猪原悠さんは、写真家であり映画監督である若木信吾さんに師事し、被爆者の今を撮影したシリーズ「戦争は終わりましたか」や能登半島をテーマにした「tabi」を発表。また、ドバイで開催された「NEW JAPAN PHOTO3」や「KYOTO KG+」への出展など、これからの活躍が期待される若手写真家です。

1000年も前から存在するカンガルドッグに魅せられて

猪原さんは、以前にドキュメンタリー番組を見たことがきっかけで、カンガルドッグの存在を知り、いつかこの犬に会いたいと、そして撮影したいと思っていたそうです。
トルコ中央部に生息するカンガルドッグの歴史は古く、1000年も前からアナトリア高原に生き続けると言われています。カラヴァシュの愛称で呼ばれ、現地の意味では「黒頭」を意味するカンガルたちは、現在もオオカミから家畜を守ります。

カンガルは、頭が良く勇敢な性格から、自分より強い相手でも、外敵と認識すると立ち向かう攻撃的で野性的な面と、飼い主にとても忠実な面を併せ持ちます。
そして、家畜を守るという役割を終え、老犬となり村を歩くカンガルは、決して人を嚙むことはなく、村の人もカンガルを恐がることはないそうです。
猪原さんはカンガルに会いにいくため、日本からトルコ中央部にある首都アンカラへ向かい、レンタカーでカンガルがいる村を目指します。ひたすら東へ東へ。主要な都市と都市を経由し、何もない荒野を延々と走り続けて。

画像: 写真展会場の様子。猪原さんが今回の旅で撮影したカンガルや村の人々、ランドスケープなどの作品が展示されている。

写真展会場の様子。猪原さんが今回の旅で撮影したカンガルや村の人々、ランドスケープなどの作品が展示されている。

オオカミから喉元を狙われるのを防ぐため、鉄のとげとげのついた首輪がはめられたカンガル。最初にオオカミと対決するカンガルにつけられるそう。(カンガルは一般的に連想されるカンガルーとは関係ないそうです。)

「会いたい」という思いと猪原さんの眼差し

日常はポートレートを撮ることが多いと言われる猪原さんは、「人に会いたい」という強い思いが「写真を撮る」ことへの根底にあるそうです。
猪原さんのカンガルに「会いたい」という思いが、今回の写真展「Kangal」へ繋がるトルコへの旅となりました。
猪原さんは旅の途中で出会ったカンガルや村の人々、ランドスケープにシャッターを切ります。カンガルに思いを馳せながら、カンガルの目となって見つめるかのように。

猪原さんの作品からは、優しく穏やかでありつつも、被写体となる人や動物、風景などの存在を冷静にじっと深く淡々と見つめている気がします。
そして時に、猪原さんの眼差しは、猪原さんのものでありながら、猪原さんのものでなく、それでも猪原さん自身でしか写せない瞬間となって、現実か幻想なのかわからない、今日も遠い国で存在する日常を見せてくれるかのようでした。
今回の旅が寒い季節だったこともあり、今度は暖かい季節に再び、カンガルに会いに行きたいとおっしゃる猪原さんの旅はこれからも続きます。

画像: 写真家の猪原悠さん。写真家であり映画監督である若木信吾さんに師事し、猪原さん自身も作品を撮りながら、国内外の写真展への出展や、トークイベントを主催するなどこれからの活躍が期待されます。

写真家の猪原悠さん。写真家であり映画監督である若木信吾さんに師事し、猪原さん自身も作品を撮りながら、国内外の写真展への出展や、トークイベントを主催するなどこれからの活躍が期待されます。

猪原悠写真展「Kangal」展覧会情報

会場:キヤノンギャラリー銀座
住所:東京都中央区銀座3-9-7 TEL:03-3542-1860
会期:2019年8月19日(月)~8月28日(水)
開館時間:10時30分~18時30分(最終日は15時まで)
休館日:日曜日、祝日

2019年8月24日(土)15時~ 小林孝行氏(flotsam books)をお迎えして、ギャラリー内にてギャラリートークが開催されます。

猪原悠(いのはら ゆう)さん プロフィール

写真家。1989年広島県福山市生まれ。東京綜合写真専門学校卒業後、青山スタジオ勤務。写真館の勤務を経て、若木信吾氏に師事。被爆者の今を撮影したシリーズ「戦争は終わりましたか」(2010)や、能登半島をテーマにした「tabi」(2018)を発表する傍ら、トークイベント「ぼくらの会いたいひと」も主催し活動の場を広げている。

This article is a sponsored article by
''.