この写真展について
タイトルの一部「ヘリ」とは、都市周縁の「へり」のことであるそうだ。第一京浜や国道1号線の臨海部の変わりゆく景色を、新納さんは「道脈」と題するシリーズとして撮り続けている。本展示会は、その延長線上にあるテーマで、レンズスイング式パノラマカメラ「WIDELUX」による作品作りを試みた、撮りおろし作品20点で構成されている。入場無料。 ※イベントのギャラリートークは参加費要。
写真展案内より
新納翔は1982年生まれの写真家で、消えゆく都市風景の記録をテーマに、東京を拠点に活動しています。新納のライフワークともいえる「道脈」シリーズでは、新納が生まれ育った横浜から品川まで、国道1号線(第二京浜)と国道15号線(第一京浜)沿いに、変わりゆく景色を撮影しています。
本展では、「道脈」シリーズの延長に位置付けられる、都市の縁(ヘリ)部分といえる臨海部をパノラマカメラで撮影した新作「ヘリサイド」から約20点を展示いたします。
「ヘリサイド」シリーズを始めたきっかけとして、レンズスイング式パノラマカメラ「WIDELUX」との出会いが大きいと作家は言います。
湾岸産業道路、大井埠頭、羽田空港などがある京浜工業地帯=「ヘリ」は、都心部の時間軸から切り離されたかのように独特の空気が漂っています。「WIDELUX」での撮影時に生じる画面全体の歪みが、異界の印象を一層際立たせています。
2020年に迎える東京五輪に向けて都市部の開発が進む一方、「ヘリサイド」は聖域のように、過去でも未来でもない風景として、そこに存在しています。新納は、都心の時間軸から切り離され、こぼれおちた景色こそが東京を象徴しているのではないか、と問題を提起しています。
長年東京を撮影してきた作家による撮り下ろしの東京風景を、この機会にご高覧ください。
写真家によるステートメント
戦後復興期にとてつもない速さで東京という街が形成された時以来、また東京は目まぐるしく変化している。かつて築き上げられたものが寿命を迎え、令和の今、ビルドアンドスクラップの嵐に包まれている。
その破壊と再生のエネルギーは中心部からヘリである湾岸部に向かって徐々に減衰していく。湾岸産業道路、大井埠頭、羽田空港などがある京浜工業地帯沿いに連なるヘリの景色は、かすかに残る平成東京の残像である。このエリアがどこか異様な雰囲気に包まれているのは時代の軸から切り離され、異次元の世界に漂っているからだ。
ヘリの景色は、これから迎える未来の東京と過去との境界線でもある。ここに来ると、現在でも過去でも未来でもない時間に行くことができる。都心にいて感じる曖昧さの核がヘリにある。
都心から円状に広がったエネルギーとヘリがぶつかり合う場所はパノラマが合う。どこか、世間の狭間に落ちた自分はヘリにシンパシーを感じるのだ。
新納 翔
会期および会場
会期:
開催中~9月28日(土)まで
火~金 12:00~19:00 土 17:00まで
※日・月は休廊
会場:
コミュニケーションギャラリーふげん社
東京都中央区築地1-8-4 築地ガーデンビル 2F
TEL:03-6264-3665
イベント
◇ギャラリートーク・鳥原学(写真評論家)×新納 翔
9月14日(土)17:30~19:00
参加費1500円
◇レセプションパーティー
同日19:00〜20:30
※詳細は以下のサイトでご確認ください。
写真家・新納 翔プロフィール
新納 翔 Sho Niiro
1982年横浜生まれ。麻布学園卒業、早稲田大学理工学部宇宙物理学専攻中退。
2000年に奈良原一高氏の作品に衝撃を受け、写真の道を志す。
以後、現在まで消えゆく都市をテーマに東京を拠点として写真家として活動をしている。
2007年から6年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながら取材をし、その成果として日本で初めてクラウドファウンディングで写真集を上梓する。
2009年から2年間中藤毅彦氏が代表をつとめる新宿四ツ谷の自主ギャラリー「ニエプス」でメンバーとして活動。
2014年から2年間、築地市場を警備員として働きながら取材する。
川崎市市民ミュージアムでワークショップの講師経験を経て、2018年6月より「デジタルラボPapyrus」の管理人・講師としてデジタル写真技術を広く教える活動もおこっている。
主な写真集に『山谷』(2011、Zen Foto Gallery)、『Another Side』(2012、リブロアルテ)、『Tsukiji Zero』(2015、ふげん社)『PEELING CITY』(2017、同)がある。
現在、新潮社電子書籍『yom yom』に写真都市論「東京デストロイ・マッピング」連載中。