンタクトレンズの有無とか絶対的な視力(あくまで想像)、あるいはファインダーの覗き方も、ある程度は関係すると思います。

「動物園最強AFカメラ」の座を保証しますよ。

画像: バリアングル採用。まだこの先にフラッグシップがありますよ、というアピール?

バリアングル採用。まだこの先にフラッグシップがありますよ、というアピール?

AFの感じについて、オートエリアというかiTR-AFの感じを包み隠さずに言えば、α1の方が賢いというか、まだホントに触っただけですが、豊田はそう感じました。α1は近似する距離と色やコントラストに、R3は輝度にそれぞれAFが引っ張られる傾向があって、個人的にはα1の考え方が好みです。

AF開始した画面内エリアの近傍に被写体は居るだろう、というのが豊田の考え方だからです。R3では背景に明るいソレナリの大きさのものが入り込むと、距離差があっても明るい方へ突発的に大きく引っ張られることがありました。製品版ではまた振る舞いが変わる可能性がありますし、シーンによってR3の方が良い場合もあると思います。どちらにせよ、そういうシーンでは視線入力でサポートしてやると安定して撮影出来そうだ、という予感がビンビンです。

こうした撮影者とカメラの相互フォローの関係がR3にはあって、それがとても良い感じ。瞳検出の大きさもEVF上で1mm角くらいのサイズで検出枠がガシガシ表示されちゃうからもうビックリ。これはもう動物園最強AFカメラの座はR3で揺るぎないでしょうな。しかし解像度的にはα1。加えて挙げればソニーにはシグマレンズやタムロンレンズもあるから、総合力なら依然として圧倒的にソニーかなぁ。

ローパスフィルターは1DX3には負けているんですって。

画像: このでっかいペンタ部(じゃないんだけど)がイイね、スチルカメラってカンジ?

このでっかいペンタ部(じゃないんだけど)がイイね、スチルカメラってカンジ?

最近はヤンヤと言われることがめっきりなくなりましたが、センサーはローパス有りです。実に素晴らしい選択ですね。ローパスフィルターはあったほうが良い派の豊田としては諸手を挙げて歓迎したいところ。一応「1DX3と同等レベルのローパスフィルターなの?」とジャブを仕掛けたら「1DX3のローパスフィルターは特別でして、あのレベルのものを採用してしまうととてもじゃないけどこの価格には収まりません」という信頼感しか芽生えない10万点のご回答。

1DX3のローパスフィルターってマジすごくて、その話だけでインタビューしに行こうか? と思うくらいに開発者の情熱が注がれています。1D系って代々凄いローパスフィルターを搭載しているけど1DX3はその集大成って感じよ。イジワルな感じでは決してなくて、事実として他のカメラと比べられないくらいコダワってるから「機種名のハイフン付きは特別の証」というのは純然たる事実。そういうのを知っちゃうと1DX3がバーゲン価格に思えちゃうの。絶対的には高いけどね。

話が脱線しましたが、持った時の軽さにも注目して欲しいと思いました。大袈裟ではなく「え?」ってくらい軽い。バッテリー込みで1キロあるので物理的には重いのだけど、重量バランスや重心位置が良くて軽く感じます。無論、荷物になった時は1キロの重りに変身します。あとグリップが抜群。新しいシボのパターンも良い。キヤノンやニコンにはその手のノウハウがシッカリあるよね。
ダテに何十年も報道のプロにシゴカれて来ただけのコトはある。R3持った後にソニー持つと「コイツで長時間の撮影とか無理だろ」って思うくらいに圧倒的に素敵なR3のフィット感。パナソニックもしっかり勉強させてもらって下さいね、これが「正解」です。

RF100-400mm…ありえないサイズです!

画像: RF100-400mm…ありえないサイズです!

トヨ魂で褒めると嘘っぽくなっちゃうから、このくらいで勘弁して欲しいのだけど、この24倍は褒めの文を書けるからね。
じゃ次。同時発表のRF100-400mm。時代が時代なら「御冗談を」という驚きのコンパクトサイズ。500mlのペットボトルとか350ccのタンブラーくらいのサイズ感で100-400mm。確かにテレ端で開放F8だから暗いんだけど、このサイズなら文句言えないと思いました。

パッと見だと「いやコレ絶対イメージサークルカバー出来てないでしょ?」って不安になるサイズなのよ。でもテレコン対応だし、テレマクロ性能ハンパないし。NanoUSMでAFがマッハだし。コンパクトサイズに収めた利点をも活かした全方位に抜かりない仕上がり。

他社だとAFモーターがヘボかったり、寄れなかったりするよね。そんでもって手の届く価格ってのが実にスンバラシイです。これは早いとこテストしてみたいレンズだね。RF600/800mmの2本にも当てはまることだけど、キヤノンはこういう事やってくるから製品企画に写真の鬼が居るんだろうと思っています。

RF16mmF2.8…これまたブレイクスルー、やるな、キヤノン!

画像1: RF16mmF2.8…これまたブレイクスルー、やるな、キヤノン!

同時発表のもう一本、RF16mmF2.8も相当ヤベー。何がヤベーって圧倒的に安くて軽くて小さいのに安っぽさがあまりないところ。ドコゾのメーカーさんみたいに高くてオイソレと手が出ないレンズばかり放つ大技思考とは違っていて、手の届くところにしっかりと商品展開してくる辺りに真の王者の貫禄を感じます。ちゃんと金属マウントだしね。ドコゾとは違うね。

もちろんコイツも寄れる。背面LCDのLV映像を見ながらの撮影が当たり前になって、スマホみたいな狭小センサーで強烈なパースと実焦点距離の短さを活かしてギンギンに接写出来るスタイルに慣れていると、スチルカメラはどうにも接写出来ません。なので不自由さを感じるビギナーは多いと思いますが、そういうところを解消してくるワイドで寄れちゃうレンズの登場は「分かってるぅ」と感嘆せざるを得ません。

どちらも触っただけで実写はまだだから、語れることはこのくらいです。ミラーレス機の時代になったら「技術の進歩と制約の緩和でこんなレンズが登場するんだろうな」と想像していたことと違う、光学性能と利益率に全振りの未来がやってきて面白くないゾ、と思っていたところに一陣の風。性能が上がるってのも勿論嬉しいんだけど、全体的に大きくて、重くて、超高性能で、高価っていう方向性ばかりなので、新製品のニュースリリース見る度に正直ウンザリしてました。新型車がプリウスとフェラーリだけになったら全然おもしろくないよね。

なので、こういうラインナップと手の届く価格帯にも目を向けて製品を投入してくる辺り、ちゃんと写真の裾野を広げようとしていると感じられてとても嬉しく思います。あと、これはひょっとすると、R6のジュニア的なカメラが予定されてるんじゃね?と。来年あたり来るでしょ。

画像2: RF16mmF2.8…これまたブレイクスルー、やるな、キヤノン!

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