写真の新たな媒体、SNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)この連載では写真家・中野幸英さんが、SNSから生まれた新たな文法=リテラシーを実際に投稿者と会って検証・共有していきます。この記事は月刊カメラマン誌で紹介したものです。

熱と仕事

「仕事ではホームランではなく、毎回ヒットを続ける必要があるんです」と彼は話す。SNSを続けているのは、SNSをいつも見ている人がある一定数いて、その人たちに季節の花を紹介する程度で決して大きなビジネスチャンスとして捉えてはいないという。

「でも、一週間も保たない切り花だからこそ写真に残していくことはお店の財産になります」。多趣味の彼だからこそ達観した境地なのかもしれない。

地元の人に旬な花を伝えるのには、店頭ほど効果があるものはない。SNSに期待しすぎるのではなく、あくまで過去のアーカイブやアレンジの種類などを伝える手段と考えればとても効果的だ。

「その代わり続けられるように低いハードルを設けています。やはり『いいね!』をもらえないと意味がない」と言う彼はスマホで、渋谷のとあるライブハウスのインスタを見せてくれた。

その投稿はどれもDJの肖像写真にシンプルな名前と色のついたバックで、とても整然と見える。「こういうデザインの方向性のある良いフライヤーで徐々に人が集まっていくんです」

音楽の中でも彼は仕事に通じる部分を勉強していた。継続して初めて意味を持つ。良いものでないと見せる意味がない。

華やかな恵比寿で

お店の入り口近くにある手作りのモダンな鉢は「Konect」製のものだ。泰司さんはSNSを通じてKonectの作り手とも交流し、鉢を手づかみで見せる写真も影響を受けたものだという。

多肉植物がブームとなった近年は、多くの生産者や取引先にもSNSを通じて情報収集し、時に出向いて話をした。多くの知り合いから様々な相談を受け、最近はスキマスイッチ15周年のネット中継イベントにも仕事で参加したそうだ。

「花屋になるのは本当に嫌だった」と話す彼が「接客」「お花を仕入れて売る」「お金の計算」が花屋のサイクルだといい、今では自分が向いているという手応えを持ったという。

華やかな恵比寿の通りで、長い時間をかけて家業に向き合っていく。多彩な友人と多くの趣味から刺激を受けて、彼の仕事へのポリシーは自力で作り上げられていった。

今のSNSとの付き合い方も、こうした試行錯誤の上で考えられたに違いない。

写真と文は中野幸英さん

画像: 写真家。作品製作や著作のほか、コマーシャルや動画撮影などで活動。SNSにアップしやすいオススメのカメラはLUMIXのLX-100 Ⅱ。

写真家。作品製作や著作のほか、コマーシャルや動画撮影などで活動。SNSにアップしやすいオススメのカメラはLUMIXのLX-100 Ⅱ。

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