しかし通常の望遠レンズは最短撮影距離が長く、思った以上に被写体に寄ることできません。そこでカメラの撮影範囲を小さく(フルサイズ→APS-Cなど)したり、テレコンを使います。最短撮影距離は変わらずに被写体が大きくなり、さらに望遠で撮影しているような圧縮感も生まれます。ただこの撮影方法では、被写界深度がかなり浅くなるという望遠レンズならではの問題があります。
そこで使うのがAdobe Photoshopなどのレタッチソフトの『深度合成』です。少しずつピント位置をずらした複数枚の写真のピントの合った部分だけを合成する機能で、被写体全てにピントが合った被写界深度の深い作品に仕上げることができます。
ベースとなる写真の撮影時はカメラを三脚にしっかりと固定し、ピントを少しずつ動かしながら撮影しましょう。時には数十カット撮影することになりますが、ニコンZシリーズの『フォーカスシフト』などの自動的に撮影する機能があると便利。
後は画像処理ソフトで『深度合成』するのですが、Photoshopは自動で『深度合成』する機能があるので作業も楽々です。細かな部分は手作業で修正すればより綺麗に仕上げられます。フォトショップの『深度合成』手順については公式HPやノウハウを掲載したWebページを参照にすると良いでしょう。
撮影場所はレイアウト(鉄道ジオラマ)などでできると更に良いですが、望遠レンズでの作品は標準レンズの作品とはひと味違ったリアルな雰囲気になること間違いなしです。鉄道模型撮影といえども実車撮影のアングルや撮影自体の考え方は反映できますし、実車撮影の勉強もできます。「たかが模型」とは思わず、是非インドア『鉄道撮影』を楽しんでみてください。
今回のキメッポイント!
①模型撮影は被写界深度を深くできる『深度合成』もおすすめ
②撮影最短距離を稼ぐため、テレコン使用やセンサーサイズを小さく
③三脚でがっちり固めてピントをおくりながら複数枚撮影
撮影・解説:助川康史
1975年東京生まれ。秋田経済法科大学法学部、東京ビジュアルアーツ写真学科卒業後、鉄道写真家の真島満秀氏に師事。鉄道車両が持つ魅力だけでなく、鉄道を取りまく風土やそこに生きる人々の美しさを伝えることをモットーに日本各地の線路際をカメラ片手に奮闘中。鉄道ジャーナルや鉄道ダイヤ情報などの鉄道趣味誌や旅行誌の取材、JTB時刻表(JTBパブリッシング)やJR時刻表(交通新聞社)などの表紙写真を手掛ける。またJR東日本などの鉄道会社のポスターやカレンダー撮影も精力的に行っている。日本鉄道写真作家協会(JRPS)理事。(有)マシマ・レイルウェイ・ピクチャーズ所属。