みなさん、こんにちは。「知らなきゃソンだ ぞー!」の時間です。先日、ニコンミュージアム に展示されているNASA仕様のニコンフォトミックFTNを撮るチャンスがありました。今回はレンズのコーティングについてお伝えします。

ニコンミュージアムのNASA仕様ニコン フォトミックFTN

画像: ニコンミュージアムのNASA仕様ニコン フォトミックFTN

▲オールマットブラックのボディに、特殊なコーティングが際立っています。宇宙に持って行くカメラだけに市 販品とはレンズのコーティングが違います。濃く美しい紫(パープル)色です。これを見ているうちにコーティングのことを解説したくなりました。
●形 式:機 械 制 御 式フォーカルプレーンT T L一 眼レフ ●シャッター 速 度:1/ 1000 ~1秒・B・T ●測 光:T T L 中央部重点測光。EV2~17●大きさ:147×102× 66.5mm●重量:約860g●使用電池:水銀電池●発売:68年9月 *ニコン フォトミック FTN

「逆光で撮ってはいけない」というのは コーティング性能が悪かった時代の定説
1960年代のNIKKOR-Q Auto 135mm F3.5で撮影

画像: 「逆光で撮ってはいけない」というのは コーティング性能が悪かった時代の定説 1960年代のNIKKOR-Q Auto 135mm F3.5で撮影

▲初期の単層コートでレンズは青く見える。
●レンズ構成:3群4枚●最短撮影距離:1.5m●最 小絞り:F32●重量:460g● 発売:69年5月 * スペックは新型

▼フードなし

画像1: ▼フードなし

▲逆光にはまったく不向きでフレアーがすごい。白いベールに包まれたように写る。

▼フードあり

画像1: ▼フードあり

▲しかし、フードを着けると大幅に改善される。
■共通撮影データ=絞りF16 1/320秒 マイナス0.3露出補正 ISO200

コーティング、コートとはレンズ面に蒸着された薄膜のことです。天井の蛍光灯を反射させると赤、青、緑などの色が見えます。色の違いは蒸着された素材が異なるためです。一般に緑は異なる素材を何層も蒸着したマルチコーティング(多層膜コート)の色です。赤や青は単層のコーティングです。

コーティングは反射防止をして透過率上げる、レンズを通る波長を制限してカラー発色をコントロールするなどの役割があります。今では当たり前になっているマルチコー ティングですが、一般的になったのは1970年代になってからで、その前のレンズは単層コーティングでした。

コーティングのないレンズや初期の単層コートのレンズは、レンズ面やレンズ内部で光の反射が多く、透過率が悪くなります。反 射した光が有害光となってフレアーやゴーストの原因になります。 反射防止の効果は弱く白いベールのようなフレアーが発生して霧の中のように写ります。

かつて「逆光で写真を撮ってはいけない」と言われていたのは、このためです。 ですが、逆光でもフードを付けるとフレアーは大幅に改善されます。フードの重要性がわかってもらえると思います。

2005年、革命的な反射防止技術「ナノクリスタルコート」登場

画像: 2005年、革命的な反射防止技術「ナノクリスタルコート」登場

▼ナノクリスタルコート非採用
AI AF Nikkor 28mm f/2.8D(写真左)

画像: ▼ナノクリスタルコート非採用 AI AF Nikkor 28mm f/2.8D(写真左)

▲太陽が画面に入り込むような状況だと手前に大きなゴーストが出現。全体にフレアーが発生し、コントラストも下がって発色も濁る。
●レンズ構成:6群6枚●最短撮影距離:0.25m● 最小絞り:F22●重量:205g●発売:94年10月
■共通撮影データ=絞り優先AE(F2.8) ISO100

▼ナノクリスタルコート採用
AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G(写真右)

画像: ▼ナノクリスタルコート採用 AF-S NIKKOR 28mm f/1.8G(写真右)

▲まるで別物のようにクリアだ。
●レンズ構成:9群11枚●最短撮影距離:0.25m ●最小絞り:F16●重量:330g●発売:12年5月

ニコンが2005年に発売したAF-S VR Nikkor ED 300mm f/2.8G IF-EDにナノクリスタルコートと命名した新しいコーティン グが採用されました。ニコンが半導体露光装置の投影レンズに採用されたナノ粒子膜を、カメラの交換レンズに応用した革命的な反射防止技術です。

従来のレベルを超えた反射防止効果を発揮してゴーストやフレアーを大幅に低減し、クリアな画像を実現しました。比較としてナノクリスタルコートを採用したAF-S NIKKOR 28mm f/1.8Gと、採用していないAI AF Nikkor 28mm f/2.8Dの逆光での描写を比較してみよう。ナノクリスタルコートを採用していない28mm f/2.8D は、大きなゴースト出ているのがわかると思います。

最近はフード無しでも素晴らしい描写をするコーティングの開発に着手

タムロン独自開発のeバンドコーティング
SP 85mm F/1.8 Di VC USD

画像: タムロン独自開発のeバンドコーティング SP 85mm F/1.8 Di VC USD

▲フードあり、フードなしと撮り分けてみたが、まったく差は感じられなかった。もちろん『フードは常用する』が正解だ。
●レンズ 構成:9群13枚 ●最短撮影距離:0.8m ●最小絞り:F16●重量:650~700g●発売:16年3月 ■共通撮影データ:絞り優先AE(F21/400秒) プラス0.7露出補正 ISO100

▼フードなし

画像2: ▼フードなし

■共通使用機材:ニコンD750

▼フードあり

画像2: ▼フードあり

各社ナノクリスタルコートに続けと、マルチコーティング以上の効果を持つ新たなコーティングの開発に着手しました。たとえばタムロンのeバンドコーティングもそのひとつです。SP 85mm F/1.8 Di VC USD(Model F016)でフードの有り無しを比較してみましょう。eバンドコーティングは逆光にとても強く、フードなしでも素晴らしい描写をします。もちろんフードはあった方がいいに決まっていますが...。

なおナノクリスタルコートに代表されるコートは特殊で拭くことができないので、コーティングを施したレンズが第一面に配置されることはまずありません。

レンズを拭くときは砂やホコリの付着に注意!
潮風を浴びたら早めにクリーニング!

初期のコーティングは、強く擦ると剥が れたりすることも多かったのですが、現在 のコーティングは強化されています。なのでレンズを拭いてもそう簡単に剥がれることはありません。

しかし、硬い砂やホコリなどが付着しているとレンズを傷付けることがあるので、クリーニングするときはブロアでよく払ってからにしましょう。

また海へ行ったときに潮風を浴びるとコーティングは浸食されます。戻ったらなるべく早くクリーニングをしましょう。

撮影/解説:阿部秀之

ヨーロッパの風景やスナップ、ポートレート、コマーシャルなど幅広いジャンルを撮影する。87年よりカメラグランプリ選考委員。

モデル:水穂まき

最近は学生時代に打ち込んだ卓球に再び目覚め、新調したラケットでコーナーを狙って「まきパンチ」!

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